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第三幕: 禁忌の詩、軋む扉

やあ、君。誰かにかまってもらいたい時に、君ならどうする? ボクかい? ボクはーー先に言わせようだなんて、ずるいぜ。第二幕では、ギルガメッシュ王子と女神ニンスンの、歪な親子の会話が始まった。神と人の親子関係は、まるっきり違う。

やあ、君。誰かにかまってもらいたい時に、君ならどうする?

ボクかい?ボクはーー先に言わせようだなんて、ずるいぜ。


第二幕では、ギルガメッシュ王子と女神ニンスンの、歪な親子の会話が始まった。神と人の親子関係は、まるっきり違う。



ボクらは女神の部屋にいる。

彼女は息子のギルガメッシュを見つめる。彼女の手は、彼の肩に置かれてた。その瞳には、神の叡智と母の愛が宿っていた。


再び彼女は、彼にささやいた。


「神々の試練は、

汝の力を試すためにある。」


その言葉に、ギルガメッシュの胸はさらに燃えた。

母の声は優しく、

ーーどこか遠かった。

神々の領域から響くようだった。


彼は拳を握り、決意を新たにする。「母よ、我は父を超える。

神々の試練を乗り越える。

このウルクの王として名を刻む。

我が物語は、ここから始まるのだ!」


彼の父ルガルバンダ英雄譚は、

ウルクの民の間で語り継がれ、

宮廷の吟遊詩人たちが夜ごと歌い上げる神聖な物語だった。

だが彼がギルガメッシュ王になった後、君は彼の父の物語を聞いたかい?

それが答えだ。

ギルガメッシュ王。

彼が始まりの王でなければならなかった。


絹のカーテンが風もなく揺れる。

ギルガメッシュは、母ニンスンと向き合っていた。

少年の目は、母の姿を見てた。

神と人の血が交錯する二人の容姿は、まるで神話の彫像そのものだった。


彼女の身体は、優雅だ、

しかし力強さを秘めてる。

肩は華奢だが、背筋はまっすぐだ。

彼女の肌は、小麦色で、滑らかだ。

純白の亜麻布のローブが、肩から裾まで体を包む。

時折、実った果実が二つ揺れる。

ギルガメッシュ王子は、一心不乱に見つめた。

首元には、星形の瑠璃色のペンダントが下がり、まるで誘うように揺れる。


彼の瞳は、燃えるような黄金色で、胸の中では、熱情が燃え盛る。


王子の声は、好奇と苛立ち、そしてどこか深い探求心に満ちていた。

「我が母ニンスンよ。

貴女は、なぜ父を選び人間界へと来たのだ。

もし神々の国に留まれば、

あるいは我は神々として迎えられたろうに。」と悔しそうに言う。


「ルガルバンダ、汝の父を選んだ理由……それは、神々の国では知ることのできぬものを、

妾が求めたからだ。

神々である我々は、

不完全を知らない。

故に、妾は汝の父に嫁いだのだ。

知りたかった。

妾は知恵と美を司る神なのだから。」

残酷な言葉だった。

この言葉は、彼の心を揺さぶる。

母に何か言いたかったが、彼はおしとどまる。


彼は下唇を噛む。

それから、周囲を見まわした。

そして誰もいない事を確認し、

彼は歌い出した。力強く切なげに。


母よ。我は恐ろしい。

貴女の期待に応えられるか。

琥珀の瞳に宿るのが

失望と嘆きに変わらぬように。


母よ。貴女の乳房に頬を埋め

赤ん坊のように甘えられたら

でもいつか、我は貴女の歳をこえ

老い果てて朽ちる定め


母よ。これを情けと思わば

一瞬でも我を救わん

ああ、あの男を忘れて、

ナンナの月光が神殿の石柱を照らす夜


母よ。ウルクの城壁に囲まれし国には

貴女よりも美しい女はいない。

いてはならぬ。

あってはならぬ。


母よ。これはとても残酷な事だ。

我が愛は貴女の神性に

奪われた。

されど我が心は貴女を求め続ける。


母よ。ならば我も

他から愛を奪うしかない。

誰が我を非難できようか?

ウルクの民の囁きも神々の憐れみも。


ああ、母よ。

愛と恨みを込めて叫ぶ。

なぜ、貴女は神なのだ?

ナンナの光の下、我が魂は燃ゆ。


そして彼は”いつも通り”に、

彼女を抱きかかえ、

部屋の奥へと消えた。

しずかに、消えて行った。


(こうして、第三幕は軋む扉と共に幕を閉じる)

こうして、第三幕は軋む扉と共に幕を閉じる

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