仲直り
「まったく、自分勝手なんだよ! 人を呼び出しておいて」
ジュヌは腕を組み、壁に背中を付けて天井を仰ぎ見て苛立ちを吐き出した。
ガタン
「な、なんだい?」
驚いたジュヌがトビラの隙間から覗き込む。
「!!」
ジュヌの目に入ってきたものは、清一は立ち上がったものの武器を持たぬ丸腰状態、歩く人体模型が迫ってきて絶体絶命のような景色だった。
「何やってるんだよ!」
「清一が体勢を崩そうと風の術を唱えると、模型はぐらりと体制を崩す。
「おっ」
清一がモップ目掛けて走り出したところ、あと一歩のところで模型の体当たりで吹き飛ばさせれしまった。
「あっ」
清一はゴロゴロと床を数回転回り、受け身を取ることで終わらせた。
「あーんもう!」
ジュヌは歯がゆさからトビラを潜り駆け出す。
「エクスプロジオン」
模型の周囲で爆発が起こると、視界が失われたのかその場で立ち尽くす。
「清一、今だよ」
モップに素早く駆け寄ると、身体を滑らせそれを掴み、その勢いを使って素早く立ち上がる。
「うおおおおお」
模型へ向かって突進し、身体を右へねじり上げその勢いままに左脇へ向かってモップを叩き込む。
「バゴン」
鈍い音と一緒に人体模型が宙に浮くと、そのまま壁際に積まれている荷物に突っ込んだ。
「やったか」
不安定だった荷物が雪崩を打つと、人体模型はその下敷きになって潰される。
プラスチックがバキバキと割れる音を立て、清一にはあたかも悲鳴を上げているような風に感じられた。
「もっとしっかりしてくれ! ボクが助けなかったら、今頃死んでいたかもしれないんだぞ」
ジュヌの口調が少しばかり強くなる。
「助けてくれなど誰が言った! 勝手に助太刀しただけだろう」
さすがの清一も頭にきて、負けじと言い返した。
「キミねぇ、確実にあの人体模型に追い詰められていただろう」
「どうにかこらえていたところだったんだよ。これから反撃する予定だったんだよ」
「どこからそういうでまかせが出て来るんだい? 反撃どころではなかっただろう」
二人してヒットアップしている所、突然第三者から声をかけられた。
「誰かいるのか?」
恐らくは他の学年の教師なのだろう、スーツを着た中年の男性が教室を覗き込んだ。
(マズい。ジュヌがバレてしまう)
(しまった、具現化したまま見られてしまった)
教師は二度ほど首を振っった後、清一の方へ向くと、不思議そうにまじまじと眺める。
「す、すみません」
清一は申し訳なさそうな顔を作り謝ったところ、教師はなおも清一から視線をそらさずに見つめて、質問をしてきた。
「君だけかね?」
「えっ」
清一の驚きの表情を見て、教師も驚いたのかまたも質問をしてくる。
「今ここには、君しかいない様だが……言い争いのような大声をあげていたのは君なのかね?」
(ジュヌが見えていない?)
「ちょっと劇の練習をしていまして」
清一がとっさにそう誤魔化すと、教師は興味なさげな顔に変わる。
「その人体模型は君がやったのかい」
地面の模型を見やり聞いてくる。
「いや、前からこうでした」
しれっと誤魔化すと、教師はそれ以上追求せずに顔を引っ込めた。
(よかった~)
「あ、そうそう、この部屋は何かと出るという話がある。信ぴょう性は分からないがあまり立ち入らない方がいいだろう」
「はい、すみませんでした」
清一が爽やかに謝りつつお礼を述べると「遊びもほどほどにな」と言ったのち足音が遠のいていった。
「俺、肝試しやっているヤツか幽霊とテレパシーしているヤツだと思われたかなぁ」
不本意そうな清一にジュヌは指をさして「合っているよね」っとケタケタ笑った。
「で、ジュヌの事見えてなかったのかな?」
「まさか、ボクが幽霊?」
ジュヌは目を白黒させて戸惑った。
「見て見ぬふりをしたのかも」
「うーん、ありえるケド、チョットそれはひどくないか!」
そう言ってお互いケンカしていたことすら忘れ、二人して笑いあった。




