ジュヌヴィエーヴとの出会い 前編
それは数時間前
某都心のグッズ販売店
「ここがそうなのか?」
恐る恐る店舗に入ると、賑やかな音楽が耳に入り込んでくる。
店の至る所に、色々なアニメやゲームのコーナーが海に浮かぶ島のように浮かんでおり、その島には山脈のように色とりどりのフィギュアの箱が積み上げられている。
「スゲェーな。これ全部フィギュアなのか?」
目を見張る清一は、取りあえず隅から隅へと歩くことにした。
清一がフィギュアを見に来たのは訳がある。
「オヤジと姉貴の会話で、フィギュアが式神として使えると言っていたからな。妖怪よりかわいい女の子の方がいいに決まってる!」
清一の知るもの知らぬもの、メジャーな物マイナーな物、色々あり目移りしてすぐにこれと決められない。
「このアニメは知ってる」
「あ、幻塩だ。ゲームの!」
「うわ、エロイ。目のやりどころに困る」
目を白黒させながらフロアを放浪していると不意に詰問調の声が聞こえた。
「店員さんか? 雰囲気悪くなるから店の中で叱るのやめて欲しいんだけどな」
清一は心の中で愚痴をこぼす。
「ここの通路の奥から声が聞こえる」
声の主をひょいと首を伸ばして確認する。
通路の先には三人組に追及され首をうなだれる一人の人間がいた。
「いい加減にしろ! これ以上足を引っ張るな。しばらく出番はない。新しく獲得した娘にやってもらう」
「ちょっと待っておくれよ。いきなりは無理だよ。もういち……」
「実戦にもう一度は無い。失敗は死に繋がる。装備品交換するぞ」
男は、何かしら訴えている者の言葉を遮り切り捨てる。
(何があったんだろう?)
「そこの子、どうしたんだい? 不快にさせたとしたらゴメンね」
声を掛けようかと躊躇していたその時、三人組の温和そうな男が声をかけてきた。
驚いた清一だったが、声を掛けられた以上何かしら反応をしようと、通路に数歩踏み出し、声を返した。
「何か、あったんですか? 何かその一人をみんなで注意しているみたいですが」
三人は顔を見合わせ、先ほど声を荒げていた男が清一の方へ向き直り声をかけてきた。
「お前、コイツが見えるのか?」
「は、はい、まあ」
意図の分からない質問に対し、曖昧に返答を返す。
(この人、どこかで見たことがあるような――まさか)
「あの、あなた、ラストファンタジー14のランカーの太田さんですか?」
「俺を知っているヤツが居るなんてな」
少し得意そうに笑いながら鼻を掻いた。
「かなり有名ですから」
かつてはプレ通やら電波ステーションなどの雑誌にて顔出しで攻略記事を載せていた人だ。
「ところで、君は?」
大人びた女性が微笑をたたえながら聞いて来た。
「中条 清一と言います。高校生です」
清一はドギマギしながら答えた。
「中条君……。ああ、紹介遅れたね。僕は大道寺 卓也。そしてこっちが……」
隣の温和そうな男が会話を引き取り自己紹介を始めた。
「氷上 優希。よろしくね
清一はその名に聞き覚えがあったので話を振ってみた。
「vチューバーさんですか?」
「よく知ってたわね。お姉さん嬉しいわ」
「たまたまだろ」
「失礼ね!」
喜ぶ氷上に太田が茶々をいれ、冗談のやりとりに清一は立ち入れずにその場で立ち尽くす。
「で、何の用?」
「まあ、そう言わないの」
「だね、なにしに来たの」
(とりあえず、式神の事は伏せた方がいいな)
「フィギュアを買いに来ました」
「式神にするんだろ?」
「えっ!」
「何驚いてるんだよ。お前陰陽師だろ」
(俺、今日普通のカッコで来たよな)
清一は心を見抜かれたように感じ、魂が抜けるような驚きに包まれた。




