反抗
月曜日の朝。
風凛は目覚ましの音で体を起こし、ぼんやりと天井を見つめた。
昨日のゲーセンで楽しい気持ちを思い出すと同時に母親とのケンカを思い出し胸糞悪くなった。
そして、湊からのメッセージが来ないか、スマホを気にしていたが、何もなかった。
風凛は制服に着替え、リビングに顔を出す。
母親は既に台所で洗い物をしていた。
視線が交差することはなかった。
「私はまだ許してないからね…」
母親から釘を刺される。昨日の喧嘩を寝起きよりも鮮明に思い出した。
「……」
私は黙りこくって返事はしなかった。
そして、靴を履いてドアを閉めた。
わずかに鳴った玄関の音だけが、家と自分をつなぐ最後の線のように響いた。
(怒るのはわからなくはない…でも、、)
理解はできる。でも、納得はできない。ずっと頭の中に昨日の喧嘩を反芻していた。
(でも、嘘はついてない。遊んだだけ。ほんとに、ただそれだけなのに)
カバンの中からイヤホンを取り出し、音楽アプリを開く。
けれど、再生ボタンを押す前に、ふと通知が1件届いた。
画面には、短い一文。
「昨日はありがとう」
湊からだった。
(……あ)
風凛の胸が少しだけ、ふっと軽くなる。
たったそれだけのメッセージなのに、ちゃんと自分のことを思い出してくれていた。
迷惑じゃなかったんだ。そう思えるだけで少し安心できたが、湊のことは「友達」とも「先輩」とも違う。
年齢のこと、立場のこと、親との関係――いろんな要素が、頭の中をぐるぐる巡る。
(この関係って……やっぱり、よくないのかな)
イヤホンを首に下げたまま、通学路の信号を渡る。
校門はすぐそこに見えている。
そのとき、ふと風が頬をなでた。
なんとなく、それが湊の「ありがとう」をもう一度思い出させた。
(……もう少しだけ、続いてもいいよね)
そう、心の中でつぶやいた風凛は、制服の裾をきゅっと握って、歩き出した。