余韻
「またゲームやりましょー!」
そう言って湊に手を振ったあと、風凛はその場に少しだけ立ち尽くしていた。
(……あっけなかったな)
ゲーセンでの時間はすごく楽しかった。
2人でスコアを伸ばして、目が合って、小さく笑って、タイミングが合ったときは自然と声が出て。
(やっぱり、2人でやるのっていいな。テンション違う)
駅までの道を歩きながら、風凛は自分の歩幅よりも少し大きく足を出してみた。
なんとなく、今もまだ心が浮ついていて落ち着かない。
(でも……ゲームだけで終わっちゃったな)
一緒に他のゲームをしてみるとか、帰りにちょっと話すとか、そういうのがあってもよかったよなー…
(せっかく会えたのに……もうちょっと、一緒にいたかったな)
(……変な子って思われてないといいけど)
初対面のときだって、いきなり話しかけたし。
(今日も自分ばっかり楽しんでたのかな!?いや、湊さんも笑ってたし、それはない。よね?)
少し、避けられているのではないかと心配になるが。
でも。
でも――それでも。
(やっぱり……また会いたいな)
風凛は電車に揺られながら、スマホの画面をぼんやり見つめた。
彼からのメッセージは特にない。でも、送ったら返してくれる気はする。
(今度は……ゲームだけじゃなくて、ちょっとだけ、お茶とか、できたらいいな)
それが、友達としてなのか、憧れなのか、自分でもよくわからない。
ただ、前回だけでなく今日の楽しさをまた感じたい!!
家に着く頃には、空はすっかり暮れていて、街灯がオレンジ色の光を落としていた。
玄関のドアノブに手をかける瞬間、ふと風凛は小さくつぶやいた。
「……次、いつ会えるかな」
誰にも届かない声。
でもその声には、確かに少しだけ、期待が込められていた。