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ARROGANT  作者: co
翌木曜日
102/194

14

 原田が全く理解しないうちに、せんべい屋に到着した。

 そして四人で店内に入ると、一瞬全ての音が消えて、直後にざわつきだした。店員も客も全員四人を注目して、こそこそ隣に耳打ちしたり指を差したりしている。徐々にその声や音が大きくなる。

 原田は当惑したが君島は予想していたのでさっさとカウンターに向かい、手早く商品を二つ頼んで原田に支払わせ、とっとと店を出た。

 数人に声を掛けられたが無視した。しかし写真や動画は撮られたようだ。


「僕が言ったこと、わかった?」

 君島が原田を振り向いて訊いた。

「……現象はわかったけど理由がわからない」

 原田が顔を顰めて応えた。

「理由かぁ」

 そしてまた車に乗り込む。

「理由は、これから県警でおまわりさんが教えてくれるかもね」




 それから30分ほどで県警に到着し、四人で連れだって正面階段を登ると、入口前に立っているおまわりさんにまず驚かれた。驚かれて敬礼されたので、四人で驚きながらもお辞儀をして中に入った。

 中の受付で君島が、捜査部刑事部長の榎本さんにアポイントを取ってあるのですが、と言おうとして「そ」だけ口にした所でそこにいる警官全員が立ち上がった。

「き、聞いてますよ!聞いてます!ご苦労様です!これIDカード、首から下げてください!エレベーターは奥ですからそれで7階に!」

 年配のおまわりさんがわたわたとカードを手渡してエレベーターを指差す。ちょっと面白かったので、君島が笑って礼を言うと、おまわりさんも笑った。


「今日は一日、ご苦労様でした。テレビで見てましたよ」


 僕の自転車逃走劇を見てたんだ、と君島は苦笑した。


 そしてエレベーターまでの短い距離を歩く間も通り過ぎるおまわりさんたちが一様に驚いて敬礼するので四人でお辞儀をする。

「……なんっか、憂鬱だなぁ……」

 原田がエレベーターの中で呟く。


 扉が開き、目当てのフロアに向かい、開いてるドアに手を添えて君島がまず中を覗いた。

 中にいる職員の一人が気付いて、口を開けて指差した。

 それに気付いたおまわりさんたちが次々と振り向き、四人に気付いた。またしてもざわざわと注目される。



「原田さん」

 少し離れた場所にいる宮下刑事が笑って手を振った。

 やっと顔見知りを見つけたので原田も笑んで頭を下げた。


 それから、ぱちぱちと手を叩く音が聞こえ、その数が増え、すぐにフロア全体に広がった。

 よかったなー!

 よく助かった!

 よく逃げてきたな!

 よかったよかった!

 部屋中に広がる拍手と賞賛感嘆の声。




 またこれかよ、と、原田は天井を見上げた。




 その騒ぎの中、奥の扉が開いた。

 そして現れたのは、榎本刑事部長。


 榎本は、開けた扉を手で押さえたまま、しばらくその場で立ち竦んで四人を見詰めていた。

 正確には、原田を見詰めていた。

 原田も視線を真っ直ぐ返していた。

 まるで睨み合うかのように、二人は視線を交えている。

 拍手が徐々に小さくなる。


 それを見ながら、君島が笑って声を掛けた。


「榎本さん。時間取ってくれてありがとうございます」


 やっと榎本が頬を緩めて君島に目を移した。

 そして視線を落とした原田に言った。



「久しぶりだね。浩一君。こっちの面談室に来てくれるかな。健介君の荷物なんかが全部運んであるから」



 再び原田が顔を上げて、はい、と応えた。


 拍手と歓声はいつの間にか止んでいた。

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