家の前の怪しい二人組
「ただいま」
「ああ、お帰り」
学校が終了し家に帰ると、珍しく父親が帰宅していた。
「あれ、どうしたの?」
清一の問いに清之進は苦笑して口を濁す。
帰宅後に父がつけたのだろうか、誰も見ていないテレビからわあわあとがなり声が伝わってきた。
「何があったんだろう?」
清一がテレビに目をやると、緊急速報の文字に引き寄せられ、次いで芸能人の名前が続く。
「彼はドラマで陰陽師の役を演じるために修行をしていたらしい」
「でも、実力は大したこと無かったんだろう?」
清之進は頷く。
「わかりやすいからだ。当時テレビやネットで修業をすると周知されていただろう」
確かに話題になっていたことは頭の片隅にある。
「でも、見せしめにするにしたって意味があるのか? 襲う方の目的が分からねぇと警告する意味がねぇんじゃ……」
昼の事もあり、謎の行動をする者たちに苛立ちの感情が湧く。
(せめて襲う理由が知れればこのモヤモヤが晴れるんだろうが)
「まあ、色々とな……」
清之進はやはり奥歯に物が挟まったような煮え切らない言い回しをする。
(何を言っても話さないだろうな。今のオヤジは……)
「部屋に戻るわ。何かあるようだったら呼んでくれ」
清一はこれ以上の話し合いは無駄だと悟り部屋に戻った。
部屋にはジュヌと希狛がじゃれあって座っている。
「オヤジは何も話してくれそうにないかな」
清一の諦めの表情を見た二人は笑いかけながら「いずれ話してくれるよ」と慰めの言葉を掛けてくれた。
ゴロンと畳の上に寝そべって頭の中を整理する。
(俳優を襲ったのも透明人間なんだろうか? そういえばスーツのオッサンは式神って言ってたよな)
寝返りを打って姿勢を変えることで思考の流れを変えてみた。
(そういえば太田さんたちも同じように式神を仲間というより道具のように扱ってたよな。その考え方って一般的なのかな?)
清一にとって清之進と清香以外に陰陽師にかかわる知識の選択肢はなく、必然的に二人と似た考えになっていた。
(そもそも何で彼らは……)
突如、外で何かしらの争う声が響き渡る。
「この声、姉貴の声だ!」
清一は身を起こし、刀を引っ掴み表に飛び出た。後にジュヌと希狛が続く。
清香は式神たちと一緒に表で男女の二人組と対峙をしていた。
「アンタたち一体何者!」
清香の声に苛立ちが乗り、乗ることで声が大きくなってゆく。
(昼間のヤツとは違うな)
姉に加勢しようと足を速める。
対峙している男女は駆けつけた清一をチラリとみると、鼻で笑う。
「これはこれは。物騒なものを持っていますがどうしました?」
男女に視線を向けると、二人ともパピヨンのようなものを装着し、服は男女とも白い上下、蝶ネクタイをつけ腰には細身の剣を差していた。
「うちに何か用か?」
清一の言葉に何も答える事なしにニヤァと不快を催す笑いを見せた。
「お前らも透明人間を式神に使うやつらか?」
その言葉に二人ともピクリと反応するもなおも何も語らず時間だけが過ぎて行く。
「なあ、姉貴、こいつらの相手をしても無駄じゃねぇかな」
清一が清香の方を見ると二人を鬼のような形相で睨んでおり、清一の言葉が耳に入っていないようだった。
「気を付けるワン、清一右だワン」
刀を抜き、素早く右へと振り切ると、鈍い手ごたえがあった。
グチュ
「透明な式神だな」
清一は肉塊が崩れ落ちる音のする方へチラリと視線を向けるとその視線を二人の元へ戻す。
「おい、人を小馬鹿にする割にはセコイことしくさるな」
刀を構え清一は顎をしゃくり上げ言葉を吐き捨てた。
「はい、そこまで」
いつの間にか清之進が家から出て来ており、両者の間に割って入った。
「それとも何だい、お二人さん、俺と一戦やるとでも?」
清之進はそう言って笑った。が、言葉の端々から発する凄みが二人を恐れ慄かせた。
「フッ、今回は大目に見てやる」
引きつった笑いを浮かべ二人は早足に去って行った。
「二人とも、家に入るぞ」
そう言って有無を言わさず家に連れ込んだ。
「なあ、オヤジ、アイツら何なんだよ?」
「そうよ、お父さん、ムカつくったらありゃしない!」
二人の荒い言葉に清之進は居間にいざなった。
「まず、座りなさい」
二人はドカリと荒く腰掛け、父親の反応を伺う。
「まあ、いきなり襲われれば気にはなるよな」
清之進は向かいに静かに腰かけた。
「今来ていた二人組は末端の末端ただの雑魚だ」
「アイツらの目的は?」
「清香、落ち着け、おいおい話す」
まずはお茶をと清之進は台所に向かう。
しばらくするとやかんが口笛を吹き、水が沸騰したことを伝えた。
「清一、お前――透明なヤツの事、式神って言っていたが、知っていたのか?」
清之進からコポコポと急須からお茶の出る音が聞こえる。
「ああ、今日の昼にな……」
「そうか、スーツを着た中年の男……か」
清一の声の興奮具合とは逆に清之進の声が沈む。
「オヤジ、知り合いか?」
「さあな、会って見ない事には」
そう言ってかぶりを振った。
「彼らは、陰陽師、僧侶、魔法使い、エクソシスト……多種多様な戦士たちだが、数月前まで我らと同じように魔の者と戦っていた者たちだ」
「えっ?」
「なぜ?」
清之進の言葉を受け、清一と清香は言葉を失った。




