太陽
若干、詩のようになっております。
朝が来た。
そのことを知らせるように鳴っている、不快音を今も出し続ける元凶を叩く。
夏なのに涼しいくらいの廊下を歩き彼女の元へ、足を急がす。
扉を開け、真っ暗な部屋を壁伝いに移動し光を求める。
リビングのカーテンを勢いよく開ける僕は、綺麗な朝日を見た。
部屋は僕の真後ろ以外を照らし、熱を齎す。
どうやら彼女も起きていたようだ。
カーテンに手を掛けたまま、今日も僕は呟く。
「綺麗だね」
周りに聞こえないくらいの小さな音だった。それなのに彼女は今日も激怒しだす。
顔を真っ赤にさせ、空気を揺らし、離れている僕にも熱気が伝わってきた。
無言のまま支度を済ませ、会社へ向かう。今日も喧嘩をしてしまい僕は、意地を張った。「いってきます」の一言なんて言えなかった。
そして今日も嫌がらせのように彼女は会社まで付き纏う。
その努力を、もっと優しさに向けてもらいたいものだ。
そんな心を見え透いたのか彼女の鋭い双眸を感じる。どうやら今日はいつも異常(以上)に怒っているようだ。
しかし相変わらず彼女は途中途中、見えなくなってしまうが必ず会社の前まで来ている。
今までの傾向から推察するに、猥雑な音の多い場所に、彼女はあまり顔を見せない。
そのせいか、彼女は会社の中まで入った事は無い。
同僚に挨拶の一つもせず、固まったまま今日も見下してくる。
都会の人達はあまり気にした様相をみせないが、僕としては不愉快だ。
万古不易に近い笑みを覗かせる彼女を見てそう思う。しかし、美しい。
僕は少しでも見下せるように、顔を上げ矮小さを表すような笑みを作る。
と、同時に凄まじい暑さを感じ、堪らず会社に逃げるように出勤。
仕事を終え帰ろうとすると、劣悪な光が途絶え途絶えにあり、その他全ての空を黒い光が塗り潰していた。
彼女は今日も、迎えに来てくれない。
家に帰り、静まり返った部屋を見渡しても彼女は居なかった。
「はぁ、またか」
愚痴と混ざった溜息は、僕の心に蝋燭の火を与えた。
幽冥な火は必ず消え、一時の安息に他ならない。
彼女が、また旅に出たという事実に変わりは無い。
暗澹とした部屋と僕。彼女が居ないと世界は色付かない事を思い出す。
小さく、けれど大きい。僕の太陽はどこへ行ったのか、俯き考えを巡らす。
ただ考えを巡らし続ける。ある程度の検討は付いたが決定的情報が無い。
―――体を少し動かし視界が揺れる。
疑問のせいで頭を自然と動かしただけなのかもしれない。体を動かす事によって少しでも酸素を脳へ運ばせようと、生体反応のような出来事だっただけかもしれない。
しかし、目に映る出来事をただの絵としていた視線に、意識が合わさり見据えたいた物の情報を感じ、知る。
そこにあったのはパンフレットだ。
アメリカ旅行のパンフレットだ。
なぜそこに有るのかも分からない。僕が適当にもらい物を置いただけかもしれないが、直感した。
彼女はアメリカにいる。
すぐに顔の見えない、けれど知っている声の主に、休暇する旨を伝えた。
僕は呑まれる様に、大きな図体の小さな入り口に入り、飛び立つ。
そしてアメリカの空港で彼女を見つけた。
オーストラリアのときと違い、冷たく冷ややかな目線を送る彼女はそれでも輝いていた。
寒さを感じる僕は彼女に謝罪した。「ごめん」としか言えなかったけど次第に暖かさを感じた。
僕はオーストラリアに戻るため飛行機に乗る。
オーストラリアは夜だった。光に照らされた美女が僕を誘惑するが浮気はしない。
そんな美女はつまらないと思ったのか、次第に消えていき朝が来る。
彼女は帰ってきた。今日も眩しい綺麗な彼女が。
お読みいただきありがとうございます。
普通に読んでも面白くないと思いますので少し解説いたします。
ヒントは太陽です。
主人公はカーテンを開けたことによって真っ暗な空間に光が入ってくるわけです。
そこで彼女を部屋の中で見るのかそれとも空の・・・。
次にアメリカでは冷たいとなっています。
怒らせたから冷たい態度になっているのか、赤道を・・・。
最後に光に照らされた美女とは、人工灯に照らされた美女なのか、自然灯つまりは太陽に反射した・・・。
もう一度繰り返しお読みいただくと面白いかもしれません。
是非想像しながらお読みください。