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ARROGANT  作者: co
木曜日
20/194

 お母さんが夜遅くに帰ってきた。

 帰ってくるまで待っていようと健介は頑張ったが、日頃から規則正しく早寝早起きなので無理だった。

 晩ご飯も食べていないのだけれど眠気には敵わない。

 そしてお母さんは、日付が変わってから帰ってきた。


 乱暴にドアが開けられて、テーブルに伏せて寝ていた健介は驚いて跳びあがった。


「健介ー!ただいまーっ!」


 赤い顔をして上機嫌なお母さんがふらふらと健介に近づく。

 健介は立ち上がって言った。

「……おかえり、なさ、」

 お母さんはガバっと健介を抱き締め、ただいまぁ~っ!とまた笑った。



 お酒。と、タバコの臭い。

 何かが怖くて、健介は息を止めた。



「健介にね!お・み・や・げ!」

 そう言ってお母さんが、ぶらさげた寿司折りを持ち上げた。

「昨日は蟹で今日はお寿司なんて贅沢よねー!」

 お母さんは笑ったまま、ベッドに倒れ込んだ。


「幸せー!健介に会えて、幸せー!」


 そう呟いて、お母さんはそのまま寝てしまった。


 まだドキドキと早打ちする心臓を押さえて、健介はお母さんを呼ぶ。

 ちゃんとベッドで布団に入らないと風邪ひくよ。


 じきにお母さんはもぞもぞと動きだし、上着を脱ぎながらベッドに這い上がり、登り切ってからスカートを脱ぎ、下着姿になって布団に潜った。


 健介はそれを、また息を止めて見ていた。



 怖かった。

 何が怖いのかわからないまま、健介は震えていた。



 そして、お母さんの規則的な寝息が聞こえてきた。

 健介はまだ震えたまま壁に寄り掛かって、両腕を抱えるようにして座っていた。



 震えながら俯いて、ふと思い出す。

 そういえば、こんなふうに床に座っている時、ソファにもたれてゲームとかしているとき、いつもマックスが膝に乗ってきた。

 常に無愛想な猫なのに、健介が床に座るときだけ近寄ってくる。

 いつも父さんにばかり愛想を振りまく猫だけど、そんな時だけ僕にすり寄る。


 今マックスがいればもう少しあったかいのに。

 無愛想でもあったかいのに。

 そんなことを思い出して健介は笑った。



 そして、その姿勢のまま、いつの間にか寝ていた。

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