帰ってきた中条神社
中条神社。まあ、よく町中にあるちっこい神社だ。ちっこいゆえ色々やって稼がなけりゃ維持できねぇとオヤジがよく愚痴ってる。
ちなみに家族は俺とオヤジ、それに姉貴の三人だ。
「ただいま」
「こんにちは」
両足を擦って靴を脱ぐと、バタバタと家を駆け回る。
「オヤジ! どこだ」
スゥ――――
ふすまを開けるも居間にはいない。
「出かけてんのか?」
書斎のふすまを開けるもそこにもいない。
「どこ行っちまったんだよ」
トイレを開けるも居ない。
「仕方ねぇ」
清一はその時になってジュヌヴィエーヴが着いてきていないことに気が付いた。
「あれっ」
慌てて玄関まで戻ると、そこには棒立ちのジュヌヴィエーヴが待っていた。
「ワルイワルイ、上がってくれ」
そう言って頭を掻く清一にジュヌヴィエーヴは呆れた視線を投げる。
「キミねぇ、客人を放置してその言動は失礼だと思わないのかい」
めんどくさそうに首を振る清一にジュヌヴィエーヴは苛立ち、言葉が強くなっていく。
「ああ、ゴメンって、本当に悪かったよ。とりあえず座ってくれ」
(とりあえずお茶でも出すか)
清一は居間まで案内をし、上の棚から急須を取り出す。
「お茶っ葉どこだっけ?」
ガタンガタンと棚を開ける清一をジュヌヴィエーヴは不思議そうに眺めている。
「これが、和室ってやつなのかい?」
「ああ、そうだ。アイツの所は和室なかったのか?」
「わからない。フィギュアのまましまわれていたから」
「そうか――あった、お茶っ葉」
清一は茶入れを取り出すと、急須の中に葉を入れて、電子ポットのお湯を注ぐ。
「さてと、湯飲みっと」
湯呑を2つ棚から出してゆっくりと注ぐと、緑茶のほろ苦い香りが鼻をくすぐった。
「はい、どうぞ」
「これが、緑茶なのかい」
湯呑をジュヌヴィエーヴの前に置くと、さも珍しいものを見たかのように目を見開き、ゆっくりと手を伸ばした。
「あつッ」
湯呑は手の中で暴れ、周囲に熱湯をまき散らした。
「熱い、熱い、溶けてしまう!」
熱湯を浴びのたうちまわるジュヌヴィエーヴを見て清一は拭く物をと周囲をキョロキョロと見回す。
(布巾だ)
慌てて布巾を投げる清一をジュヌヴィエーヴは激しくにらみつける。
「キミ、ボクを溶かす気かい? フィギュアだって知っているだろう!」
「本当にサイアクだよぉ」
勝手がわからずに困っていた清一もさすがに少しばかりイラっとし始め荒く言葉を返した。
「そんなこと言われなきゃわかんないだろ! 言葉にしないと通じないんだよ」
「何キレているんだよ! キレたいのはこっちだよ。こんなにずぶ濡れになって……」
「じゃあ風呂にでも入ってくればいいだろ! そこの廊下行ってすぐの通路右だ」
「はぁ、わかった、上に着るものあるかい?」
「俺のTシャツ出しとく、取りあえず着といて」
「ほんっとうに……ふう、わかった」
頭を振り、ウンザリ顔で風呂に向かうジュヌヴィエーヴを見送り、自室へ戻る。
「確かここに入れたよな」
「おっ、あった」
袋に入った一枚のシャツを取り出す。
「ライヴ限定Tシャツ、当然未使用」
泣けるが仕方がない。
「使用したのを渡すのも気が引けるしな」
清一はひとり呟きそれをもって部屋を後にした。




