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拓海にもきちんと言い分はある。
自分と健介は親友だと思っている。
だからお母さんが現れたという重要情報を、自分の口から伝えた。
その後のいきさつを健介がはっきり言わないから、翼と一緒に後をつけてお母さんの居場所も確かめた。その後に健介の父さんにその場所を教えることになったから、やっぱり自分は健介の親友として頼りにされてると思った。
健介の立場に自分を置き換えてみたら、自分だったらお母さんと暮らしたいと思ったから健介にもそう言った。
そして健介の父さんとお母さんがヨリを戻せば健介が転校しなくて済むと気付いたからそれも教えた。
土日は健介と遊んでいないけど、どっちの家にいるかわからなかったし天気も悪かったし、月曜日に会えばいいと思った。
それが、月曜日の朝、学校に行く前にテレビの中の健介に、会った。
父も母も昨夜遅くから報道されているこのニュースで興奮していて、拓海に詳しい説明をしてくれなかった。正確には拓海の父母も詳しい情報を持っていないので説明できなかった。
攫われて夕べ高速で逃げ出して助かったんですって!犯人はこの二人って、拓海見たことある?
そんな母の浮かれた声に拓海はむっとした。だから、知らない、と嘘をついた。
だってあの犯人の写真、「お母さん」だろ?健介がそう言ってただろ?あの父さんだって健介渡しただろ?
登校グループの集まる翼のマンションの下で待っていたみんなもほとんど拓海と同じ状態だった。
しかし夕べのニュースをリアルタイムで見ていた夜更かし組の悪いやつらもいた。寝むそうな目を擦って自慢気にテレビの中の健介の様子を語る。
あいつさー、赤ん坊みたいに泣いてんの。てか健介パパ超かっこいいのな。怒鳴ってんの見た?『触るな』って!かっけー!
それを聞いて拓海はさらに腹を立てた。
なんでお前らが、偉そうに健介と父さんを語ってんの?お前ら何にも知らないだろ?犯人ってテレビに映ってた写真、あれ健介のママなんだぞ。そんなことも知らないくせに。
拓海は集まっているみんなの前で、大声でそう言った。
学校の門の前に行くとカメラを持った人が何人かいて、その人たちにも同じことを告げた。一緒に登校してきたグループの他の仲間も他の大人に同じことを言っていた。
それに気付いた先生が、急いで走ってきて急いで校舎に入るようにと児童全員に命じてカメラマンには児童にカメラを向けるなと怒鳴った。
その映像が、昼のローカルニュースで流れた。
その日の放課後、学校に保護者が集められて急遽説明会が行われた。
事件当初から学校には警察からの連絡が入っていた。
健介の事情を知っている校長以下全教諭が、一報の入った土曜日の夜から交代で学校に詰めていた。原田に直接連絡することは警察に止められたためしなかった。
だから先生たちは交代しながら刻々と警察からの連絡を学校で待ち続けていた。健介が車のトランクに監禁された連絡が入った時などは、女性教諭が泣いた。
日曜の夜までそれがじりじりと進み、白沢で発見されまた連れ去られたなど再び落ち込むような連絡の後に、突然高速で走っていると告げられ、なんのことだと浮き足立っている間に、健介が父親に保護されたと警察から正式に連絡があり、先生たちは一斉に泣きながらバンザイを繰り返した。
先生たちも長い一日を終えて自宅にもどりやっとゆっくりと寝られることになったのだが、
しかしこれだけの事件なので興奮して眠気も訪れず、テレビではほぼ全局がこのニュースで持ち切りで、先生たちもほぼ全員碌に寝られずに月曜日登校していた。
職員室で顔を合わせればみな同じく目を赤くしているので笑い合った。
昨日は大変でしたな。全く寝られませんでしたよ。私もです。テレビは見ましたか?ええそりゃもう、新聞も大騒ぎですし。なにしろ無事に助かってよかった。それがなによりでした。原田君は今日は登校しないんでしょう?入院したと警察から連絡がありました。そうでしょうねぇ。子供たちも大騒ぎでしょうねぇ。多分そうですね。原田君のクラスなんかはきっと大変ショックを受けてるだろうと思いますので、担任の小嶋先生よろしくお願いしますよ。はい!子供たちには落ち着くようにと!
校門に迎えに出た方がいいですね?そろそろ早い子は来ますよ。
そうして先生たちが校舎を出たのだが、一足遅かった。
拓海がカメラに向かって一通りしゃべり尽くした後だった。
小嶋先生が拓海を捕まえて、カメラに何を言ったのか訊きだし、健介のために警察が隠した事実を暴露してしまったと知り、青くなって職員室に駆け戻った。
そして校長が保護者会を開く決定をした。




