プロローグ 前編
夏って暑いですよね
みーん、みーん
鬱陶しいセミの声と厳しい夏の太陽の日射しが俺の部屋にサンサンと降り注ぐ。
7月23日、俺、宮下隆史17回目の夏休み。
「あちー」
あまりの暑さに、クーラーのリモコンを連打して
しまう。しかし3日前までは、そこからでる
爽快な冷気で部屋は潤っていたのだが、今は、爽快な冷気は出ない。故障したのだ。横にあった、うちわで仰ごうとしたが暑さで、そんな気力も湧かない、夏なんか消えればいい。
春、秋、冬だけあればいい。夏は、何か失ったりしてしまう。
みーん、みーん
また、太陽の日差しが強く僕に降り注ぐ。
床は、僕の熱気を帯びて、気持ちわるいほど
蒸し暑くなっている。
あんなことが起こらなければ、夏なんか嫌いに
ならなかったのに・・・
10年前・・・
僕には、これといった友達がいなくて
帰りはいつもブランコで一人寂しく座っていた。
カラスが僕が一人でいいことに
ガンを飛ばしてくる。おいおい、いじめっこかよ
もう空は緋色になってあちこちから夕食の匂い
が漂ってくる。そろそろ帰るかと立とうした瞬間
「だぁれだ!」
冷たい手の感触が目の回りあたりにあった。
声は妙に甲高く子犬のような感じだった。
僕は、その冷たい手を外すと一人の少女が
これでもかっ!って位、満面の笑顔で立っていた。
少女の特徴は、身長は、僕と同じ位で髪は黒のロング、目は大きくてまるで子犬のような娘だ。
「ねぇねぇ何で一人でブランコに座っているの? 」
「・・・君には、関係ないだろ」
彼女は、少し黙りこんで、こめかみあたりに人差し指をつけて「ん~~」と唸りながら考えだした。
30秒位たって「ピカーン!」という効果音が
聞こえてきそうなくらい分かったような顔でいた。
「友達がいないとか?」
「ッ!」
その事を当てられることは分かっていた。僕は、
目頭が熱くなり気づけば泣いていた。
「どうして泣くの?」
「だってぇ!誰も話かけてくれないし休み時間
だっていつも一人なんだもん・・・もう友達なんかできないよ」
図星をつかれて、悔しかったなんで僕には友達がいないの?世界は、僕を嫌っているの?
僕の頭の中はさまざまなネガティブなことで渦巻いていた。そして、
「もうほっといてよ!」
僕は、逃げ出した。弱い動物のように、虫のように
もう友達なんか、友達なんか!
「待って!」
僕は、その 凛々しい声に思わず立ち止まってしまった。後ろを振り返ると、真剣な顔でこちらをみていた。その目は、僕のネガティブ思考を吹き飛ばした。
「待ってちゃだめよ・・・自分からいかないと!話かけないと」
「ッ!」
正論を言われて、何も言い出せなくなった。
もう、何も言い訳できない。
この時は悔しくて、悔しくてたまらなかった。
しばらく無言の時間が続いた。もう時計は6
時を回っている。すると、彼女は、
「私が友達になってあげる」
その言葉を聞いた瞬間、涙が出た。悔し泣きじゃない。嬉し涙だ。とても嬉しくて、涙が溢れる
僕の口からは自然とかれた声だか出ていた。
「ありがとう」
僕は自然と笑っていた。作り笑い、苦笑い、愛想笑いでもない心のそこから笑っていた。
「そういえば名前聞いてなかったね」
「宮下隆史、君は?」
「木崎凪沙よろしく」
もう空は暗くなっていて、このあとお母さんに
叱られ夕食を抜きにされたことは
僕にしか分からない。
これが俺の小学校の最初の友達だ。
でも、これが夏が嫌いになった理由ではない
この思い出には続きがある。
あんなことが起こらなければーーー