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ARROGANT  作者: co
翌木曜日
106/194

18

 四人でそれぞれ分担して健介の荷物を持ち、車に戻った。

 日が落ちてきて街が薄暗くなり、エンジンを掛けてライトを点ける。

 そしてとりあえず駅に向かって車を走らせた。


「で。駅前のデパートってどれだ?」

「どれでもいいよー」

 原田の質問に君島が応える。

「新しいテナントが入ったって言っただろ」

「どこでも新しいテナントは入ってるさ!」

「お前また嘘ついたのか?」

「嘘じゃないよ。忘れただけ。どこかのデパートにフランスのチョコの店が入ったんだけどどこだか忘れた」

「フランス……」

「ツインタワーの方だって!」

 健介が大声で挟まった。

「朱鷺ちゃんが知ってるって!」

「朱鷺が知ってるってことは橘ですでに買ってるってことか?」

「うん。買ってるんだって。お母さん好きだからそれでいいって」

「あー。じゃ、そうする」



 帰宅ラッシュの時間、さほど踏み込めないまま信号に引っ掛かり、碌に進めない。

 最前列に停まって信号が変わるのを待ちながら、ため息をついて対向車線を見て原田が呟いた。


「BMに買い換えようかな……」


「BM?!スバル売るの?!」

 君島が大声を上げる。

「スバル?なんで車だよ。バイクの話だ」

「バイク?!バイクにBMWってあるの?!」


 原田が顔を顰めて君島を見下ろした。


「BMいいねって!朱鷺ちゃんが言ってる!」

 健介が通訳して、対向車線に停まるバイクを指差した。

「あれだって!あの一番前に停まってる黒いバイク!」


 そして信号が変わって動き出し、対向車線の大型バイクは一瞬で走り去った。


「え!あれ?あんなにでっかいの?」

「BMだからな」

「えー。あれに似てた。バッファロー」

「牛?」

「大きすぎるよ」

「お前にはな」

「大きすぎてかっこ悪い」

「あの大きさがかっこいいって朱鷺ちゃんは言ってる!」

「だよな。あれがいいんだよ」

「今のでいいじゃん。バッタ色の」

「バッタ色って言うな」



 そんな話をしながら地下駐車場に降りた。



 それぞれ車から降りて店内入口に向かうと、やはり気付いた人にちらちら見られたりすれ違いざまに振り返られたりする。


「……鬱陶しいな。朱鷺、場所知ってるなら案内してくれ。とっとと買って戻ろう」

 原田が振り向いて朱鷺にそう言い、朱鷺がなんとなく意図を汲んで頷き、健介の手を引いて先を歩いた。


 ところがそれで、注目度が増した。


 朱鷺の今日のファッションは、何かの獣の冬毛にたっぷりと縁取られたフードの付いたダルオレンジの短いダウンジャケット、そこから緑のチェック柄が入った白いシャツの裾を半端に覗かせ、長い脚には革のような光沢のある黒のジーンズ、足元はキャメルのスエードブーツ。黒のニット帽から流れる長い栗色の髪がリアルファーの茶系グラデーションと共に歩く毎に弾む。

 耳の赤いピアスが目立つのはその大きさよりも朱鷺の肌の白さのせい。磨いたようななだらかな卵型の顔にはパーツがシンメトリーにすっきりと配置されている。

 ブーツを履いても原田よりは小さいが、長身痩躯で端正な小顔。

 そんな朱鷺が長髪をなびかせて颯爽と歩くので、周囲が一瞬驚く。

 モデル?撮影?ファッションショー?

 そしてそんな朱鷺の後を追って原田と君島が続くので、客は尚一層驚く。

 またしても店内がざわついてきたが、朱鷺が足早に的確にそのコーナーに案内して橘母の好みのトリュフチョコセットを指差し原田に支払をさせて速攻で別の通路から駐車場に戻ったので、騒ぎにはならなかった。


 再び車に乗り、再び原田が君島に訊く。

「次は?どこで待ち合わせ?」

「ラジオ局。街中のほら、なんとかビルの8階にあるFM」

「んー。なんとなく分かったけど、アポは取ってあるのか?」

「放送始まる前に行くって言ってある」

「放送って何時」

「7時」

「……もう、6時過ぎてるだろ」

「うん。まだ始まってはいないね」

「お前……」

「急げ!」

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