表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
白銀の簒奪者  作者: たかまち ゆう


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

31/116

第30話

「ねえ、ティルト。貴方……どうしちゃったの?」

 休憩の際に、僕が1人になったところを見計らい、クレアが僕に近寄ってきて、そう言った。

「僕はどうもしないよ。まあ、ミアを死なせちゃったことは、ショックだったけどね……」

「今の貴方はおかしいわ。何だか、人を殺すことへの抵抗感が、薄れてきているみたい」

「そんなことはないよ。だから、ベルさんが野盗を殺すことにだって、反対したんじゃないか」

「でも、理由は、魔力を温存するためだったじゃない」

「あれは、ベルさんに納得してもらうための方便だよ」

「そういうやり方を、否定するつもりは無いわ。でも、あの時の貴方からは、そういう印象は受けなかったの。まるで、殺すこと自体は問題ない、とでも言いたげだったじゃない」

「考えすぎだよ」

「だったらいいけど……」


 クレアは、集合地点に帰って行った。

 1人になって、僕は首を振る。


 彼女は優しすぎる。

 まさか、あんな連中の命を奪うことにまで反対するなんて……。


 先ほど、クレアがベルさんに言い負かされた時。

 言葉には出さなかったが、僕は、ベルさんの言葉に共感していた。


 色々なことを経験した今なら、はっきりと分かる。

 オットームは卑劣で醜く、下等な民族だ。

 ダッデウドと同じ人間だとは、とても思えなかった。

 

 とはいえ、僕はベルさんと違って、全てのオットームが、ダッデウドよりも劣っているとは思っていない。

 何故ならば、オットームの中にも、クレアのような優れた人間がいるからだ。

 カーラだって、美しく、ミアのことを心から思う、善良な人間だった。

 彼女達のような存在に対しては、ダッデウドと同等の価値を認めても構わないと思う。


 だが、あの野盗達は、クレアやベルさんやレレのことを、凌辱して売り飛ばそうとしたのだ。

 生かしておく価値などあるとは思えない。むしろ、本来ならば積極的に殺しておくべきクズである。


 あの時、ダッデウドとして僕が目覚めなかったのは、レレの実力に驚いて、怒りが高まらなかったことも原因の1つだが……自分の心を抑制しようとしていたことが大きい。

 前の町で、欲望に任せて、女性に対して外道な行為をしてしまった。

 その経験が、僕を躊躇わせたのだ。


 極悪人とまではいえない相手に対して、過剰な行為をするのは、普段の僕の価値観に反する。

 ましてや、クレアの前であんなことをして、軽蔑されるのは嫌だ。


 しかし、今になって思う。

 あの連中に対しては、怒りを爆発させて、ダッデウドとしての覚醒を促進しておくべきだったと。


 非常にもったいないことをした。

 次は、決して躊躇しないようにしよう。


 その後の旅は、特に問題なく進んだ。

 僕達は、わざと大きな街道を通り、人が多く住んでいる場所の近くで野営した。

 クレア以外は全員が髪を隠しており、すれ違う人からは不審に思われる可能性もあるが、なるべく魔力を回復させるためには仕方がない。


 本来ならば、街の宿に泊まりたいところだった。

 しかし、あまり大きな街に入れば、常駐している警備隊に捕らえられる恐れがある。

 もっと小さな村などであれば、そのような心配もないのだが……。


 街の近くで野営してから2日後、僕達は、小さな村に辿り着いた。

「今夜は、この村の宿に泊まりましょう」

 ベルさんのその言葉に、反対する者はいなかった。


「今日は、男性と女性に分かれて泊りますよね?」

 僕はそう尋ねた。

「でも、お金が……」

 クレアが、心配そうな顔をする。

「大丈夫だよ。その……ミアの友達から、お金を貰ったんだ」

 盗んだとは言えずに、僕は誤魔化す。

「そうなの?」

 クレアの質問に対して、ベルさんが頷く。

「ええ。だから、今日は2部屋に分かれて泊るわ」

 当然である。そのために、僕達はお金を盗んだのだ。


「そう。良かった……」

 クレアは安心した様子で言った。


 僕は、少し複雑な気分になった。

 僕と同じ部屋で寝ることが、そんなに安心できないことだったのだろうか?


「でも、ティルトを1人にしておくことはできないわ」

 ベルさんが、そんなことを言い出した。

「えっ……?」

「考えてもみなさい。いつ、追手が来るか分からないのよ? ひょっとしたら、警備隊の人間が、既に村の中に潜んでいて、私達が油断するのを待っているかもしれないじゃない」

「でも、僕は誰と一緒に泊まるんですか……?」

「決まってるじゃない。私と一緒に寝るのよ」


「待ってください! そんなの、納得できません!」

 ベルさんの提案に、クレアが激しく抗議した。

「あら、これは当然のことじゃないかしら? だって、ティルトはまだ、ダッデウドとして戦えるか分からないでしょう? かといって、貴方には、ティルトを守れるだけの力が無いじゃない。とすると、ティルトと一緒に寝るのは、私かディフィしかいないわ。でも、ディフィはティルトと一緒に寝たくないはずよ。なら、私がティルトと一緒に寝るしかないでしょ?」

「冗談じゃありません! ベルさんとティルトだけを同じ部屋に泊まらせるなら、全員同じ部屋で寝た方がマシです!」

「そうなの? 私はティルトに身体を委ねても構わないのに」

「貴方がそういう人だから反対なんです!」

「でも、ディフィはティルトと一緒に寝るのを嫌がっているわ。かといって、この子だけ1人で寝かせるのも、仲間外れみたいでしょう? だったら、貴方とディフィが一緒に寝るのがいいと思わないかしら?」

「それはそうですけど……」

 クレアは、困った様子でレレを見た。


「……クレア。私、皆と同じ部屋でもいい」

 レレがそう言ったので、皆が驚いた。

「良かった! だったら、全員同じ部屋で寝ましょう!」

 

「ディフィったら、すっかりクレアになついちゃって」

 ベルさんは、不満そうに言った。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ