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見習い神官兼陰陽師、式神失格としてリリースされた型落ち倉庫番のフィギュアと共に一人前の階段を駆け上がります  作者: クワ
第五章

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在宅学習


 翌日


 相変わらず父である清之進からの連絡はない。

 氷織も清之進と共に出かけ、今だ帰って来ていない。


「なあ姉貴」

「なに」

「オヤジ、大丈夫かな?」

「私も心配なのよねぇ」

 清香は顔を歪めて答えた。


「まあ、お父さんの事だからそう簡単にやられはしないと思う」

「そうあって欲しいんだけど」

「あ、清一。私、今日バイトだから後ヨロシク」

「あん、バイトあんのかよ」

 清一は緊急事態宣言の事を思い出し、姉に尋ねてみる。

「そう、あるのよ。お店開いているし、シフトも入れちゃったし」

「わかった、行ってらっしゃい」


「そうそう、アンタ課題大丈夫なの?」

 学校は休校になったが、自習用の課題がたんまりと出ている。

「ああ、やんねーとな」

「戸締りちゃんとしなさいよ」

「子供じゃねーんだから大丈夫だって」


 パタパタという足音が玄関の方へ向かうと、清香は何事かを言いながら開閉音と共に外へ向かって出て行った。


「さてと、何すっかな」

 といいつつ、姉から言われた課題が頭から離れない。

「学校のヤツを片付けるか」


 清一は教科書の束を机に乗せた。

「ニガテな数学から行くか」

 教科書を開く。


「……」

「ん、んー」

「ぐぬぬ」

 苦手な教科なだけあってなかなか集中して勉強できない。


「あっははは、このマンガ面白い」

 部屋中にジュヌの笑い声が響く。

「わりぃジュヌ、勉強中なんだ」

 清一の怒りを押し殺した声が静かに伝えた。


「ゴ、ゴメン」

「マンガ、持ってっていいから、向こうで読んでて」

「清一……一緒に居たいんだよ」

(うっ、これじゃ何も言えねーよ)


「我慢するから居させておくれよ」

「……ああ、俺も集中するから、悪いな」


「んん、クスクス、おっとガマンガマン」

 ジュヌの小さな笑い声が漏れ聞こえてくる。

「心頭滅却! 心頭滅却!」


 果たして清一の必死の努力は実るだろうか?


 カア、カア、カア

 カラスの鳴き声が夕方に鳴くとは誰が最初に言ったのだろうか?


「まあ、今日はこんなところでいいか」

 今の様子だと学校の再開まで時間はたっぷりある。


「ジュヌ、ゴメン。今日はここまで……」

 清一が振り返ると、本を枕に小さく寝息を立てていた。


「寝てらぁ」

 押し入れを開け、掛け布団を取り出すとジュヌの上に掛ける。

「トイレでも行くかな」


 部屋のドアを開けると、希狛がうろうろと廊下を動いている。

「どうした? 何かあったか」

 希狛は清一の姿を捉えると、ついてきてと言わんばかりに、足元をグルグルと回ると、居間の方へ向かった。


「おい、希狛どうしたんだ」

 居間に着くと希狛はテレビをつけるようにお願いしてきた。

「わかったよ」


 パチ

「ほら、つけたぞ」

 カチリとリレーの音が鳴ると、テレビから映像が浮かび上がって来る。


「見たいチャンネルでもあるのか?」

 希狛は首を振りつつチャンネルを変えることを促す。

「なあ、何で喋らないんだ? お前喋れただろ」

 清一が疑問を口にすると、希狛はモゴモゴと口を動かした。

「お前、喋れなくなっちまったのか?」

 清一の疑問に希狛は「喋れるワン」と胸を張る。


「びっくりさせんなよ。一瞬何か起こったかと思っただろ」

「すまないワン」

 チャンネルをパチパチと変えている内に、あるワイドショーが目に留まる。


「また襲撃されたのか……」

 前回と同じように、大手企業の社員や官僚などが襲われたニュースが流れていた。

「おっと、ヤバいトイレトイレ」

 清一は尿意を思い出し、トイレに急ぐ。


「ふあ、すっきりした」

 居間に戻ると、希狛の姿はなく、テレビだけが一人で喋っていた。

「希狛、どこ行ったんだ」


 ガタッ


 玄関で物音が聞こえた。


「希狛か? それとも」

 清一は玄関へ急ぐ。

 何故だか、とても嫌な感じに囚われていた。


 玄関に近づくも、希狛の姿は無かった。


 ガタガタッ

 またも、どこかから音が鳴り響く。


「これは――俺の部屋か!」

 全速力で駆けてゆく。

「ジュヌ!」

 寝込みを襲われている。そんな嫌な妄想が頭を掠める。


「ジュヌ! 大丈夫か」

 自室に駆け込むと、ジュヌが眠そうな眼を擦りつつゆっくりと身を起こした。


「――どうしたの? なにかあったの?」

「あれ?」

 清一は当てが外れ困惑した。


「希狛は?」

「ここにいるワン」

 引き出しを器用に開け中を物色している。


「ひょっとして……俺の勘違い?」

「勘違いって、なに、なにかあったの?」

 ゆっくりと思考が固まるジュヌに対し気まずそうに笑う清一。


「ジュヌっとか焦ってた所を見て、おおよそ襲われているから助けなきゃっとか思っていたんだろうと想像するワン」

 希狛の呆れた声色に顔を真っ赤にする清一と、これまた真っ赤にするジュヌヴィエーヴ。


「な、なんにもなかったならよかった」

「あ、ああ、大丈夫」


(困った……何か、間が持たない)

(うーん、清一が黙っちゃうとキンチョーしちゃうな)

 何とも言い難い重い空気が漂う。

(居づらいワン)

「居間に行ってくるワン」

 希狛は部屋から出て行こうとした。とその時。


「「希狛!」」

「出て行かないで」

「行っちゃダメ」

 二人の言葉を受けると、希狛は少しばかり嫌そうな顔を見せ、部屋の隅へと進みそこで丸まった。

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