布団の中
布団に包まり枕に頭をうずめていた。
頭が熱くて、心臓の音ばかりがやたらとうるさい。
「もういい」なんて、なんであんなこと、言っちゃったんだろう。
言いたくなかったのに。
本当は、聞いてほしかったのに。
そのとき、コンコンとドアをノックする音。
続けて、母の声がした。
「ねぇ、風凛。あんた……あの男と、どうするつもりなの?」
ぞくっと、背中が冷えた。
わざと静かにしていたのに、見透かされたように言葉が突き刺さる。
「うるさい!うるさい!
もう連絡なんて取らないから!ほっといてよ!」
怒鳴った声が、自分でも驚くほど大きかった。
でも、もう我慢の限界だった。
「本当に?それ、証拠見せなさいよ!どうせ嘘でしょ!また会うんでしょ?!」
母の声はヒステリックに高まって、扉がドンドンと叩かれる。
「ほっといて!1人にさせてよ!!」
声が震えた。
泣いてるのを悟られたくなくて、叫ぶように返した。
それでも、ドンドン、ドンドン――
いつまでも、扉の向こうから現実が叩いてくる。
息がうまくできない。
誰からも肯定されない。
どうしてこんなに苦しいの?
恋情なんてない。ただ仲良く遊びたかっただけ。
誰も私の気持ちを、ちゃんと見てくれない。
布団の中で、ぐしゃぐしゃになった顔を隠していたとき。
スマホが、ひとつだけ震えた。
──《ごめん》
その言葉。
画面に浮かんだ“湊”の文字に、涙がこぼれた。
たった一人だけでも、私のことを案じてくれる人とがいる。それだけで、少しだけ、呼吸が楽になる気がした。




