第百九話
「久しぶりだな。龍斗」
僕とクレアさんがイスカグラン城に着くとルイさんが人目につかないよう案内してくれた。ここは以前、僕がマリー王女に拷問をされた場所だ。
僕はその事を思い出しながらマリー王女に挨拶をした。
「こ、ここは懐かしいなぁ……うん、半年ぶりだね。早速だけどアメデの行方がわかったのかい?」
「フン、せっかちだな。隣にいる女性の紹介もしてないのに」
マリー王女が微笑みながらクレアさんを見て言った。僕は慌ててクレアさんを紹介する。
「おっとすまない。こちらはクレア・シューリスさん。僕の仲間だ」
「よろしくな。私はマリーだ」
「マリー王女、こちらころよろしくお願いします」
クレアさんが恐縮しながら挨拶をする。
「マリー王女。せっかちで申し訳ない。それでアメデの事だが」
「ああ、わかった。その事だが、実はアメデの行方がわかったわけではないのだ」
「なるほど、ってことは手かがりが何か見つかった……とか?」
僕の言葉にマリー王女は頷いた。
「そうなんだ。半年前、ジャンたちと戦った後の屋敷を我々は探索したのだが、不思議な事にジャンとエーリカとカルラと名乗る二人の女の死体がなかった。一体なぜだがわからん、謎だ、あいつらは確かに死んだはずなのだが……」
「ああ、そうだったな」
恐らく、ジャンと二人の女は魔族に魂を売って魔族になったのだろう。人間が魔族に魂を売ると三つの命を与えられる。あの屋敷で失った命は一つ、二つ命が残ってるのでジャン達は生きているはずだ。
だが、僕はこの事をマリー王女には言っていない。今はまだ魔族が復活している事は誰にも知られたくない……
僕が頷くとマリー王女は話を続けた。
「しかし、ジャンの部下で一人だけ死体が残ってる者がいた」
「確か僕と戦ったマルコルフ……とか言う名前だったかな?」
「そうだ。なぜこいつだけ残っているのかは、これも謎だが、私たちはこいつの身元を調べた」
「なるほど、つまりマルコルフの身元がわかったと言う事か」
「ああ、マルコルフというのは偽名で本名はアルカディー ・サラファノフ。ゴランダ帝国で有名な冒険者だった男だ」
「ゴランダ帝国……」
「ゴランダ帝国はここよりはるか西にある国だ。しかし、ほとんど我がイスカグラン国とは交流はないのであまり情報のない国なんだ」
「わかった。とりあえずゴランダ帝国に行ってみるか…… そこでマルコルフがジャン達と仲間になっているなら何かわかるかもしれない」
「頼んだぞ、黒羽、ゴランダ帝国の城下町に冒険者ギルドがあるようだ。そこで情報を集めてくれ」
「ありがとう。マリー王女、助かったよ」
「いいんだ。こちらこそ助かった。そして必ず攫われた遥を連れ戻してくれ」
「もちろんだ。早速、行こう。クレアさん」
僕がクレアさんの方を向くと彼女は力強く頷いた。
「ルイが一度、ゴランダ帝国に行ったことがある。ルイが魔法の翼でお前達をゴランダ帝国まで連れて行く」
僕はマリー王女に礼を言うと早速、ゴランダ帝国へと向かった。