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周囲がすっかり暗くなり、パトカーはやっと高速を降りた。
これから通夜を営んでいる鷹村邸に向かう。
再度健介が連れ去られたのだから自宅に戻った方がいいと刑事に助言されたが、原田も君島も聞かなかった。
誘拐の目的が遺産なら、犯人は必ず健介を連れて屋敷に行くはずだ。鷹村邸で待っているのが健介に会える最短距離のはずだ。だからこのままそこに向かう。そう応えて、スピードも緩めるなと頼んだ。
そう結論を出していながら、本当にそれでいいのか原田は悩み続けている。
また刑事の電話が鳴った。
さっきから何度も経過報告の連絡が入る。
聞き耳を立ててはいるが、欲しい情報は一度も入ってこない。
健介の行方を知らせてくる電話は一度も掛かってこない。
だから今度も俯いて、電話に応える刑事の声を聞いていた。
その声が、ひっくり返った。
「……何?!高速で!そう名乗ったのか?!」
刑事がそう叫んで、振り向いた。
「健介君が、高速の路肩を逆走している!」
「え!」
声を出したのは君島だ。原田は絶句している。
「そこの、入ったばかりの白沢SAから逆に走ってきて、緊急電話で管制室に連絡してきたそうだ!」
「すごい!健介!」
やはり君島が反応した。
「いや、しかし、車もそれを追って逆走していて?健介君がそれから逃げてる?」
刑事が電話の相手の言葉を繰り返す。
「え……」
やっと原田が反応した。
路肩を車が逆走して走っている健介を追ってる?
今から行っても間に合わない……!
健介が捕まる!
「どうしたら……!」
「すぐに高速に戻ります!」
運転している警官がウィンカーを出した。
「僕は降りる!」
君島が大声を上げた。
「僕は、病院に行きたい。朱鷺ちゃんが心配だ」
原田はその言葉に驚いたが、君島が何か企んでいる風に原田を見て頷いた。
その後君島が別のパトカーに乗り換えることになり、車を降りた。
君島を下したパトカーはすぐに来た道を戻り、高速に向かって走り出した。赤色灯を回して。
そして車を降りてすぐ君島は、携帯のボタンを押した。




