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友達

6時間目のチャイムが鳴った瞬間、風凛はふぅっと息を吐いた。

授業の内容なんて、ほとんど頭に入っていない。ノートを取る手もどこか浮いていた。


放課後、窓際の席でスマホをなんとなくいじっていたら、同じクラスの沙月さつき未羽みうがやってきた。


「風凛、今日ずっと暗い顔してるやん。

どしたん?話聞こか?笑」


沙月がからかった声で言ってくる。


「え、う、うん…」


いつもなら笑って返せるのに今日は文字としてしか頭に入って来なくて、つい素っ気ない反応をしてしまった。


「風凛。辛いことがあったなら本当に話聞くよ?」


その様子を見て未羽が心配そうな顔をして聞いてきた。


「よし!じゃあ、とりあえずいつも行くファミレス行こ!話はそれからだ!」


沙月はほぼ無理くり約束を取り付けて私たちはファミレスへ向かった。ただ、こういう気持ちの時に強引にでも明るくしようとしてくれるのはなんだかんだ嬉しいものだった。


3人は商店街近くのファミレスに入り、いつものドリンク飲み放題とフライドポテトを注文した。

放課後の雑談。勉強、先生の話、部活のゴシップ――いつもよりは口数が少ないがそれでも明るい顔ができるようになってきた。


そして、2人が顔を合わせて示し合わせたかのように本題に入ってきた。未羽がストローをくわえたまま、眉をひそめて聞いてきた。


「なんかあった?」


風凛は一瞬迷ったあと、小さく笑って言った。


「……友達の話なんだけどね」


「出た、“友達の話”~」と沙月がからかうように笑った。


「うるさいな、ほんとに友達の話なんだってば笑」


「はいはい、それで?」


風凛はカップをくるくる回しながら、言葉を選びながら話た。


「その友達、ゲーセンで知り合った人とたまに遊んでるんだけど……その人、24歳なんだって」


「えっっ」


未羽が、あからさまに口元を押さえた。

沙月は一瞬固まって、それから眉を寄せた。


「その“友達”は、何歳?」


「……高1」


「ちょっ……それはヤバくない?」


未羽が声をひそめて身を乗り出した。


「てか、それ、警察案件とかじゃない? その人、何考えてんの……?」


「でもさ」沙月が未羽の言葉を遮るように言う。「年齢差があってもさ、別に何もしてないならよくない? 遊んでるだけでしょ?」


「遊んでるだけって……年が違いすぎるって! 大人と子どもじゃん」


「高校生と大学生が付き合うのはアリなのに、24ってだけでアウトってのも変じゃない?」


「だって24って社会人でしょ? 人生のステージ違いすぎ」


2人の意見がはっきりと分かれていく。

風凛は口を挟まず、ただ黙って聞いていた。


(やっぱり、普通じゃないよね……)


でも、どちらの意見にも心が揺れた。

未羽の「危ない」「変な人かも」という不安。

沙月の「別に悪くない」という寛容さ。


(自分は、どう思ってるんだろう)


「その友達はさ、どうしたいん?」


未羽がふと真顔になって聞いた。


風凛は答えられなかった。

だって、“その友達”は、自分なのだから。


代わりに、ストローの先で氷をカラカラと鳴らして、こうつぶやいた。


「……まだ、わかんない。けど、楽しかったよとは聞いてる。」


それが正直な気持ちだった。

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