大人
それからも怪人は現れた。
石を砕くのを知って、砕かれるのをガードしようとする者も現れた。
そういう場合はそうしそうな奴に対して、触手を伸ばし先に四肢を潰しておくことで対処ができる。
『戦いがだんだんわかってきたぞ‥‥‥こちらのカードで出来ることを相手に合わせてやるんじゃいけないんだ。つまり、俺が俺らしく戦えるように環境を作るんだ‥‥‥!』
伸次はコツを掴んたので、戦いを有利に進め始めた。量産怪人はそれに恐れをなして、怯むようになったし、口だけの懺悔をし始めたが、伸次は容赦なく石を砕いた。
そのうちの一人が「知りたいことがあるなら話す」と言うので、四肢を砕いたうえで、話をさせた。
木に触手で縛り付けながら。
伸次を誘拐したのは〈ミノ会〉という組織。
伸次の胸に埋め込まれたのは「神石」という特別な力が宿った石で、その石の力で変身する白い怪人を「虚忌」と言う。
虚忌には「世界を支配する権力」があり、総帥は伸次をその器として育て、育ちきった頃に伸次の肉体を奪う予定らしい。
「ひどい奴らだ‥‥‥ゆるせない‥‥‥総帥ってのは世界を支配して何をするつもりなんだ」
「地球を月にぶつける‥‥‥と言っていた。だけだ‥‥‥」
それ以上は喋らないつもりらしい。石を破壊して、伸次はサイレンが近づいてくるのでその場をあとにした。
「地球を月にぶつける‥‥‥? なんのつもりなんだろう‥‥‥?」
黒い怪人のことは知らなかった。
黒い怪人はいったいなんなんだ。もしかしたら昭次かもしれないから、もう一度会いたいけれど、会えないのだろうか。
もう一度あの施設に行けば会えるのだろうか。
「‥‥‥いや、駄目だ。母さん心配する。遠出なんかしたら‥‥‥いけないんだ。じゃあどうする? どうする? どうする?」
途端に頭が働いた。
そういえば「獄兄弟の失踪」を追っているジャーナリストがいたはずだ。その人に連絡を取って、施設に向かってもらおう。
そう思いつくと、伸次は両親が眠っている隙に郵便受けや処分する予定の書類の中や、ゴミ袋を漁った。
そして、電話機を置いている台の引き出しに収められている彼の名刺を発見すると、通学路の途中にある電話ボックスで彼に電話をした。
最初いたずら電話だと思われたが、自分が獄伸次であることを明かすと、話に乗った。週末、彼が家の近くのファミリーレストランにやって来た。
彼の名前は速水志郎と言うらしい。
自分が行われたことを話し、〈ミノ会〉の名を出すと、志郎はぎょっとしたような顔をした。心当たりがあるらしい。
「すると君は、本当にヤバい案件に巻き込まれたわけだ」
「はい。それで、まだ兄があの施設にいるかも知れなくて。だって、俺があそこにいたってことは、兄もあそこにいたかもしれないってことだから。だから‥‥‥」
「俺が潜入して、お前の兄ちゃん探すんだ」
「お願い、できますか」
「任せろ」
志郎が獄家に声をかけたのは仕事ではなく、人脈を使った搜索の手助けだった。そして、自分がインターネットで公開しているホームページで情報を出し、一刻も早い発見を心がけた。
「そうだ、弟が警察やってんだよ。あいつにも声かけておくよ」
「いいんですか」
「当たり前だろ。警察はみんな探してんだもの!」
最近、善良な大人によく出会う。
「ありがとうございます、ありがとうございます、俺、俺、自分ひとりじゃなにもできないから、だから‥‥‥」
「いいんだよ、俺大人だもの。子供は大人に頼るものよ」
嬉しかった。




