表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
ARROGANT  作者: co
土曜日
37/194

11

「ごめんなさいって、なんだよ?健介」

 君島が健介の腕を握って訊く。

「ん。あの、僕、お母さんのところに行くから」

「僕の話、聞いてたのか?」

「うん。聞いた。聞いたよ。僕は、」

 健介は頷きながら続けた。



「僕は、父さんの子供じゃなくて、苦労掛けた」



 そう口にすると、指先から熱が無くなっていくような感じがした。

 そう感じている自分も、本当じゃないような気がしている。

 それでも、決めた。自分で決めた。

 健介は目を閉じて、もういちど考える。



 僕はお母さんと暮らすことにした。

 元々そう決めていた。

 父さんも認めてくれた。

 だからそれが一番いい。


 だって僕を捨てたお母さんが反省して僕を探しに来て、


 ……違う。

 お母さんは父さんが勝手に僕を連れて家を出たって言ってた。


 嘘?


 だって、お母さんは火事で死んだって、みんなが嘘を言っていた。


 どれが嘘?


 だって、僕の名前だって、嘘なんだよ。


 嘘ばかり


 僕のまわりは、僕自身も、嘘ばかり


 僕は、誰なの?




 俯いていた健介の呼吸が激しくなり、君島は顔を上げさせて胸と背中を押さえた。


「健介」


 その名前は違う。

 僕じゃないんだよね。


「ごめんね。全然わかんないよね」


 わかるよ、秋ちゃん。

 なんか今、すごくわかっちゃったよ。


「なにもかも全部、浩一が悪いんだ」


 違うよ、秋ちゃん。

 なにもかも僕が、


 僕がいることが、悪かったんだよ。




「ごめんなさい」



 血の気を失った蒼白の顔で、健介が呟いた。


「ごめんなさい。お世話になりました」


「健介!」


 君島が健介の頬を両手で挟む。


「あのね!聞いてたの?お前はあのお母さんに捨てられたんだぞ!それからもう8年経ってる!ずっと僕らがお前を育ててきたんだ!」

「だから、ごめんなさい」

「謝るな!健介が悪いんじゃないんだから!」

「僕が、悪い」

「健介!」


「それは、僕の名前じゃない、んだよね?」


 健介は笑っていた。



 誰も僕がいらない。

 みんないらない。

 お母さんは僕を捨てた。

 父さんだって朱鷺ちゃんとマックスの方が大事だ。



「僕は、嘘だから、邪魔だから、いらないから、」

「そんなこと言うな!」

「本当だよ!だって!」




 ずっと頭から離れなかったことを、健介は口にした。




「だって、父さんだって、たばこで、たばこの火で、僕にヤケドさせた!」




 ドアの向こうで、ゴンっと何かが床に落ちた音がした。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ