地下にある室
十一歳になった。
両親は昭次が生きていて、警察が絶対に取っ捕まえる覚悟で動いていることを知ると、また元気を出そうと頑張っていた。
伸次は両親が生き続けようとしてくれたことに安堵して、母が物置小屋に隠していた練炭を持って小坂井家に向かった。
「そうか! ふたりとも元気になったか、よかったなぁ」
「はい。前は本当に大変そうで、俺マジ心配でした」
人を生かすために使おうぜ、あっ、肉焼こう。
両親も誘ったが、「世間が怒るから」と断られた。
無念に思いながら肉を焼いていると、龍三がやってきて、隣に座った。小坂井家の庭はわりかし広く、周囲の家とも距離があるので、冬場も堂々と肉を焼けるのが良かったが、わりかし庭が広いせいで寒さも倍らしい。
「寒いね」と伸次が言うと、「ほんと」と龍三も頷いた。
「‥‥‥そうだ! まだお礼言ってなかった」
「おれい?」
「うん。俺じつはね、初めて君に会った時、人を殺したくて仕方なかったんだ。父さんと母さんに酷いことを言う世間の人たちが憎くて憎くて仕方がなくて、仕方がなかったんだ。でもね、君が俺に、俺をかっこいいって言ってくれたから、大丈夫になったんだよ」
「私ナイスプレーだ」
「ほんとうにそうさ」
小坂井夫婦はその様子を見つめながら胸をなで下ろしていた。
二人から見ても、あの時の伸次は鬼のように見えていた。
「あと、君のおかげで俺もやるべきことがわかった」
「なんてぇの」
「俺、人を守るよ。人を守る男になる。君が俺をかっこいいって言ってくれたろ。だから‥‥‥龍三ちゃん、君かこれから先出逢うだろう俺なんかよりよっぽどかっこいい人を君と出逢う前に死んでしまわないように、頑張る」
「へぇ~。警察とかになるの?」
「なる。俺、警官になる!」
「応援してる!」
「ありがとう」
それから伸次は泰彦や志郎を伴って組織施設に向かったりもした。
警察の立ち入りがあってもう半ば廃墟のような荒れ具合になっていて、きっと収穫はないだろうとのことだったが、倉庫を見た際に不思議な感覚をおぼえた。
何がどうおかしかったかは分からないが、とにかく何かが変。
そういう感覚を志郎に話してみたが、志郎は何も感じないという。
「おっかしいなぁ‥‥‥」
「ほらここ、〈ミノ会〉の施設だろ。デリケートになってんのさ」
「そうなのかな‥‥‥うーん‥‥‥いや、ちょっとごめんなさい、試してみます」
伸次は変身して、倉庫の地面に触手を突き刺した。
「‥‥‥あっ、ほら、なんか空洞だ!」
「なんだって?」
「いま掘り起こしますね」
「俺らもやるよ」
三人で地面を掘り出すと、地下室のようなところがあり、其処には洞窟があった。
「伸次くんナイス」
「へへ」
「ここはなんだろう?」
「俺の霊感でわからないように細工がされているな‥‥‥見ろ、泰彦。これは札だ。総帥ってのは隠し事のうまいリスなのか?」
「兄さん、兄さんの直感はあんまり精度の高いものではないのだけれど、悪いことをしようとしているれんじゅうからしてみれば、見もせずに言い当てられるのは気分のいいものでないんだぜ」
「だからさ、俺のような人間にわからなくても、本命である伸次くんにバレるようにしたのはなんでだって話なんだよ」
「それは」
泰彦は肩を竦めた。
志郎は口角を上げてから「これからわかろう」と続ける。
「なんだろう、これ‥‥‥俺の胸にある石と同じ色だ」
「黒いな」
「はい」
「持って帰って、外山に見せてみよう。あたらしい兵器を、これから作ってくれるかもしれない」
「それ、いい!」
「な?」




