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ARROGANT  作者: co
土曜日
43/194

17

 自分がいつ何を間違ったのかはわかっていなかったが、健介がその意思に反して連れ去られたということはわかっている。

 僕はずっとここにいると、健介自身が笑いながら原田の膝を濡らしてそう言ったのだ。

 その健介を力づくで奪われた。

 健介の身が危険だということは重々わかっていた。


 原田は一度下がって、玄関ドアを蹴った。

 蹴りやぶって中に入って、何か手がかりでも探そう。

 しかし二度目に蹴ろうとした時、白い光を当てられた。


「そこで何をしている!」

「204の住人か!」

 原田が顔を顰めて手で光を遮り、走り寄ってくる二人に目を向けた。

「おい!名前は!」

「通報があったぞ!」

 懐中電灯を持った制服の警官だった。

「名前は!」

 二人で逃げ道を阻み高圧的に訊いてくる。


 警官は嫌いだが、恐らく健介の捜索を助けてくれる二人だ。君島があの後すぐ通報したとしても、対応が素早い。


「204の住民が小学四年の男子を連れ去ったと通報があった!お前か!」

 警官の一人が一歩近づいてライトを原田に当てた。

 原田は光を避けて俯き、応えた。


「……原田です。連れ去られたのはうちの息子です」


 警官が、はっとライトを下し、一歩下がり、しかしさらに訊いた。


「身分証明、お持ちですか?」


 原田は頷き、ポケットを触り、それから何も持たずに家を飛び出したことを思い出し、口を押えて俯いた。


「どうしました?」

「……慌てて、何も持たずに来たので、車の、車検証なんかじゃだめですか?」

「それはちょっと」

「しかし、」

 原田は顔を上げて首を振った。


「そんなことで時間無駄にしてる場合じゃない。俺のことはいいから健介を、」

「え、いや、しかしあなたが原田さんだという証明がないと、ここにいる以上犯人ではないという証明ができない」

「んー……」


 くだらない。こんなことで。

 原田はこの二人を殴り倒して逃走しようかとすら考えた。

 こんなことをしているヒマがあるなら健介を探してくれ。

 原田はいらいらしていた。


「原田さん」

 警官に呼ばれて顔を向け、その瞬間フラッシュが光った。

「本部に、顔の確認をしてもらいます」

「え?」

 そしてすぐにその警官の携帯が鳴り、短い受け答えで通話を切り、原田に告げた。


「失礼しました。原田さん。この部屋はこれから管理会社を呼んで検証することになります。原田さんはどうぞ、ご自宅の方にお戻りください」

「え?確認が取れたんですか?」

「はい。刑事部長に」

「は?」

「必ず、お子さんは見つかりますよ!」


 警官が、強い目で原田を見上げた。


「必ず無事に戻りますから!気を強く持ちましょう!」


 原田は、疑問を抱いたまま、頷いてそこを去った。




 そして自宅に戻ると、家の前に警察車両が何台も停まっている。


 それを見て、どんどん気分が重くなる。



 健介が事件に巻き込まれたのだと、時間が経つほどに思い知らされる。

 原田はまだ少しあの母親の愛情を信じていた。

 まさか健介を傷つけるはずがないと思っていた。

 しかしそう考える自分を、信用していない。


 君には判断能力がない。


 この君島の言葉を信用していた。


 なぜなら、これまでのことの全て、君島が正しかったから。

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