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見習い神官兼陰陽師、式神失格としてリリースされた型落ち倉庫番のフィギュアと共に一人前の階段を駆け上がります  作者: クワ
第一章

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17/30

氷織さんの吹雪のせいで

 ガラララ

「すいませーん」

 上手く体を使ってトビラを開けると、部屋の中へ入り先生に声をかける。

「どうしました?」

「転校生ですが、屋上で倒れていたのでたまたま昼飯を食べようと上がった俺が発見して連れてきました」

「あらら、外国人だし疲れたのかしら」


「ベッドに寝かせてもいいですか」

「そうよね、さすがに疲れちゃうよね」

 そこで初めて清一がエイムズを抱えていることに気が向きフォローをした。


 先生が布団を捲り上げると、そこにエイムズをゆっくりと寝かせた。

「布団をかけるね」

「お願いします」

「えっ」

 先生はエイムズの体中の傷を見てただ事ではないと疑った。なにせ髪は炎で焼かれたようにちぢれ、所々凍傷のようなあざがある。

「では、俺はこれで」

「はい、お疲れ様」

 清一は振り返る事なしに部屋を出て行った。


 清一は教室に向かい階段を上り始めた。

「なんだろう……何だかすごく怠いし眠い」

「それはそうでしょう、私の具現化には清一が使っている式神より法力が必要ですから」

「俺が術を使ったのもあるのですか?」

「当然あります、あの戦闘で何度も術を唱えかなりの法力を消耗したのですから、その怠さは清一の身体が発している疲れの現れです」

「じゃあ、五時間目は寝るか!」

「……はぁ」

 楽天的な清一の体内に氷織のため息がこだました。


 教室に戻ると、やいのやいのとみな騒がしく喚いている。

「何があったんだ?」

 訝し気な表情を浮かべ清一が自分の席に座ると、今村が興奮して話しかけてきた。

「中条君! 今、先生からお話があって、水が使えないんだって」

「水が使えない? 何で?」

「わからない。調査するって。もしかしたら水道管が穴が開いたのかもって言ってた」

(まさか)

 先ほどのエイムズとの戦闘を思い出した。

(貯水槽の周囲で氷織さんが吹雪出したり、俺が氷の法力を唱えたよなぁ)

「どうしたの? 何か知ってるの」

「いやいやいや分かりませんって」

「?」

 挙動不審な清一を見て、今村は不思議そうな表情に変わる。

「清一、大丈夫ですよ。明日になれば氷は解けているでしょうから」

 体の中から氷織の声が聞こえてくる。

「まさか、凍るとは思っていませんでした」

 清一の驚きの声にふふふと笑い声が体の中を駆け巡った。

「何か、これ、違和感ありまくりでなれそうにねぇな」


「中条君、何か言った」

「あ、いや、何にも」

「今日変だよ? 本当に大丈夫?」

「ああ、問題ないよ」

 今村の顔が不審げに変わる。

 その日の授業がすべて終わるも、エイムズは戻ってこなかった。

 

「氷織さん、エイムズの様子を見て帰りますね」

「そうですね、少し気になります」


 清一は帰り支度を終えると、階段を降り保健室へ向かう。

 ガラララ

「失礼します」

「どうやら外出中のようですね」

 夕日が差し込む保健室の中は、不在にしている主の忘れた冷えたコーヒーの温度で空白の時間の長さを推し量ることができた。

 先ほどエイムズを寝かしつけたベッドを覗き込む。

「……」

 エイムズは寝かしつけた時と変わらず横たわっていた。ただ、先ほどと違うのは顔の凍傷を治療した跡がある事だった。

「おそらくここの主が治療した物だろう」

「治療したという事は、戦闘したことがバレたってことでしょうか」

「恐らくそこまでは分からないでしょうが、連れてきた清一が何かしらの事情を知っている者として聞き取りを受ける可能性は否定できないでしょう」

「ですよね。何か言い訳考えないと」

 清一は暗雲とした気持ちになり頭を抱えながら、校舎を出て家路についた。

 結局、清一が帰るまでには水道は復旧しなかった。

 

「ただいま」

 家に着くと、スッと氷織が清一の身体から抜け出し離れた。

「今日はありがとうございました。助かりました」

 事実、氷織がいなかったら、はたして勝てていたかどうか。

「なかなか世の中面白いものです。久しぶりに珍しい者と出会えて退屈しのぎにはなりました」

 氷織特有の言い回しで評価してくれた。

「結局、呪いではなかったが色々収穫はあったな」

 明日の聞き取りの説明を作る事やエイムズが再度襲撃する可能性を考え対策を練るなどやることは沢山ある。

(それにしても、今日の氷織さんは珍しくよく喋ったなぁ)

 本来は話好きなのかもしれない。

「とりあえず……ダメだ、寝よう。無理だ、耐えられない」

 畳に寝転がり目を瞑る。

 数分後には、小さなイビキが吐息と共に広がった。

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