第39話
僕は、怯えきっている女を眺めて、この後どうするべきか考えた。
この女は若く、新人に近いという話は嘘ではないだろう。
そもそも、警備隊における女性隊員の地位は低いはずだ。指導的な立場であることはあり得ないはずである。
また、僕はベルさんと違って、色々な情報を教えてくれた相手を、躊躇なく殺したりはできない。
だが、この女が、僕達を殺そうとしたことは事実だ。
ならば、それなりのお仕置きをしてもいいだろう。
先ほど追い付いた際に、僕はこの女のことを殴らなかった。
偶然のようにも思えるが、無意識のうちに相手が女であることに気付き、手加減したのかもしれない。
せっかくなので、有効に使わせてもらおう。
そんなことを考えて、思わず笑ってしまう。
それを見て、女はビクリと震えた。
まずは、周囲の状況を確認する。
警備隊の連中は、全員が死ぬか、逃げてしまった。残っているのは、この女だけだ。
追撃をかけた際に、それなりの距離を走ったので、ベルさん達からは見えない場所まで来ている。
森の中に入ったので、通りすがりの人間に見られる心配もない。
しかし、ここで何かをするのはまずい。
加速の魔法が使えるレレならば、僕のことを追ってくるかもしれないからだ。
ベルさんはともかく、他の女性には、女を嬲って楽しんでいる場面を見せたくなかった。
それに、この女の仲間が戻ってくるかもしれない。
楽しんでいる最中は、どうしても隙が多くなる。不意を突かれるリスクは避けた方がいいだろう。
「鎧や、隠し持っている物は全て捨てろ。後で身体検査をする。その時に武器を見つけたら、僕はお前を殺すからな」
そう告げると、女は震えながら装備を捨て、布の服だけを身に着けた姿になった。
「頭の後ろで両手を組んで、あっちに向かって歩け。お前の仲間が、簡単に見つけられない場所まで行くんだ」
そう命令すると、女は素直に従った。
こちらの意図は、概ね伝わっているはずだ。
間違いなく、これから凌辱されると思っているだろう。
しかし、逆らえる状況ではないことは分かっているはずである。
しばらく歩き、木が密集している所まで来る。
これで、レレや、この女の仲間に発見される恐れは低くなった。
たとえ叫んでも、誰かに聞こえる可能性は低い。
仮に聞こえたとしても、位置や方角までは分からないだろう。
「止まれ。それから、こちらを向け」
女は、やはりこちらの指示に従う。
その様子は、抵抗する意思など無いように見えるが、そのように振る舞いながら、こちらの隙を窺っているのかもしれない。
若いとはいえ、警備隊の人間だ。このような事態に備えて、訓練を受けているおそれがある。
ノエルが僕達を騙そうとした直後だ。
油断するわけにはいかない。
「いいか、身に着けている物を、全部脱ぎ捨てるんだ」
「……!」
女は、今回の命令に従うことは躊躇した。
しかし、やはり命が惜しいのか、衣服を脱ぎ捨てて下着姿になる。
「あ、あの、これ以上は……!」
「駄目だ。命が惜しいなら、全部脱ぐんだ」
そう告げると、女は躊躇しながらも、下着も脱ぎ捨てて全裸になった。
そして、耐え難くなったのか、身体を両腕で隠す。
警備隊に所属しているだけあって、鍛えていることが分かる身体をしている。
胸の膨らみが小さいことは残念だが……羞恥に苛まれている様は、なかなか良い。
「そのまま後ろに下がれ」
女は、目に涙を浮かべながら、僕の指示に従う。
枝や石が足の裏に当たるらしく、時々下を気にする素振りをした。
僕は、女が脱ぎ捨てた衣類を拾い、片っ端から、手で細かく引き裂いた。
女は、僕の意図が分からないらしく、困惑している。
しかし、そのうち、明らかに困った表情になる。
再び身に着ける物を、失ったことに気付いたのだろう。
「いいか、お前は、その姿のまま仲間のところに戻るんだ」
僕がそう告げると、女は明らかに狼狽えた。
「ま、待ってください! お願いですから、何か、身体を隠す物を……!」
「言っておくが、僕は、お前と同じ格好にした女を縛り上げて、人目に付く場所に放置したことがある」
「そんな……!」
「安心しろ。お前のことは、縛ったりはしない。ここで餓死させるつもりは無いからな。そうだ、喜べ。靴だけは返してやる。これで、足を怪我するリスクも無くなるはずだ」
「あんまりです! こんな格好で、人前に出られるはずがないでしょう!?」
「そうだな。お前が全裸で戻ってきたら、警備隊の連中は、凌辱されたと思い込むだろう。お前がそれを否定しても、誰も信じないだろうな。連中は、表面的にはお前に優しくするかもしれないが、きっと色々な妄想をして、毎晩のように楽しむだろう」
「……!」
自分がこれから送る地獄のような日々を想像したのか、女の顔は蒼白になった。
「それが嫌なら、あの村に戻って服を借りるのも、1つの方法だ。だが、そんなことをしたら、あの村の連中だって、お前が凌辱されたと思うだろう。隊員がテロリストに弄ばれた、などという噂が広まったら、警備隊の威信に傷が付くかもしれないな」
「……」
「どちらにしても、お前は警備隊にいられなくなるはずだ。良かったじゃないか」
「ふざけないでください! 何がいいっていうんですか!?」
「警備隊の連中は、お前達に協力しようとした、ノエルのことまで殺そうとした。そんな組織は害悪だ」
「それは、貴方達が帝国を脅かしたことが、そもそもの原因でしょう!?」
「そうだな。だが、警備隊がノエルの家を焼いたせいで、お前はこっそりと服を借りるアテまで失った。おかげで、お前は警備隊の男達から、妄想の対象にされるリスクが高まったわけだ。悪人には相応の報いがあるものだな」
「……」
「好奇の視線に晒されながら、好きなだけ僕を恨め。女の警備隊員には、すぐに脱退するように促すことだ。今後、女の警備隊員を発見したら、全員男の前で全裸にしてやる」
「この……ケダモノ! 人でなし!」
女は、涙を流しながら叫んだ。
嫌われても構わない相手を苦しめるのは、こんなに楽しかったのか。
機会があれば、何度でも、この気持ち良さを味わいたいものだ。
僕は、わめく女を放置して、その場を後にした。




