清香の幽鬼退治
「どう?」
「ちょうど参拝している所」
窓から覗いた先には、メガネをかけた中年の男性が力なさげに手を合わせていた。
「姉貴。幽鬼が神社に移るよ」
男性から黒い霧を纏った幽鬼が社の中に吸い込まれてゆく。
「あのオジサンが参拝し終わったら、行くよ!」
「おう!」
参拝を終えた男性がトボトボと神社を出て行くと、清香たちは静かに家を出て、社に駆け寄る。
「清一、開けるよ」
ギィィィィィ
鈍い音と共に扉が開かれると、スゥーっと黒い霧が静かに広がった。
「銀雪散桜」
清香が術を唱えると、周囲の気温がグッと下がり、まるで舞い落ちる桜に吹く一風の風ような粉雪が霧を包み込んでゆく。
霧に少し晴れ幽鬼の本体が姿を現した。
「魔狐今!」
駆けだした魔狐がコンと大きく鳴くと炎の竜巻が吹きあがる。
竜巻に熱せられた粉雪が儚く溶けてゆくと同時に幽鬼の身体も炎に巻かれ消えていった。
「すごい!」
ジュヌはその手際の良さに驚き清香と魔狐を交互に見た。
「さすがにボクもあそこまで手際よくいかないよ」
「姉貴、俺が来た意味は?」
「ゴメン。やっちゃった」
舌を出して清香が詫びると、清一はちょっとふてくされた仕草を見せるもすぐに機嫌を直して家に戻った。
(姉貴の機嫌が回復したからまあいっか)
清一に続いて清香たちも後に続く。
「そういえば、ジュヌちゃんはどんな式神なの? 西洋の娘なの? 妖怪には見えないから」
「清香さん、ちゃん付けはチョット……」
「あ、ごめんなさい。つい」
困り顔のジュヌに清香は愛想笑いを返した。
「ボクは太田さんに具現化されたフィギュアなんだ。ボクは銃士というマンガのキャラなんだよ!」
「……ごめんね。漫画とかあまり詳しく無くて、よくわからない」
困惑気味の清香に対し、元気一杯のジュヌは興奮気味に進めてくる。
「そうなの、なら今度読んでみてよ」
「うん、そうね。そうするね」
清香は清一に視線を向け助けを求める。
「無理。俺もよく分からない」
清一は首を横に振る。
「――清一さん、さっき知らないって言っていたよね? ホント読んでくれよ。面白いんだから」
(こっち来やがった)
「わかった、読むよ。そのマンガ持ってる?」
「ボクは持っていないよ。買っておくれよ」
「今は金ねぇから無理だけど、金入ったら少しずつ買うよ」
「ありがとう」
ジュヌの真っすぐな瞳に清一は適当に誤魔化したことに罪悪感を覚えた。
(買った方がいいよなぁ)
「あ、そうだ、姉貴、具現化を戻す方法教えてくれよ」
清一はジュヌの仕舞い方の方法を尋ねていたことを思い出し、清香に再び訪ねた。
「うーん、どうだろう? こういうケースは初めてだから調べてみないと」
「前に姉貴とオヤジがフィギュアを具現化できるって話してたじゃないか」
「話していたけど……そういう式神も出てきたねってことを話していただけだし」
清一は数秒考えこみ、出した結論を口にした。
「オヤジなら知ってるかな」
「それは、知ってるかもしれないけど、いいの? お父さんに話しても」
「まぁ、しょうがないよ」
「ねえ、ちょっと待って! キミたちの親はそんなに恐ろしいの?」
「恐ろしいというか……変わり者だよね」
「うん、間違いない」
「なんか、さ、ボク、ちょっとばかり不幸じゃないかな」
オドオドするジュヌを見て、さすがに居たためまれなくなった清香は、一つの提案をしてみた。
「さっき清一が言っていた三人だけど、大道寺には心当たりがあるから連絡とってみようか?」
清香が大道寺に連絡するという事は、おそらくそこから太田の元へ連絡が行くだろう。
「ジュヌが嫌なら他の方法を考えるけど」
「いや、このままだとお互い困るから確認して欲しいな」
「じゃあ、メール打っておくね」
「ありがとう」
ちょっとばかりホッとした顔をするジュヌに視線を向け、うんと一つ頷くと、清香はそのままスマートフォンを取りに部屋に戻った。




