第八幕:聖女の言葉の教え方
言葉を知らないケモノもどきに、
どうやって言葉をおしえようか?
賢い女性がやった方法を、少しだけ話すよ。
やあ、君。シャムハトは、良い女だよ。彼女は賢くて、素直で、頭も良かった。みんなから嫌われているギルガメッシュすら、彼女のことを大切に思ってる。
第七幕では、ギルガメッシュ王の愛人シャムハトが、彼に瓜二つのケモノを見て、哀れさと愛を感じたところを見た。
言葉を知らないケモノに、
言葉を教える事にした。
彼女のやり方は実に見事だ。
いいかい、
この手を触りながら、
言い聞かせるんだ。
この手がわからない?
君の利き腕じゃない方の手さ。
それを触りながら--彼女はこう言った。
ねえ、あなた。これは手よ。
手なの。
これが、アタシにふれる。
触れるの。
どう?
温かい?
あたたかい?
ねえ、あなた。これは指よ。
指なの。
これが、アタシにふれる。
触れるの。
どう?
柔らかい?
やわらかい?
ねえ、あなた。この手よ。
この手なの。
これが、アタシにふれた。
触れたのよ。
どう?
もっと?
もっと?
なんて、シャムハトがケモノのエンキドゥに囁く。ギルガメッシュ王と似ている理由は彼女には、わからない。
けど、ギルガメッシュ王に会わせたら、エンキドゥは殺されただろうね。
それは彼女には分かっていた。
だから、近くの村に彼を匿うことを考えた。
猟師は嫌がるからね。
罠を壊しまくったケモノを許さないさ。
エンキドゥは、
シャムハトを、彼女のことをよく分からないようだった。
ずっと彼女を見ていた。
森の仲間たちと比較して、
彼女が森に住まない生き物だと、
分析した。
なぜかって?
だって、四つ足で行動しないからさ。
彼の森の仲間たちは、四つん這いだったから。日本足で歩く彼女は、どっちかというと、エンキドゥと同じものだ。
彼は二本足で立つ。
四つ足にとって威嚇みたいなものだ。
「て、あ、し」と彼は言葉を話した。
とても長い時間をかけた。
そうして、彼女の献身でエンキドゥはボクらにエンキドゥという名前を言えるようになった。
自分で名付けたそうだ。
彼女は彼を愛しく抱いたよ。
彼の名を繰り返し呼んでた。
「エンキドゥ」と二人は名前を繰り返す。お互いの手が絡み合う。
あとは、知っての通りさ。
彼女は受け入れて、
彼はよく分からないままつながった。
緩やかなつながりだった。
ギルガメッシュ王は激しさで求めてたけど、エンキドゥは一つ一つを彼女の身体を名付けた。
まるで、アダムが楽園の中で、名前をつけるように。
周りのケモノたちは、互いに目配せして、彼から離れていく。
あの薄暗い森の奥へと。
森は沈黙した。
エンキドゥの世界は初めて、
彼の名を呼ぶ声を聞いた。
(こうして第八幕は、ケモノたちの目配せと共に幕を閉じる)
こうして、エンキドゥは言葉を覚えた。
言葉って不思議だね。




