表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
5/23

再会

日曜日の午後5時。三重の駅の改札口に現れた湊はオフィスカジュアルな格好だった。


(こっちに用事があったからついでと思ってOKしてしまった…よかったのだろうか。今更不安になってきた…)


少し人混みを避けるように立っていると、「湊さーん!」という明るい声が響いた。


「あっ、久しぶり。」


駆け寄ってくる風凛は、制服だった。


「お待たせしました!」


「日曜日なのに制服ってことは部活でもあったの?」


「そうです!そうです!吹部の練習があって。早く行きましょう!」


風凛はうれしそうに笑った。そして、ふたりは駅前のアーケードを歩きながら、あの日と同じゲームセンターへ向かった。


----


「今日、けっこういい感じじゃないですか?!」


風凛は自分の思ったよりいいスコアが取れたのか驚いたように言った。


「ほんとにびっくりした…めちゃくちゃ成長してて」


湊と風凛は、2人プレイの音ゲー筐体の前で肩を並べていた。


序盤こそ少しぎこちなさを感じていた湊だったが、1曲、2曲と進むにつれ、純粋にプレイを楽しんでいる自分に気づいていた。


風凛はタイミングもリズムも明らかに上達していた。


「やっぱ、2人でやるとテンション違いますよね~。」


「そうだね。2人プレイって、やっぱ面白いわ。」


画面が次の選曲に移る。

湊はふと、彼女の笑顔を見ていた。

無邪気で屈託がない――悪気も、下心もまったく感じないその態度に、逆に自分の方が意識してしまう。


(……こうしてると、ほんとに普通にゲーム好きの子なんだよな)


2人で協力してSランクを取ったとき、風凛が「やったー!」と小さくガッツポーズをした。

その姿を見て、湊も自然と笑っていた。


(……うん、楽しかった)


けれど、何回か遊んで待合の椅子に座った瞬間――

湊はふと、次に何をすべきかを迷っていた。


このまま、もう少し一緒に過ごしてもいいのか?

ジュースでも飲みながらちょっと喋る?


でも、何かが引っかかっていた。

それは理屈ではなく、ただの「なんとなく」だった。

このあと余計なことになるのは避けた方がいい――そんな直感。


だから、口をついて出たのは深い考えのない一言だった。


「……あ、そろそろ行かないと。ちょっと用事あってさ」


「あ、そうなんですね…了解です!」


風凛は意表を突かれたような表情をしたが、すぐあっけらかんと笑って頷いた。


「今日はありがとうございました! めっちゃ楽しかったです!」


「ああ、俺も。……じゃあ、またな。」


そう言って軽く手を振ると、湊はその場を後にした。

去り際、風凛が「またゲームやりましょー」と小さく言っているのが聞こえた。

俺は笑顔で手を振った。そして、俺は雑踏に消えていった。


湊は少しだけ立ち止まり、振り返らずにスマホを取り出して画面を見た。

特に誰からも通知はない。


(楽しかった。それだけでいい……はず)


そう自分に言い聞かせながら、湊は人混みに溶けていった。


評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ