第百話
マルコルフを倒した僕は扉の中に入る。
中は洞窟になっていたが道は綺麗に整理されているようで、とても歩きやすい。
そして、しばらく進んでいくと、またも扉を見つけた。僕は扉を開け中に入る。すると、中は先ほど侵入した屋敷のどこかだった。
「ここは? どこらへんだ……」
とりあえず、上に上がってみるか……
僕は階段を見つけると上に上がる。
そして階段を上がるとそこには大きな廊下と部屋がいくつも並んでいた。
僕は部屋の扉を1つずつ開けていくと、どの扉にも鍵がかかっており中に入る事が出来ない。
「う〜ん、強引に扉を壊して入るか……」
そんな事を考えながら扉が開くかどうか確認しながら進んでいくと、いつの間にか廊下の突き当たり来ていた。
「どうやらここが最後の部屋か……」
僕はこの階にある最後の扉のノブに手を掛ける。するとガチャリという音とともに扉が開いた。
「お! 開いた」
僕は扉を開け中に入る。
「ここは!」
中に入ると部屋の中には何もなく真ん中に大きな魔法陣が書かれていた。
「これは…… 転移の魔法陣か」
転移の魔法陣は一瞬で別の場所に移動できるワープゾーンだ。
さて、どこに移動できるかな?
僕は魔法陣の真ん中に移動した。その瞬間、魔法陣が光り輝く。そして自分の体がパッと消えたのがわかった。
「こ、ここは?」
どうやら転移の魔法陣でどこかに移動できたようだ。しかし、ここはどこだ? あたりは暗く、何か部屋の中のようだ。僕は魔法陣から出てあたりを探ってみる。
ん? これは扉か?
僕はまたも扉を見つける。そしてノブを回して扉を開くと陽の光が差し込んできた。僕は眩しさに思わず目を細める。
そして少しずつ目を開く。どうやらここは港のようだ。とても広い港だ。目の前に海が広がって青い水面に、白い帆を翻した大きな船が見える。
「でかい船だな」
船は全長で60mはあるだろうか……
僕は船に近づいてみる。すると、船の甲板から男が一人こちらを見ているのに気が付いた。
男か僕に話しかけてきた。
「おや、君は確か、マリー王女と一緒にいた…… う〜んとなんて言ったかな…… あ!そうだ、黒羽くんだ。思い出した。いや、驚いた、まさか君が一番乗りとは…… ということはマルコルフは倒されてしまったという事が」
「お、お前は!」
男の顔には見覚えがあった。
そうだ、こいつはアメデだ。アメデ・シソッコとかいう貴族だ。
「お前はアメデ・シソッコ…… あんた、なんでこんな所にいる!」
僕が聞くとアメデは鼻で笑った。
「フン、それはこっちのセリフだよ。まあいい、僕はこの船でこの国を出るんだ」
「この国を出る…… だと」
「ああ、実はもうこの国には用がなくなってね。仲間のジャン達と姫野遥さんを連れてこの国を出ることになったんだ」
僕はアメデの言葉に驚きを隠せなかった。
「なに! 姫野さんを連れてだと! なぜ彼女を連れて行く! そんなことさせんぞ!」
「ふっ、理由を君に言うつもりはないよ。嫌だったら力ずくで阻止してみな」
アメデがそう言うと彼は大きくジャンプしてこちらに降りてきた。
ほう、なかなかの身体能力だ…… ただの貴族のおぼっちゃまかと思ったが油断できないな……
僕は剣を抜くと剣先をアメデに向け睨みつけながら言った。
「ああ、そうさせてもらうよ」