表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
見習い神官兼陰陽師、式神失格としてリリースされた型落ち倉庫番のフィギュアと共に一人前の階段を駆け上がります  作者: クワ
第五章

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

49/55

エイムズの頼み

 太田たちとの激闘から一月あまり過ぎたある日。


「今日はバイト無いから、買い物手伝って」

「勉強しようと思ってたんだけど……」

「アンタ、勉強する時間は今まであったでしょ。めんどくさい時に何かしら断るための都合を作る癖は止めなさい」


「そんな事無いんだけどな」

 清一としてはルーチンのように同じ時間に勉強をすることで、習慣化して頑張ろうとしていた矢先だったのもあり少しばかり心が折れた。

「清一の気持ちはわかるけど、食料品も大切だよ」

 ジュヌに促され渋々ながら外出の準備を始めた。


「前から疑問だったんだけど、姉貴って買い物のお金ってどうしてるんだ?」

 スーパーへの道すがら、清一の中で燻ぶっていた事を清香にぶつけてみた。

「あれ、話してなかったっけ? お父さん、私の銀行口座へお金を振り込んで来たのよ」

「今回だけ?」

 あっけらかんと答える清香に清一は再度質問を投げた。

「これから月一くらいで振り込むって」


「振り込んできたってことは、オヤジは元気なんかな?」

「うん、電話口では元気そうだったよ」

「何してるって?」

「聞いたけど教えてくれなかった」

「そうなんだ……まあ、元気ならよかった」


 多少なりとも安心し、ほっとしたのと同時に身内にすら言えないような何かを行っているという心配も沸き起こった。


 いつものように姉に促され買い物を進めていると、ふとあることを思い出した。

「俺のこづかいどうなっているんだろ」

 清香へ視線を動かし、口を開こうとしたその時。

「ああ、帰ったら渡すわよ」

 姉に機先を制され押し黙る。


「だから、買い物をとっとと終わらせてね」

「了解」


 清一と清香が雑談をしながら神社へあと少しという場所まで戻ってくると、鳥居の前に人影が存在しているのを遠目でも確認できた。


「誰かしら?」

「また、変な奴らの仲間かも」

 二人は、以前来た抵抗軍の二人組を思い出し、警戒しつつ家に近づく。


「あ、あれは」

 ゆっくりと流れる黄金の髪をたなびかせながら視線をこちらに固定している人物。


「エイムズ……なぜ家に」

「清一が前に話していた外人さん?」

「ああ、でも何で?」


 清一はエイムズの兄が病院に運ばれて来た事を思い出していた。

(あれが何か関係あるのか?)


「エイムズさんこんにちは」

 警戒しながらも言葉を掛けると、向こうも挨拶を返してきた。


「どうしたんですか?」

「……」

 エイムズが口ごもると、清香がにこやかに笑いながら顔を覗き込ませた。

 釣り込まれて微笑むエイムズに対し清香は「笑った方がカワイイよ」と言うと顔を離す。

 エイムズは呆気にとられ清香を見返し何か言おうと口ごもった。


「ここではなんですから、よかったら家に上がりませんか」

「そうね、その方がいいかも」

 戸惑うエイムズに清一は「鳥居は無理に潜ること無いから、左右に避けて来ればいいよ」と話して移動を促すと共に、自らも歩き出した。


「ただいま」

 玄関を潜り靴を脱ぎ捨てそのまま居間まで行くと、冷蔵庫の前に荷物を置くとエイムズにイスを進めた。

「インスタントだけど、紅茶とコーヒーどっちがいい?」

「なら、紅茶で」


 清一がやかんに水を注ぎ、それを火にくべると荷物を冷蔵庫に入れている清香に声をかけた。

「姉貴、何飲む?」

「紅茶でいいよ」

 忙しく手を動かし、清一の方を見ることなく答える。

「わかった」


 お湯が湧きたち、やかんの蓋がカタカタと音を鳴らす。

 それぞれのカップに紅茶を注ぐ。

「姉貴、お茶はどうする?」

「空いてる席に置いといて」


 それぞれの席の前にそれを置くと、清一も腰かけエイムズに向け顔を動かして話を聞く姿勢を見せた。

「今日はどうしたんです」

 清一の言葉に沈黙をして目を伏せる。


「来た理由があるんでしょ」

「話しにくかったら俺じゃなくって姉貴でもいいし」

 そう言って清香に視線を投げる。


「そういう訳では無く……」

 エイムズは話しにくそうに躊躇し、それを幾度も繰り返す。


「終わり!」

 荷物をしまい終えた清香が、手を洗い終えると「ここでいいのかな」と清一の隣の席に座った。


「私と兄はヨーロッパからこの国に来た魔の者を追いかけて参りました」

「……」

 エイムズが紅茶を啜ると、清香がつられて口に含んだ。


「中条さんとは色々ありましたが、私たちは貴方たちのような人たちと敵対するためにこの国に来た訳では無いのです」

 清一は引っかかる点が無くはなかったが流して終わりまで聞こうと考え黙っていた。


「先日、兄が戦い重傷を負いました」

(この間の救急搬送だな)

「兄と交戦したのはその魔の者で間違いないそうです」

 エイムズの語尾は強くなる。


「と言うと? お兄さんがそう話したの?」

 清香が疑問を口にした。

「はい、兄はおぼろげながら覚えている事を伝えてくれました」


 清香と清一はお互い顔を合わせる。


「エイムズさんに聞きたいんだけど、式神とかじゃなかった?」

 清一にとって抵抗軍またはそれに加担していない者たちの式神ではないかとの可能性を疑った。


「今、この国に色々あることは知っています。ただ兄は強いです。そう簡単にやられません! ましてや式神などに」

 エイムズの言葉に一段と力が入る。

「お兄さんが強いのはわかったけれど、やられたってことはお兄さんより強いんだよね」

 清香がそのことを口にするとエイムズは唇をかむ。


「それで、私たちの元を訪れた理由って」

「一緒に探して欲しいんです。兄を襲った魔物を」

 清香にそう言葉を返した。その青い目は復讐の決意に満ちていた。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ