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ARROGANT  作者: co
日曜日
47/194

 何も進展せず、何の情報も上がらないまま夜が明け、昼になろうとしている。


 君島は和室で毛布を被って横になっている。寝てはいない。寝られるはずはない。

 原田はリビングの壁にもたれて座っている。何時間も同じ姿勢のままでそこにいる。


 警官がうろうろして、話をしたり電話をしたりしているが、捜索は一向に進んでいない。




 そして突然、原田の携帯が鳴った。


 警官たちが全員一瞬で、臨戦態勢の空気を纏った。君島も飛んできた。


 原田の反応が一番遅かった。


 それでも急いで立ち上がって慌てて警官から携帯を受け取った。

 しかしその画面の表示は、


『社長』


 だった。



 原田はため息をついて、通話ボタンを押した。

『おー!原田。休みに悪いな。来週のオープンハウスの時間なんだけど、』

「あの、すいませんけど、当分この携帯に連絡しないでください」

『あ?なにが?』

「理由は今度言います。俺から掛けるまで、」


 そこまで言ったところで、横から手が伸びて携帯を奪われた。


「ヤマちゃん?あのねー、健介が迷子になって、今この携帯で連絡待ちなんだ。急用があったら僕に連絡して。うん。ありがと。じゃぁね」


 そう言って通話を切って、君島が警官に携帯を渡した。


「悪かったなって」


 君島が原田を見上げて、そう言った。








 長い長い時間、地獄のような絶望に浸かっていた健介に、やっと光が与えられた。


 トランクが開けられ、日光と寒気と新鮮な空気を全て同時に味わった。


 長い長い地獄だったから、健介はこれだけで幸せな気がした。

 明るい野外の広い風景だけで、天国に来たような気がした。


「健介。お腹空いたでしょ?クッキーあげる」

 お母さんがそう笑いながら、トランクの中の健介を立たせて、降りるように言った。


 出られるんだ。クッキーももらえるんだ。


 それだけで健介は、涙が出そうなほど、嬉しかった。


「後ろに乗ってね。これから家に行くから」



 トランクに入らなくていいなら、どこにでも行く。

 健介は大人しく従った。



 その健介を見て、黒い男が言った。


「汚ぇなぁ。やっぱ夕べ一緒に部屋連れて行って風呂に入れればよかったか?」

「逃げられたら困るって言ったのあんたじゃない」

「服も真っ黒だぞ?」

「あんたがトランクなんかに入れるからでしょ!」

「しかも黄色のパーカーって、これから葬式だろ?」

「どこかで買ってく?」

「金ねーし」

「じゃ、しょうがないじゃない」



 健介は車の中で、俯いてクッキーを齧っていた。




 鄙びたホテルの屋外駐車場を出た後、コンビニで一度トイレを借りた。

 健介は誰にも助けを求めずに大人しく車に戻った。

 そのまま長い時間、車に揺られていた。

 ずっと俯いていた健介がふと顔を上げて窓を見た。


 もちろん見慣れない景色で、ずいぶん空が広いような気がしている。

 枯れた大きな木が何本も立っている。

 道の反対側にも同じように立っていて、少し進むと白黒の縞の幕が張られていて、その奥にはたくさんの車が停まっていた。

 黒い服を着た人が何人もうろうろしている。

 

 そしてその先には、広い庭と旅館のような豪邸。




「よし!帰ってきたぞ!お前の家だ!ボウズ!」


 黒い男が笑った。

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