ふたりの檻、ひとつの鍵
桜庭ひめか。
才色兼備、家柄、礼儀作法、スポーツも芸術も、ひとつとして欠けることがない。
転校初日、都会の名門・煌学園の門をくぐるその瞬間から、みんなの視線はすでに彼女に釘付けだった。
けれど、誰も知らない。
その見た目とは裏腹に大きな闇を抱えていることを
そんな彼女が出会ったのは、学園内で有名な双子の兄弟。
蒼と碧。
名前まで紛らわしい二人は、外見も声も癖もそっくりで、親ですら「どっちがどっちなのか」と間違えるほどだった。
なのに——
「蒼くんは左利きよね。碧くんは少しだけ瞬きの癖があるわ」
ひめかは一瞬で見抜いた。
その瞬間、二人の心に決定的なひびが入る。
誰にも見分けられたことのなかった存在を、「あっさりと」識別された衝撃。
それは、恋などという生温い感情ではない。
もっと粘つき、絡みつき、血肉を蝕むような熱。
「ねぇ、ひめかちゃん。どうして僕が蒼だってわかったの?」
「ひめかちゃん。僕だけを見てくれる?」
蒼と碧。どちらもひめかに執着する。
初めは優しい微笑みを浮かべていた二人は、やがて狂気を滲ませていく。
気づけば、ひめかの周囲から友人たちは静かに姿を消し始めた。
誘拐まがいの甘い囲い込み。
「どこにも行かないで」
「僕たちだけのひめかでいて」
ふたりの「愛」は、冷たく、熱い檻となってひめかを囲む。
それでもひめかは、決して怯えなかった。
むしろ、その視線はどこまでも冷静で、美しかった。
「どうしてそんなに私に執着するの?」
問いかける声に、双子は口を揃えて答える。
「だって、ひめかちゃんは僕たちをわかってくれる、唯一の人だから」
「君以外に、僕たちの違いなんて誰にもわからないんだよ?」
彼らの歪んだ愛は、日々深く、暗く沈んでいく。
けれどそのたびに、ひめかの心の奥底に眠っていた、ある欲望が顔を覗かせる。
『この愛は、壊れるまで続くのだろうか。』
誰にも見抜けない完璧な仮面の奥で、ひめかは静かに微笑んだ
執着とかヤンデレ系大好きなので試しに書いてみました!!今のところ続きを書くつもりはないんですけど、長編読みたいって方がいたら書こうと思っているのでコメントで教えてください!