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ARROGANT  作者: co
翌火曜日
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 そして君島と入浴。

 ざっと流してから健介が先に湯船に浸かる。

 それからシャワーで頭を洗う君島をじっと眺める。


 まるで、漫画か彫刻のような筋肉質の身体に、可愛い美女顔が乗っている。

 見慣れているはずなのに、健介は見るたびに感心する。

 他にこんな身体の人を見たことがないし、他にこんなに可愛い顔の人を見たこともない。

 それがくっついて一つになってここで頭を洗っている。


 そういうことを、秋ちゃん自身はどう思ってるんだろう?他の人は?例えば、父さんは?


「……秋ちゃん」

「ん?」

「父さんと、一緒に温泉とか入るよね?そういう時って、」

「入らないよ」

「え?」


 君島が濡れた髪をかき上げて、健介を見た。


「浩一は誰ともお風呂に入らないよ。健介も入ったことないだろ?」

「……あ、うん」

「入らないんだよ。朱鷺ちゃんともヤマちゃんとも入らないんだよ」

「なんで?」

「教えてくれないけどね。朱鷺ちゃんの推測ではね」

「うん」


「般若背負ってる」


「……へ?」


「僕の予想は昇り竜なんだけど」


「え、それって、」


「ヤマちゃんの予想は唐獅子牡丹、」

「入れ墨?!」

「よくわかったね!」

「そんなわけないじゃん!」



 なんてばかばかしい大人たちなんだろう。健介は笑った。



「なんで一緒に入らないのかなぁ」

「さぁねぇ。なにしろ独りの生活が長い人だから、ほとんどのことを独りじゃなきゃできないみたいだよ」

「……秋ちゃんは独りじゃ暮らせないのにね」

「あ。そういうこと言う?僕だって独り暮らししてたことはあるんだよ」

「すごいね。すごかったんだろうね」

「普通だよ。今時はね、誰でも独り暮らしぐらいできる便利な時代なんだからね」

 身体を洗い終えて君島がそう言い、立ち上がった。

 健介も湯船を上がり、君島と交代する。シャワーを出して頭にかけた。



 そんなふうに長く独りで暮らしてきたのに。いまだにほとんどのことを独りじゃなきゃできないのに。

 どうして僕を。

 シャンプーを泡立てる。


 どうして、じゃないのか。

 僕が捕まえたんだよね。

 がしがしと頭を洗う。


 僕が捕まえた。

 そうなの?だけど、そうだとしても。

 シャワーで髪を流した。

 そして君島を振り向いた。



「秋ちゃん。僕はどうやって父さんに拾われたの?」



 バスタブに頬杖をついたまま君島が、健介の頭に手を伸ばした。



「拾われたとか言うな。お前は物じゃないんだから」

「じゃ、何て言うの?」

「出会った、ぐらいでいいんじゃない?」

「出会った?じゃ、どうやって出会ったの?」

「僕も詳しくは知らないんだよ。浩一が起きたら本人から聞けばいいよ」


 健介は首を振った。


「父さんにも聞くけど、その前に秋ちゃんに聞きたい」

「なんで?」



「だってきっと、父さんは嘘つくと思う。僕のために、僕に言いたくないこととか隠すと思う」



 うはは、と君島が笑った。



「信用ないな、浩一。でも、そうだよね。僕もそう思うよ」

 健介も笑って頷いた。

「浩一は甘い父親だから。ずっとお前にだけ甘いから」

 健介は笑ったまま唇を噛んだ。



「お風呂上がったら、話しよう」

 君島がそう言って、また湯船に沈む。




「浩一の主張では、全部天気予報のせいらしいよ」


 ん?と健介が顔を上げた。


「年末までの長期予想が悪かったんだって。天気がいいのは今日ぐらいって」

「うん?」

「NHKのお天気お姉さんが朝そんなことを言ったから、浩一は年内乗り納めのつもりでバイクで出勤したんだって。今ぐらいの11月末」

「うん」

「だから、お前に出会った」

「うん?」



「だから、NHKのお天気お姉さんのせいで、お前に出会ったらしいよ」

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