表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
見習い神官兼陰陽師、式神失格としてリリースされた型落ち倉庫番のフィギュアと共に一人前の階段を駆け上がります  作者: クワ
第三章

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

33/54

清香の新しい式神

「オヤジ、おはよう」

「おお、おはよう」

 清一の寝ぼけた挨拶に、清之進が調子よく返す。まるで昨日の好戦的な父親の姿がまぼろしのように感じた。

「今日、病院行ってくる」

「ああ、学校へは電話しておこうか?」

「いいよ、小中学生じゃあるまいし」

「そうか?」

「そうだよ」

 清之進は立ち上がり、小物入れの引き出しを開けると財布を取り出した。

「まずは保険証、次いでお金」

 財布からお金を抜き出すと、保険証と一緒にテーブルの上に置く。


「いいよ、お金はどうにかなるよ」

「受け取っておけ。お前にもお前なりに付き合いってもんがあるだろう」

 そう言って清之進は仕事の支度を始める。

「オヤジ、ありがとう」

「それで、今日の飯もどうにかしてくれ」

「わかった」

 清之進は笑いかけるとそのまま仕事に向かった。


 清一は自室に帰り、外出の支度をする。

「病院に行くのかい?」

「ああ、そうだよ」

 そう言いながらタンスから上下の着替えを出す。


「ちょ、ちょっと待った!」

「ん!?」

 ジュヌが慌てて清一を制した。

「キミはレディーの前で着替えるのかい?」

「あ、ゴメン。ついつい」

「ついついじゃないよ、ったく」

 清一は着替えを持つと部屋を出ようとノブに手を掛ける。


「でもよかった。ジュヌが元気になって」

「うっ、な、何を言っているんだい。チョット調子が悪かっただけだよ」

「はは、そうだな」

 清一は部屋を出ていった。恐らく脱衣室か何かで着替えをするのだろう、歩く足音が遠ざかる。

「ううーーー」

 ジュヌはその場で地団駄踏む。

「ボクばかり意識して馬鹿らしいじゃないか!」

 困り顔を火照らせてそう呟いた。


「こうやってジュヌをフィギュアに戻して出かけるのは、何だか久しぶりのような気がする」

 ジュヌをカバンの中に潜ませ病院へ急ぐ。

 病院の待合室は相変わらず混んでおり先が思いやられた。

 受付に診察券と保険証を出し空いている長椅子に腰を掛けスマホを取り出す。


 数十分たっただろうか。

「中条さん、診察室一番へどうぞ」

 放送が入ると腰を上げて診察室に歩みを進める。


 トントン

「失礼します」

 部屋の中はベットが並び、その中央に会社にあるような机に空いた丸椅子が二個ほどありイスに座った小太りの先生と後ろに控えているベテランそうな看護師がいた。

 机の上のパソコンを眺めていた先生がくるっとイスを回転させこちらに向き直る。

「今日は、どうしましたか」

 先生は歯を見せて笑っていた。

「掌を火傷したもので……」


「では、見せてください」

 後ろに控えている看護師がスルスルと包帯を解いていくと傷が露になる。

 先生は清一の手を取り、掌をまじまじと眺める。

「これは……ヒドイね。どうしたの?」

「ラーメンを作っていて、熱したお湯をモロに被りました」

 一瞬だけ呆れ顔を見せるも、すぐに戻し心配そうな顔を作った。

「痛いよね」

「はい、そりゃあ」

「じゃあ、薬出すね」

「お願いします」


 看護師が新しい包帯を巻くと、その日の受診は終了した。

(お金払うんだっけ)

 待合室の空いている長椅子にゆっくりと腰かけた。

「たまにはスマホ以外を見るか」

 そう思い立ち、週刊誌を手に取ると読み始めた。


 ピーポーピーポー

 救急車のサイレンの音が徐々に近づいてくる。

「はい、すいません、通して通して」

 週刊誌の話題が面白くなってきたその時、一人の急患が運ばれて来た。

(あれ、何で? 運ぶの救急搬送口じゃねぇの?)

 そう思いつつすれ違いざまに全身を確認した。

「あれ、アイツは、確か……」

 エイムズの兄と清一はすぐに気付いた。

(何があったんだ)

 顔は何かに叩きつけられたように膨れ上がり、着ている洋服が泥の中を転げ回ったかのように汚れており、何かしらの問題に巻き込まれたのだろうと思われた。


「中条さーん」

 受付の女性に呼ばれる。

「はい」

 清一は支払いを済まして領収書と処方箋を貰い病院を後にした。

「何があったんだろう」

 多少後ろ髪を引かれながら。


 近くの薬局に入り処方箋を提出すると近くのイスに座った。

 薬局には備え付けのテレビがついており、BGM代わりに誰も見ていないワイドショーが流れていた。

 ピロリーンピロリーン

「なにかしら、あれ」

「緊急速報?」

 突然の速報に、周囲の客の視線がテレビに集まる。


「透明人間による襲撃が相次いでおります」

「はぁ? 何言ってんだこのアナウンサー」

 テレビを見て一人の老人が悪態をついた。

「……どういうことだ?」

 清一の頭の中には先ほど見かけたエイムズの兄が脳をよぎった。


「白昼堂々皆の見ている前で一方的に襲われるらしいですよ」

「襲われている方はまるで演技でもしているように見えるのですが、殴られた痣などがどんどんと顔や身体に浮かび上がってきて、何者かに襲われているってわかるらしいです」

「それは、恐ろしいですね」

 視聴者が撮ったスマートフォンの映像が流れると、老人を含めみな息をのむ。その映像では、男性が上から下から横からと攻撃を受けて最後には床に突っ伏して倒れていた。

(一体何が起こってるんだ?)

 薬剤師に呼ばれ薬の説明が終わると、お金を支払い帰路についた。


 自宅の神社近くに帰って来ると、邪悪な気配で境内が満たされているのを感じ思わず身構えた。

「清一も感じてる?」

 いつの間にか清香が横にピタリと身を寄せ、小声で話しかけてきた。

「ああ、ビンビンにな」

 清一も強張りながらも清香に返答する。

「ちょっと、今までのヤツとはけた違いそうね」

「ヤバいオーラが漂ってるよ」

「そうね」

 清香の後ろには魔狐(まこ)と見慣れないようで見たことがある男性が微笑んでいた。

「……式神にしたんだ」

「ん、何、文句ある?」

「いや、ありません」

「清一さん、始めまして」

 その男性が微笑みを崩さずに言葉を発した。

「あ、こんちは」

 まるで、姉の彼氏に声を掛けられたような空気に清一は戸惑った。

「私はジェームズと申します。以後お見知りおきを」

 ジェームズの名乗るフィギュアは深々と、しかも洗練させた動きで頭を下げる。


「ジュヌを出す……どうしようか」

 清一は迷った。昨日のジュヌの姿を思い出す。

「清一、ジュヌちゃん、昨日大変だったみたいだったし、調子悪いなら休ませたら?」

 清香が不敵に笑ったように清一には見えた。

(なんかジュヌの事バカにしてねぇ?)

 清一は少し腹を立てカバンからジュヌを取り出し具現化した。

「別にいいっていったのに」

 清香は呆れた口調で呟いた。

「俺たちを舐めんな!」


「わかったわかった、じゃあ私たちが先に入るから、あなたたちは私たちの背後をお願い」

「了解」

 清香たちがゆっくりと境内に入っていく。

「ジュヌ、疲れている所本当にすまねぇが俺らも行くぞ」

「うん、任せて」

「俺が、先に行くから」

 ジュヌはフフッと笑った。

「えっ何?」

 不思議顔で振り返る清一にジュヌは「姉弟だね」っと言葉にした。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ