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白銀の簒奪者  作者: たかまち ゆう


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第43話

「ごめん……。このままで、何とかできないかな?」

「……やろうと思えば、できないことはないと思います。でも……スカートを、全部持ち上げないと……」

 ノエルは、顔を真っ赤にして俯いた。


 彼女が履いているのは、オットームの村では一般的な、足元まであるロングスカートである。

 そのため、下着を脱いで用を足すためには、スカートを完全に捲り上げないと難しい。

 下手に隠そうとすれば、服を汚してしまいかねないからだ。


 つまり、下半身を完全に晒したまま、ほぼ隠すことができないということになる。

 人目に付くおそれのある場所で、出来ることではない。


「そうだよね……でも、家は焼けちゃったし……この村に、君にトイレを貸してくれる家なんて無いよね?」

「……どこか、人目に付かない場所で……」

「そうだね……。じゃあ、森の中で、見られないで済む場所を探そう」

「……あの……付いてくるんですか?」

「嫌な思いをさせちゃって悪いけど……どこに敵がいるか分からないから。可能な限り配慮するし、絶対に見ないって約束するよ」

「……」


 ノエルは、しばらく迷った様子だったが、結局僕に対して抗議しなかった。

 縛られたままの状態で、再び猛獣に襲われることを考えたら、付いてくるなとは言えないのだろう。


 僕は、彼女を森の中へ連れて行った。

 良さそうな場所を探して、なるべく奥へと進む。

 そして、なるべく木が密集している場所を発見した。

「ここなら、誰かに見られる心配は無いと思う」


 ノエルは、もう限界の様子で、ブルッと震えた。

「あ、あの、なるべく離れてください! あと……お願いですから、見ないでくださいね?」

「うん、約束するよ」


 彼女はこれから、下半身を完全に露出することになる。

 そんな恰好を見たら、一生僕のことを恨むだろう。


 ノエルから距離を取り、木の陰に隠れる。

 もちろん、覗いたりはしない。


 そのまま少し待った。

「……あ、あの! 助けてください!」

 ノエルの、悲鳴のような叫びが聞こえる。

 敵が襲ってきたのかと焦り、僕は飛び出した。


 彼女は、不自然な姿勢のまま、倒れてしまっていた。

 あの体勢では、手を使わずに起き上がることはできないだろう。

 僕は、急いで彼女の元へ駆け寄った。


 近付くと、彼女の足元には、白い下着が引っかかっていた。

 下ろす時に、身体のバランスが崩れてしまったのだろう。


 スカートが下りて、下半身を隠しているのは幸いだった。

 そうでなければ、お尻が丸見えである。

 まあ、そんな恰好だったら、僕に助けを求めたりはできなかっただろうが……。

 僕は、彼女の身体を起こして、立ち上がらせた。


「……離れて! 早く!」

 ノエルは、切羽詰まった様子で叫んで、もう一度、スカートを持ち上げようとした。

 丁寧な言葉を使う余裕も、僕の姿が見えなくなるのを待つ余裕も無いようだ。


 しかし、彼女は明らかに冷静ではない。

 この様子だと、また転んでしまうのではないだろうか?


 そう考えて、僕は1つの決断をした。

 彼女のスカートを一気に持ち上げて、強制的にしゃがんだ姿勢にしたのだ。


「……!」

 ノエルの身体が、震えた。


 そして時が過ぎた。


「……」

「……」

「……えっと……もう、終わったかな?」

 緊張で声が震えているのが、自分でも分かる。

「……」

 ノエルは、無言のまま頷いた。どんよりと澱んだ目をしている。


 僕は、彼女を立ち上がらせて、スカートを下ろした。

 そして、なるべく下を見ないようにしながら、下着を持ち上げて履かせる。


「……ごめん。その……どうやってお詫びをすればいいのか、分からないけど……あの時は、あれが一番いい行動だと思ったんだ。決して、卑猥な目的でやったことじゃない。それだけは信じてほしいんだ……」

 僕の弁解に対して、ノエルは無反応だった。


 相当強い怒りを感じる。

 あれだけのことをされたのだから、無理もない。


「……紐は、ベルさんに解いてもらおう。その後で、その……君に、可能な限りの償いをさせてほしい」

「……」


 やはり、ノエルは無反応だ。

 ひょっとして、このまま永遠に口を利いてくれないのではないか……?


「……あの、ティルトさん」

「な、何かな?」

「先ほど、たとえ事故であっても、怒っていいと言いましたよね? あれは、嘘ではないですよね?」

「う、嘘じゃないよ……」

「……私、とてもショックでした。今、とても傷付いています」

「……」

「あれを、貴方が、悪意に基づいてやったとは思っていません。紐が切れなかったのは不可抗力ですし、転んだのも、助けを呼んだのも私です。貴方のおかげで、服や足を汚さずに済んだことも、感謝しています。今の私は、着替えることも、身体を洗うこともできません。なので、最悪の事態を避けようとした貴方の判断は、正しかったと思います。……でも、私は耐え難いほど恥ずかしい思いをしました。お分かりでしょうか……?」

「う、うん……」

「……ですが、私は貴方を殺そうとした人間です。なので、本来であれば、とても酷い仕返しをされても仕方がないと思います。それでも貴方は、私に罰を与えることに、反対してくださいました。そのご恩は、忘れておりません。なので……私は、貴方に対して、怒りをぶつけたくありません」

「……ありがとう」

「それで、あの……私が男性の前で醜態を晒した、ということは、2人だけの秘密にしてください。こんなことを誰かに知られたら、耐えられませんから……」

「約束するよ」

「それと……正直に、答えてください。どこまで見ました?」

「……なるべく見ないように、配慮はしたよ。見えたのは、君の下着と……濡れた地面だけだよ」

「……」


 気まずい雰囲気のまま、僕達は、再び元の場所に戻った。

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