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見習い神官兼陰陽師、式神失格としてリリースされた型落ち倉庫番のフィギュアと共に一人前の階段を駆け上がります  作者: クワ
第二章

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不吉な予兆の地震

 ちゅんちゅん

 鳥のさえずりが清一を揺り起こす。新しい一日を告げながら。

「うぅーん」

「あれ、俺、布団ひかずに寝てたのか?」

 背中の感覚が硬い。

 「んんー」

 お陰で体の節々がギチギチと音が鳴るのではないかと思うほど固まっている。


「さて、起きるか」

 バサッ

 上半身を立ち上げると、毛布が体からズレ落ちる。

「あれ、毛布掛けてたっけ? 俺が出した、そんなわけねぇよな」

 出したなら布団ごと出しているだろう。

「あっ」

 何気なく見回すと毛布に包まれたジュヌを見つけた。

「ジュヌが掛けてくれたのか」

 清一は優しく微笑みかける。ジュヌはすうすうと小さく寝息を立てていた。


 清一は静かに毛布を畳むと、音もなく部屋を出る。

「起こしちゃ悪いからな」

 居間に着くと父と姉が食事を取っている。いつもの日常通りに。ただいつもと空気が違うような。

「おお、おはよう。起きたか」

「清一、おはよう」

「おはよう」

 なんかよそよそしい。そう感じながら朝食を食べ終わり、学校へ行く準備を整えてゆく。

(後は制服に着替える事……だな)

 部屋へ戻るとまだジュヌは寝ている所だった。

 着ている寝間着を脱いだ後、ワイシャツを着てズボンをはく。その上からブレザーを羽織りカバンを引き寄せる。

「今日の授業はッと」

 教科書等を入れ替え終わると、後ろでモゾモゾと動いている音が聞こえる。


「うー」

 ジュヌが体を起こし、眠い目を擦っている。

「わりぃ、起こしちまったか」

 清一はカバンを肩から掛ける。

「もう俺は行くから眠ってて」

 清一は、そう声を掛けると早足で部屋を出て行く。

「あ、おい」

「行ってくる」

 すぐに玄関を開ける音が響く。

「元のフィギュアに戻しておくれよ」

 ジュヌは苦笑いを浮かべながらため息をついた。


 普段通りの通学路を通り、これまた普段通りの教室へ入る。

「おっす、加藤」

「お、おお、おはようさん」

 隣と喋っている加藤に声をかけ自分の席へ向かう。

「中条君おはよう」

 隣の席から今村の声が聞こえる。

「おう、おはよう」

 挨拶を返し自分の席へ座る。そこにエイムズが教室に入ってきた。

「エイムズさんおはよう」

「あ、ああ、おはよう」

 今村が屈託のない笑顔で挨拶をするとさすがのエイムズも返事を返した。

 今日も、いつも通りの一日になるとその時は疑いもしなかった。そんな朝……。


 地震!?

「キャー」

「うわぁ」

 各自のスマートフォンから緊急地震速報が呼応して鳴り響く。ガチャン、バタンと机の物が落下し音を立てた。

「みんな、机の下に潜りなさい」

 三時間目の最中、突如それが訪れた。時間にして数分位だったか後から見るとそれほど長い時間ではなかった。だが机の下での感覚ではとても長く、数十分揺れているようなそんな感覚で、揺れている間は終わってくれ終わってくれと祈り続けた。

 清一はカバンから素早くスマートフォンを取り出すと地震の状況を確認する。

(震度は6弱)


「収まったかな」

「ああ、大丈夫そう」

「ちょっと、また来るかもよ」

 学校全体どころか地域が喧騒に包まれ、至る所から叫び声やら怒声やら響きわたり、それがみなから平常心を奪いつつあった。

「とりあえず、みな校庭に出てください」

「先生の何人かは屋上へ上がって周囲を確認してください」

 幸いなことにこの近くに海は無いので津波の心配はない。また川はあるが溢れるにしても地域を飲み込み人が流されるほどの水量は無い。

「みな並んで避難してください」

 校内放送が避難の学年クラスの順番を読み上げると、そのクラスが避難のために教室を出、階段を降りてゆく。


「先生!」

 清一がパッと手を上げる。

「どうした?」

 教師の顔は切羽詰まったそれであり、余裕が無いことを嗅ぎ取れた。

「自分の家神社なんで、避難してくる人がいるかもしれません。帰って様子見てきてもいいですか」

「家は近いのか?」

「自転車で十五分です」

「そうだな、帰って様子を見てきなさい。ただ歩いて帰る事、危険だったら戻ってくること」

「はい、わかりました」

 教師は一理あると思ったのか、清一の意見を聞き届けて、許可を出してくれた。



 中条神社



「おわっ何だい?」

 ジュヌは居間でうとうととしている時に揺れが起きた。

「えっ、何だいこの気配?」

 禍々しい何かがいる!

「表だ」

 ジュヌは武器を取ると気配の方へ進みだす。


 ブーツに足を入れ勢いよく玄関を出ると、本殿の前に何かがたむろしている。それは物体としてそこに存在しているのか分からない。色は透明に近く、ゆらゆらと蜃気楼のように揺れていた。

「久しぶりだから大丈夫かなぁ」

 ジュヌはシャスポー銃のボルトを引くと、前に清之進が冷気の法力を込めた薬莢を詰める。

「喰らえ」

 パァン

 おもちゃのような小さく乾いた音が銃から発せられると、中央より少しばかりズレた場所に命中してその弾痕の周囲に氷の法力が広がった。

「物理的に影響が出ているぞ」

 何かしらの物体なのだろうとジュヌは確信した。

「もう一発」

 薬莢を詰め込み引き金を引くと、先ほどと同じように謎の物体に吸い込まれ、穴をあけた。

「次!」

 ボルトを引き弾を込め、銃を水平にして物体に標準を合わせようとした、が物体はそこには存在しなかった。

「えっ!? どこ行った?」

 ドゴッ

「うっ」

 カタンカタン

 飛ばされた銃が石畳にぶつかり音が響く。


「くうう」

 ジュヌはごろりと転がり第二撃目を避ける。

「いつの間に!」

 レイピアと拳銃を引き抜くと、牽制しつつ機会を伺う。

「それ」

 物体に剣を差し込むとズブリとスライムを刺したかのような鈍い手ごたえを手に残して貫通した。

「パァン、パァン」

 拳銃の法力弾も同じように弾痕を残すも、ただ吸い込まれたというだけでそれによって致命傷になったどころか傷ついたかどうかさえ疑わしい。

「どこかに本体でもあるのかい? まるで洋服に穴をあけているみたいだよ」

 ジュヌは剣を持ち直すと横からの斬撃を繰り出した。

「なんなんだ?」

 クラゲを切ったかのようにブニュブニュという感触と共に真っ二つに切れる。

「えっ、二つとも動いている」

 切られて別れた物体は二つとも激しい躍動を見せ、ジュヌに襲い掛かった。

「ふう、危なかった」

 辛うじて攻撃をかわすと、レイピアを収めて代わりに杖を引き抜いた。

「フラム」

 小さな方へ命中すると、まるで水分が失われて乾燥したゼリーのように干からびてゆく。

「フラム」

 大きな方の身体にも当たるも、ブクブクと少し泡立つだけですぐに消えてしまった。

「フラム」

 再び呪文を唱えるも、やはり消えてしまう。

「もういっか……うわぁ」

 干からびたと思われた物体に足元をすくわれる。

「しまった」

 カランカラン

 乾いた音と共に杖が物体の方へ飛ばされた。

 物体は尻もちをついているジュヌにのしかかり、その顔を自らの身体の中へ溶け込ませる。

「うっうぐ……」

 ジュヌは呼吸を止められ、苦し紛れにバタバタともがき、ゼリー状の体を引き離そうと試みた。

(ダメだ、取れな、い……清一……せい、い、ち)

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