朝日
まぶたの裏に、白い光が差し込んでいた。
ゆっくりと目を開けると、カーテンの隙間から朝日が部屋に差し込んでいる。
昨日の夜、泣き疲れてそのまま寝てしまったらしい。
頭はぼんやりしていて、心はまだ少し重かった。
でも、スマホの通知に気づいて、手を伸ばす。
──《じゃあ、また明日》
画面に残っていたそのメッセージを見て、ふっと胸があたたかくなった。
昨日の嵐みたいな時間のあとで、
ちゃんと「また明日」があることが、信じられないくらい嬉しかった。
もう終わりなんだと思っていた。
もう、連絡も来ないと思っていた。
でも、まだ少しだけ繋がってる。
目の奥がじんと熱くなるのを誤魔化すように、布団を跳ねのけてベッドから出た。
制服に着替え、髪を整え、食卓のあるリビングに向かうと、そこに母がいた。
コーヒーを飲みながら、ちらりとこっちを見る。
昨日と違って、怒気はない。むしろ少しだけ、気まずそうな顔。
「……昨日はごめんなさい。私も怒りすぎたと反省したわ…
でも!心配なのよ。ほんと、それだけなの。わかって欲しい。」
言葉は静かで、落ち着いていた。
母なりに一晩考えたんだろうということは、分かる。
でも。
「ごめんね」って、そんなに簡単に言わないで。
私の中にはまだ、ぶつけきれていない気持ちが渦巻いていた。
あんなに大声で怒鳴って、追い詰めてきたくせに。
少し落ち着いたら「ごめんね」って、それで終わり?
――それに。
私はもう、湊さんと「明日」の約束をしてしまっている。
許されるかどうかなんて、最初から考えてなかった。
だって、最後って分かってるから。
それくらいのワガママ、言ったっていいじゃん。
だから私は、母の謝罪に何も返さず、そのままトーストも手をつけずに鞄を持って立ち上がる。
「……」
足音だけを残して、玄関を出た。
空は、昨日より少しだけ澄んでいた。
今日、湊さんと会える。
そう思うだけで、足取りが少し軽くなる気がした。
次回は月曜日の夜に公開します。




