こまめな小休止
深夜の高速道路を一台の車が走っている。時計のデジタルは二時過ぎを表示していた。慣れない車の運転を長時間続けていた男は、気を張り続けた疲れからか、うつらうつらと睡魔に襲われていた。
「うう、いかんいかん。眠気が酷いな…。次のサービスエリアで休むとしよう…。」
しかし、男はとうとう睡魔に勝てず、運転操作を誤った男の車は走行車線をはみ出し、防音壁に向かって…。
「はい、どうもお疲れ様でした。」
その声で、男は我に返る。声の主である教習所の教官は『バーチャル運転装置』の扉を外側から開けると、装置の中にいる男に言った。
「どうもあなたは無理して運転してしまう傾向があるようですね。小休止はこまめにとって運転しましょう。」
「まさか車の運転がこんなに怖いとは…。どうやら私には車の運転は向いていないようです。」
そう言うと、男は部屋から出ていった。男の後ろ姿を見送った教官は一人呟いた。
「彼は元から運転に向いている性格ではなかった。いずれ事故を起こす前に、この装置でわざと事故を体験させて免許取得を諦めてもらう…。それも立派な我々の仕事だ。」
そして教官は、装置へ睡眠ガスを補充した。