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見習い神官兼陰陽師、式神失格としてリリースされた型落ち倉庫番のフィギュアと共に一人前の階段を駆け上がります  作者: クワ
第五章

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千歳の仇

 その姿を見た一同はみな後ずさった。


「おやおや、心外だね。まだ何もやっていないじゃないか」

「魔の者をけしかけたじゃねぇか!」

 清一が声を荒げる。


「おっと、魔の者ねぇ……彼らは人間だよ?」

「嘘をつくな!」

 なおも清一の怒号が響く。


「人を外見や仕草、喋り方で差別するのは君たちの悪い癖だ」

「なにぃ」

「だから、判断を誤る」

 そう言って長耳の男はくすくすと笑った。



 都内某所 地下駐車場



 カツカツカツ

 清之進が地下駐車場の奥へと進み続ける。そこは薄暗い蛍光灯が等間隔に設置されてまるで洞窟を思わせるかのような不気味さを醸し出していた。


「アイツだな」

「ん!?」

 そこにうずくまるように存在する影を見下ろしながら、なおも近づく。


「やはりコイツだな。千歳を殺したヤツとピタリと一致する」

「千歳? 誰ですか、その名前は存じ上げませんが」

 影が返答してきた。


「戦ったヤツに興味なしか」

「当然でしょう? あなただって襲い掛かってきた虫けらの名前なんていちいち確認しますか?」

「虫けらねぇ……じゃあアンタの名前も知らないでおくとしようか」

「ふふ、そうですねぇ、お互いに……」



 再び清香たちのいるマンション



 みなそれぞれ武器を構え長耳の男を取り囲む。


「あなた、今、人間って言ったわよね? どういう事」

 清香の言に眠そうに目を瞑り、ニヤニヤっと笑う。


「――何がおかし……」

 長耳は手を上げ清一の言を制して口を開いた。


「あれは元々抵抗軍と自称していたヤツのなれの果てだよ」

「……人には見えないが」

「そこの紅毛のお姉さん。外見だけで見ちゃダメだって最初に言ったでしょ」

「どういう事だ」

「あれは、彼ら、彼女らの薄汚い心の姿さ」


 清一はチラリと遺体を覗き見る。

「姿だけではなく、知能などもあるようには見えなかったが」

「君たちは太田って人たちと一戦交えただろう?」

「何故、知っている……」

「彼らが話していたからさ」

 長耳はことなげに答えた。


「彼らの話によるとうまく逃げおおせたみたいだね。君たちにとってもよかったんじゃないのかい?」

「……確かにな」

 耳長は瞳を開き周囲を見回す。


「彼らは逃げた太田たちを口酷く罵っていた。だが彼らがやった事と言えば――私を召喚したことくらいだ」

「知能を失った答えになっていないな」

「答え? 魔法で変えただけさ、相応しい姿に」

「相応しい姿?」

 エイムズが再び疑問を投げかける。

「ああ、そうですよ、何もしないくせに――楽をしたい、努力をしたくない、そのくせ努力をして頑張った者を嫉妬し中傷し引きずり下ろす……そんなカス共にお似合いの姿にね」


「彼らは一日中他人のお金を使って、会議と言う名の飲み会をやり、英雄になるという名の異性との交友をし、英気を養うという名の贅沢をして、しかもめんどくさい正規軍との戦いは私に押し付けていた」

「それで、物の怪の姿にしたと」

 希狛が少し呆れ気味に声に出した。


「確かに殺した方が楽だと思うケド、こんな奴らとは知らずにこき使われた分の怒りがあるからね」

「まあ、ホントにこの世界は久しぶりだったからね。もっと楽しみたかったけどそうもいかないみたいだね」

 耳長は絶えず手を動かして説明をし続けた。


 清香は床に打ち捨てられた物の怪に変えられたであろう者の持ち物に目が行った。

「これは」

「ああ、そこの半魚人になった女の持ち物だった物だ」

「廃ビルにあったのと同じ物だわ」


 耳長は笑って「ああ、あそこに行ったのかい? 紅毛の男の仲間かい? そこの紅毛の女性は知り合いかい?」と問いを発する。

 エイムズは鬼のような形相になり「兄だ!」と吼えた。


「ああ、通りで。南蛮人なんてあまりいないしね」

 エイムズが一刀の元切り下ろすも、剣はかすりもせず耳長の身体を通り過ぎた。


「!!」

「無駄だよ。実体はここに無いから」

 そう言って歪んだ微笑みを湛えた。


「無駄だって」

 清一が水の法力、清香が氷の法力、他にもあらゆる攻撃を加えても浮かび上がった映像に攻撃を加えているように、かすりもしないどころか攻撃に手ごたえも全くなくすべて徒労に終わった。


「疲れているのかい」

 耳長はゆっくりと右手を前に出し詠唱を始めた。

「魔法と言うのはこういう風に使うものだよ」


 ドーン、ドーン

 爆発の呪文が周囲で炸裂しだす。


「クソッ」

「ふふふ」


 再び耳長が詠唱を始める。

 その詠唱が終わるころ、耳長の胸が刃物のようなもので切り裂かれ、ドバっと血が零れ落ちた。


「えっ?」

「何が起こったの?」

「……ふふ、どうやら実体が攻撃を受けたみたいだね」


「月影水明」

 清一が水の法力を唱えると、耳長が今までに無いような反応を見せる。


「何だ、あの仰け反った反応は?」

ピュリフィケーション(浄化の炎)

「フラム」

「焔風花」

「コン」


 みなで炎の力を叩きこむと、ますます耳長の挙動がおかしくなる。

「こちらが行っている攻撃に効果はあるのか?」

「わからないが、もう少し頑張ってみよう」

「ああ」



 都内某所 地下駐車場



「いきなり攻撃が通ったな」

「うごぉ」


 清之進が何度も繰り出した突きが初めてその人型の物体に突き刺さった。


「清之進、攻撃を緩めず繰り返しましょう」

「氷織、そうだな、もういっちょ行くか!」

「そうね」



 清香たちのいるマンション



 波状攻撃を繰り返した結果、耳長の身体に徐々に傷が増えていく。


「やっぱり、多少なりとも攻撃が効いているみたいだ」

「よし、もう少し」


 耳長の周りで爆発が起こると、身体の至る所から血がにじみ出る。


「貴様ら! 手加減していたら調子にのりおって」

 右手をかざし、魔法を唱える。


「それっ」

 ジェームズの槍がそれを突きさすと同時に清一の刀が長耳の足に向け横薙ぎに切り付けると、それぞれの手にかすがながら手ごたえが伝わってきた。


「くそう、許さん」

 バリーン

 耳長が魔法を解き放ち、室内に爆発が起きた瞬間――窓ガラスが弾け飛んだ。


「うわっ」

「キャー」


 激しい爆風を浴び、清一たちはみな壁に叩きつけられた。


「ううっ」

「はあっ」


 耳長は肩で呼吸をしながら、髪を振り乱す。

「早くこいつらを片付けて実体と合流しないと」


 シュッ


 清一が放ったお札が耳長の身体に触れるとすり抜ける事なしに腰のあたりに張り付いた。


「もしかして、コイツを倒すのには実体と影、両方攻撃する必要があるのか?」

 その言葉を聞いて、耳長はぎっと清一を睨む。

「ええい、黙れ!」

 炎の魔法を清一に連続して向け放つ。


 ぐるっと体を転がし炎を避け続ける。


「くたばれ!」

 エイムズの剣が背中に一太刀を入れると、僅かながら傷口が生まれ血が流れた。


「えーい、忌々しい」

 再び爆発の呪文を放つと、清一たちはまたも壁にぶつかる。


「チッ、このままでは」

 耳長の左手がいきなり消滅し、血が噴き出てきた。空いた右手でそれを塞ぎ焼くことで出血を止めた。


「いったん戻るとしよう。向こうを片付けたらこの羽虫どもを殺してやる!」

 目を剥き出し怒りをあらわにしている耳長は詠唱を始めた。と同時にゲートが地面からせり上がってきた。


「キサマかぁぁぁぁぁぁ」

 発狂したような甲高く裏返った声を放ちながらゲートを潜っていく。


「くっ、逃がすか!」

 清一が追いかけようにも力が入らない。

「今のうちに倒さねぇと……回復しちまったら……」


「……清一」

 いつの間にか立ち上がったジュヌが清一に振り返っていた。


「ジュヌ……」

 ジュヌに向かって一歩、二歩とゆっくりと近づく。


「ちょっと行ってくる」

 ジュヌの手には装備セットに入っていた手榴弾とジャベリンが握られていた。


「ねえ、清一、ボクはフィギュアだから何かあったら新しいのを買って欲しい」

「お、おい」

「そうしたら、きっとまた会えるから」

 ジュヌはそう言うと走ってゲートに入っていった。


 ゲートの天井が徐々に下がってきて、元のように地面に入り込もうとしている。


「ふざけんな! 見た目がお前であっても、俺の知ってるお前じゃねぇだろう」

 清一が気力でゲートまで駆ける。


 ゲートの高さは数十センチまで下がってきている。

「うおおおおお」


 清一は勢いのまま空を飛んだ。


 清一がゲートに吸い込まれると、ゲートは地上へと消えた。

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