姉の式神の狐、魔狐
再び居間
「なんとなくわかった」
姉は、釈然としない顔をしながらも現状を受け入れようとしていた。
「ところで姉貴。俺さ、式神として元に戻す方法を聞き忘れたんだよ」
姉は呆れてため息をつきウンザリ顔で清一に視線を送る。
「アンタ、いい加減にしなさい! 何で自分が出来ない事にそうやって首を突っ込むの!」
姉はジュヌヴィエーヴの方に視線をずらす。
しゅんとうなだれている式神に姉は同情し清一に名前を聞いた。
「その娘、なんて名前なの?」
「えーと、ジュヌ……なんだったけ?」
「ジュヌヴィエーヴ」
「そうそう、その名前! 名前から男だか女だかわからなくってさ。声もどっちともとれる声だし」
「コ、コイツ」
誤魔化す清一に対し、姉はそのいいかげんさに腹を立てたものの、その湧き出た怒りをどうにか押し殺した。
「ジュヌヴィエーヴさんね。ごめんね、コイツみたいな変なのの式神にされちゃって」
「変なのってなんだよ!」
姉は清一の反抗を黙殺し、怒りを含んだ口調で問いただす。
「清一。ちょっと聞きたいんだけど」
「なんだよ」
「その名前のブランド知ってる?」
「知らない!」
「その名前の女優知ってる?」
「知らない!」
「はぁ、馬鹿かお前、知らないじゃないだろ。一回死ねよ! どう見たって女性の名前だろうが!」
「私は、中条 清香。コイツの姉なの、よろしくね!」
「コイツ、あなたの名前を覚えられないからジュヌでいいかな?」
「絶対、姉貴が言いにくいからだろ!」
「なんか言った? 清一」
「いや、別に」
「なら、余計なこと言うな」
清香は胸のポケットから一枚のお札を取り出すと、術を唱える。
ブワッと煙が沸き起こり、それが収まった後には一匹の小さな狐が鎮座していた。
「魔狐おいで」
魔狐と呼ばれた狐は清香に駆け寄り膝の上で丸まった。
「清一、これくらいは出来るようになりなさい。とりあえずお父さんが帰ってきて……」
「姉貴!」
「――来たね」
2人は玄関の先、神社の方から禍々しい気配を感じ立ち上がる。
「お客さんが持ってきたみたい」
清香は目で清一を促し玄関へ足を向けた。




