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見習い神官兼陰陽師、式神失格としてリリースされた型落ち倉庫番のフィギュアと共に一人前の階段を駆け上がります  作者: クワ
第五章

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ジュヌヴィエーヴの投げた虹色に輝くジャベリン

 それは数時間の様で数秒の様でもある。


 長いトンネルを抜けると、いきなりの暗闇に周囲に対する視界が失われた。

 ザザー

「くうっ」

 と同時に地面へ胴体着陸し腕に鈍い痛みと摩擦の熱さが伝わる。


(ここは何処だ?)

 何かしら争うようなぶつかりあう音が響いてくる。

「ジュヌ」

 音は洞窟にいるような反射を繰り返し、位置の特定が極めて難しい。


 視界が暗闇に徐々に慣れて、周囲の状況がおぼろげながら把握できた。


(あの後ろ姿は)


 足を高々と上げて勢いよく下げる反動で体を起こし、目を左右に振ると、屈んだ状態からすくっと立ち上がった。

「ジュヌ!」


「フラム」

 ジュヌが魔法を唱えると、湧きたった炎が敵に向かって放たれる。


 炎によって敵が照らされて、姿が露になる。


「あれは、耳長?」


 ゲームや漫画などで進化した状態なのだろうか? 先ほどより一回り大きくなった体躯を振り回し炎をうち消した。


「さっき持っていった武器は――あそこだ……」


 耳長の足元にジャベリンと手榴弾が落ちている。

 どうやらジュヌはなにかしらのアクシデントでそれらを手放し、どうにか取り返そうとしているみたいだ。


(とりあえず俺の事は気付いていない)

 清一は奇襲をかけ取り返そうと考えた。


(どう動けば)


 耳長が左手を跳ねるように扇ぐと、かまいたちが発生し、ジュヌへと切り裂いた空気を運ぶ。

(アイツ、左手は失われたはずでは?)

 それを受けてジュヌが吹っ飛ぶ。


 清一は背後をとろうと音を消し移動を始める。

(ジュヌ待っていてくれ、必ず……)


 カツッ

 小さな段差にはまり足音が鳴った。


 耳長の二つの目が左にずれ、清一を捉える。


(チッ、バレたか)


「芍薬氷雨」

 氷の法力を放つと同時にお札を数枚耳長に向け投げる。

「フン」


 耳長は花弁状の氷をめんどくさそうに払っていく。

(前に仰け反った法力で行く)

「月影水明」

 耳長の足元から水柱が立ち起こると、さすがの耳長も柱から移動しようと足を動かした、その時。


 猛烈な吹雪が耳長を襲い、柱の水が一瞬にして凍った。


「これは!」

 清一は考えるよりも先に走り出した。


 走りながら、お札を投げ、氷の術を放ち、刀を強く握る。


「おのれ、猪口才な!」


 炎の魔法を自らに落とす。氷がみるみる解けてゆく。


「甘いな」


 突然、右方向から人が駆け寄り耳長に斬撃を加える。

「グゥ」

 斬撃は右肩から左の腰部分まで入り、耳長は苦しそうなうめき声を放ち顔を歪めた。


「それ、もう一丁」

 その攻撃を両手で受け取めて膠着状態になった。


「あれは……オヤジ!? いや、今はそれどころじゃねぇ」

 清一加速がトップスピードを迎えるころには、長耳が目の前に迫っていた。


「よし、背中がガラ空きだ!」

 その速度を最大限利用して背後横から刃を加える。


「んー」

 耳長はこれ以上の攻撃をさせじと周囲に炎の壁を作ると同時にそれをまき散らす。


「やべぇ」

 それでも清一は、どうにかお札を背中に数枚叩きつけ印をきった。

 清之進を見やると鍔迫り合いを終わらせ距離をとって術を唱え始めていた。


「ジャベリン!」

 その投げ槍を軽く屈んで引っ掴むと、ジュヌがいた方向へと放り投げる。


「手榴弾!」

 下に転がっているそれらをひょいと拾っては安全ピンを抜き耳長へと投げつけ続ける。


 ドカン、ドカンと立て続けに爆発が起こると肉が焼ける匂いが漂う。


「くそおおおおおお」

 耳長の咆哮が響き渡る。


 火薬の硝煙の匂いが薄まるころ、耳長への視界が回復する。

「てめぇえええ」

 耳長は身体の部分部分欠損し、立っているどころか生きているのが不思議なくらいだった。


「焔風花」

 耳長の不思議な力により相殺される。

「なんだ、障壁か?」


 氷織の吹雪も、清之進の法力も同じように無効化された。

「――どうすれば?」

 額から汗が滴り落ちる。


「清一、屈んでて!」

 そんな時、後ろから声が響いた。


 清一がとっさに屈むと頭上を虹色に輝くジャベリンが通り過ぎていった。


「あれは?」

 ジャベリンは耳長に突き刺さると、そのまま地面を貫きその身を固定した。


「清一!」

「おう」

「月影水明」

 何となく、これを使う、ジュヌが望んでいる、そんな気がした。


「凍らせます」

 氷織の透明な声が伝わると、強力な吹雪により凍り付いた。


「よし、清一、雷だよ」

 いつの間にか横に並んでいるジュヌが清一を見ながら力強く口にした。


「フードル」

「雷時雨」


「超電導だな、よし、俺も――」

 清之進も雷の法力を使う。


 氷織の吐き出す冷気により極限まで冷やされた、槍を避雷針にして三人の電撃が流れ込んだ。


「くっ」

「よし、いっけー」


「ぐおお、まだ、まだ死なぬ」

 耳長の激怒を含んだ苦しそうな声が響く。


 槍が七色に輝くのを止める頃には、耳長だった個体は黒い消し炭に変わってそのまま崩れ落ちてゆく。


「終わった……の……か?」

「うん、そのようだね」

 ジュヌと清一は顔を見合わせ笑いあった。


「……千歳、仇は打ったぞ……」

「清之進……」

 清之進はその場で黙とうし、氷織は後ろでその姿を見守っていた。


 ジュヌはハッとした顔を見せ、清一に怒りだした。

「何で来たんだい、清一にもしもの事があったらどうするんだい!」

 清一は満面の笑みを浮かべ。

「大丈夫、何も起こらなかったから」

「そういう問題じゃ……」


 清一がそのじゃじゃ馬な唇を塞いだ時、その瞳から涙があふれた。

「いなくなると辛いのは、お前だけじゃないから……俺だってそうさ」

「うん」


 地下の薄暗い空間は、激闘を終え再び静寂を取り戻していた。

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