学校の友達
「行ってきます」
珍しく清香がゆっくりと食事をしているのが目に入る。
だが清一に関しては「ちょっとヤバい」のだ。
自転車を漕ぎ漕ぎ学校ヘ向かう。
空模様は怪しく、今にも泣き出しそうな情勢だ。
「今日も校門はギリクリアぁ」
早足で教室に滑り込んだ時には、窓ガラスに水滴がぶつかりタンタンとリズミカルな音を奏ででいた。
「中条君おはよう」
「今村おはよう」
席に座るなり隣の今村がどんよりした空気を払うかの様に元気よく挨拶をしてきた。
「今日はあいにくの雨模様だけど元気に行こうね」
「ああ、そうだな」
ガララララ
「ほら、席に着け」
担任の栗沢が教室に現れる。
授業が四コマ終わり昼休みに入る。
「おい、中条、俺はとうとう見つけたぜ!」
「いきなりなんだよ?」
雨が降りしきる中、憂鬱さを吹き飛ばさんとばかりにハイテンションな加藤を見ていると、チョットウザく感じる。
加藤が興奮気味に清一に寄ってきた。
「ほら、これを見ろ!」
ブレザーの内ポケットから細長い何かを取り出した。
「寒天堂ブレーカーインディーズソフト――その名も[妊娠しちゃうぞ!]だ」
清一は呆れ顔で加藤を見た。
「ほらみろ、コントローラーを股間にこう取り付けてっと」
「馬鹿かよ、それで何になるんだよ」
「このメガネ、XRメガネなんだぜ」
「なんだそれ?」
「現実と仮想現実を一緒に見れる夢の道具さ」
まるで外国人のように親指を立てグーのポーズをとる。
「装備、XRメガネ」
サッとメガネを装着し「スイッチオン」の掛け声とともに電源を付ける。
「ほらほらキタキタ~仮想現実がぁぁぁぁぁ」
「うへへぇ、カワイイおんにゃの娘ぉぉぉぉぉぉ」
加藤の顔が崩れて締まりを失ってゆく。
「おい、大丈夫か……それ」
清一の言葉に耳を貸さず加藤はなおも使用し続ける。
「ほわぉーーー」
「お、おいどうした!?」
まるでネコが天敵にあったかのようにピンと背筋を伸ばし、時々ビクッと反応する。
「加藤、おい」
「バイブが、コントローラーのバイブがぁーーーー」
清一が視線を下げると、取り付けたコントローラーがズボンの前で震えていた。
「コイツ、ホンマもんのバカだった」
清一はため息をついて加藤を見た。
加藤はその後もしばらく震えていた。
エイムズは、そんな俺たちを冷たい目で一瞥すると、スッと教室を後にした。
(女性、特に外国人にとってはセクハラだよな)
「お、おい中条、どこへ……はうぅ」
とりあえず不快なものを見せた事だけは詫びようと、加藤をそのままにエイムズを追いかけることにした。
教室を出ると、彼女は渡り廊下の方へ向かい歩いていた。
(旧校舎に何の用だろう)
新校舎と旧校舎をつなぐこの渡り廊下の旧校舎側には、いかにも壁をぶち抜いたという跡が残っており、それらの周囲にある新しいコンクリートで固めた補強跡が旧校舎の怪談話とリンクし不気味さを醸し出していた。
清一は以前人体模型と戦ったことを思い出す。
「まさか……な」
彼女が仕掛けたのではないかと脳裏を掠める。
(とりあえず、追ってみるか)
エイムズの背中を見失わぬよう歩き出した。
渡り廊下を超えると旧校舎は相変わらず薄暗く、日が出ていないのも相まってより一層暗く感じた。
エイムズがある部屋で立ち止まり、中へと入っていった。
(あの教室は、確か……)
清一は足音を殺し、教室に近づいた。
(やはり、人体模型がいた部屋だ)
周囲に物の怪の類がいる気配はない。
(何故、この部屋に入るんだ?)
清一は静かに取っ手へ手をかけた。
(ジュヌを出した方がいいか?)
出すか出さないかは中の様子を確認してからと決め、音を出さぬよう慎重にトビラを引いた。




