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第百三話


「ルイさん、ここは…… 私たち屋敷に戻れたようですね」


 エーリカとカルラの戦いに勝利したルイとエリノルは扉の中に入りしばらく進んでいくと階段を見つけた。二人はその階段を登ると扉があり、それを開けると屋敷に戻る事ができた。


「そのようでね、エリノルさん。とりあえずはマリー王女達と合流しなければ、ここは慎重に進みましょう」


「ええ」


 二人はあたりを警戒しながら屋敷の廊下を歩いていくと玄関ホールにきた。


「ルイさん、あそこ。誰か……いません?」


 エリノルが指をさした玄関ホールの真ん中に人が倒れている。


「あれは…… マリー王女!」


 ルイが慌ててマリー王女の元に駆け寄ると彼女は蜘蛛の糸のような粘着性のもので縛られ気絶していた。


「大丈夫ですか。王女、今、その糸を斬ります!」


 剣を抜き、ルイがマリー王女を縛っている糸を斬る。そしてルイは王女の目を目を覚まさせようと体を揺する。


「王女、マリー王女。大丈夫ですか?」


 ルイの声が聞こえたのかマリー王女の目がゆっくりと開いた。


「う、うう…… ルイか…… た、助かったぞ。ルイ」


「どうしたのですか? 一体、誰にやらたのです?」


 ルイに上体を起こしてもらうと王女は大きく深呼吸をした。


「ふぅ、不覚だった。私を攻撃したのはリカルダと言う女妖術師だ」


「リカルダ? 確かその名は……」


「ああ、遥たちの仲間だった女だ。だが、どうやらその女は敵に寝返ったようだ。リカルダは不意をついて私を魔粘糸で攻撃してきた。私を糸に縛りそのまま持ち上げられそして地面に叩きつけた。その勢いはものすごいスピードだった。私はその衝撃で気を失ってしまった……」


「そんな、王女様ほどの人をいくら不意打ちとはいえ気絶させるとは……」


「完全な油断だ…… ジャンを倒してので安心してしまったんだ」


「それで姫野さんはどこに?」


 エリノルの聞くと王女は残念そうに首を左右に振った。


「わからない…… 私はリカルダの攻撃で気を失ってしまったからな…… だが、ここに死体がないということはきっとリカルダと一緒にいるはずだ」


「わかりました。それでは姫野さんを探しに行きましょう」


 ルイがそう言うと王女は頷く。


「ああ、行こう!」


 三人は屋敷の探索を始めた。そしてすぐに転移の魔法陣を見つけた。


「こんなところに転移の魔法陣とは…… ルイにエリノル、行くぞ!」


「はい」


 三人は転移の魔法陣の中に入るとすぐ瞬間移動した。






「ここはなんだ、ただの部屋か……」


 転移の魔法陣で移動した三人は先ほど龍斗が移動した部屋と同じ場所に転移した。


「マリー王女、こっちに扉が」


 三人は扉を開けて外に出る。


「ここは…… 港か……」


 マリー王女は辺りを見回す。するとエリノルが大きな声で叫んだ。


「マリー王女! あの船にアメデが!」


 全員がエリノルが指を刺した方を見ると白い帆を翻した大きな船の甲板からアメデがこちらをニヤニヤと笑いながら見ていた。

 

 船は出航しようとしている。


「待て! アメデ!」


 三人は船の方へ走り出した。


「逃すか!『ドラゴンファーループ』!」


 マリー王女がスキルを発動した。王女の武器『バサラアックス』から黒い龍の形をしたオーラが飛び出した。


 黒龍は船に向かって飛んでいく。だが、船に直撃する瞬間、バチィィィという弾ける音が聞こえると黒龍は弾け飛んで消滅した。


「ハハハ、無駄だよ。マリー王女様。この船は特殊な魔法バリアで加工してある。どんな攻撃も通用しない。それよりもっと心配することがあるんじゃないかい?」


 余裕な態度のアメデが指を刺すと、その方向に血だらけで倒れている龍斗がいた。


「龍斗!」


 三人が龍斗に近寄る。


「龍斗……」


 マリー王女は無残な姿の龍斗を見て言葉を失う。


「マリー王女……」


 龍斗の脈を見たルイが残念そうに首を左右に振る。ルイは龍斗が死んだ事を確認した。


「アメデ! 貴様!」


 マリー王女は憎悪の目でアメデを睨んだ。すると、アメデの横から糸で胴を縛られた遥が必死な表情をしながら現れた。遥は叫んだ。


「黒羽くん! 黒羽くん! 死なないで! 死んじゃいやだよ!」


 遥は泣きながら叫んでいる。そしてその横には虚ろな目をしたリカルダが立っていた。


「くそ!」


 残念ながらマリー王女達は黙ってアメデたちの出航を見ているしかなかった。



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 船の甲板、アメデは泣きじゃくる遥を困った顔で見ていた。


「やれやれ、リカルダ。姫野くんを部屋に連れて行ってくれ」


 アメデの命令にリカルダは無言で従う。リカルダは遥をグイッと引っ張って船の中に降りて行った。


 その後ろ姿をアメデが黙って見ていると、後ろからジャンの声が聞こえた。


「よろしかったのですか?」


 アメデが後ろを振り返りジャンの方を向く。


「何がだい?」


「黒羽龍斗を倒すために魔族に変身してしまって…… そのせいでせっかく魔族から貰った三つある魂が一つになってしまいました」


「ああ、そのことか、別に構わないさ」


 アメデはフッと笑うと港でこちらを睨んでいるマリー王女たちの方を見る。


「それにもう一つ、アメデ様は二度とイスカグランには戻れませんが……」


「フッ、それは全く大したことじゃないな、ジャンよ。()()()()が本気でこの世界を牛耳ろうと決断された今、あの国に未練など少しもない」


 アメデの言葉にジャンは微笑みをこぼす。


「そうですか。それにしても驚きました。()()()()が探していたのがあんな小娘だったなんて……それに、彼女の存在を知ったと同時に国取りを決断されました…… それほどの人物とは…… どうやら元々、人身売買を我々にさせていたのは姫野遥を見つけるためだったとか、アメデ様、あの姫野遥とは、一体何者なのでしょうか?」


 ジャンが聞くとアメデはしばらく沈黙して何も答えなかった。だが、突如、クルリと振り返りジャンの方を向くといつもニコニコと笑っているアメデが真剣な表情をしていた。


 それを見てジャンは少し驚いた表情をする。そしてアメデはジャンの質問に衝撃な事実で答えた。


「ジャンよ。この姫野遥はただの少女ではない。姫野遥は魔王の母となる女性だ」

これにて第一章が完結しました。読んでいただいた読者様には感謝しかありません。

次回からは第二章が始まります。



最後に評価とブクマしていただけると嬉しいです。よろしくお願いします。

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