微笑みを届ける紙飛行機
月曜日の朝はどうしても憂鬱な気分になる。
高校に入学した当初は、俺だって新しい環境に胸を躍らせていた。
しかし、どうにもクラスの雰囲気に馴染むことができず、気付けばもう三学期……
自分で言うのも何だが、俺はどうにも中途半端な存在だ。
ゲームも漫画もアニメもそこそこ好きではあるが、オタクと言えるほどのめり込んでいるワケではない。
ファッションやスポーツなどのアクティブな趣味にも興味はあるが、実際にやるほどのモチベーションはない。
正直自分でも面白みのない人間だと思うが、そんなのどこにでもいるし、別に珍しい存在ではないと思っている。
……だというのに、俺のクラスはそれが極端で完全に二極化してしまっているのだ。
簡単に表現するため、俺は便宜上心の中でパリピチームとオタクチームと呼んでいる。
普通は第三勢力として中途半端な穏健派が存在すると思うのだが、それが無いせいで俺は孤立化してしまった。
こればかりは運としか言いようがないが、それなら俺はかなり不幸と言えるだろう。
集団の中で誰とも話さず過ごす一週間がまた始まると思うと、憂鬱になるなという方が無理な話だ。
(……ん?)
足取り重く公園を歩いていると、視界に白い何かが映りこむ。
近付いてみると、それはどうやら紙飛行機のようであった。
恐らくどこかから飛ばされてきたのだろうが、何やら絵のようなものが見えたのでつい気になり開いて見てしまった。
そこには、上手いとも下手とも言えない、なんとも中途半端な絵が描かれていた。
誰にでも描けるような、本当に何でもない絵である。
……しかし、俺にとっては――
(はは、そうそう、こういうのでいいんだよ)
至って普通の絵だが、そこには沢山の好きが詰め込められていた。
この絵を描いた人が、今後どういう道に進むかはわからない。
しかし、様々な可能性を感じさせる中途半端なこの絵に、何故か堪らなく愛おしさ感じてしまった。
俺はその絵を綺麗に折りたたみ、鞄にしまい込んだ。
それからは毎週月曜日、晴れの日は高確率で紙飛行機を拾うようになった。
一体誰が飛ばしているのかはわからないが、少しずつ上手くなっていくその絵のお陰で、俺は少しだけ月曜日が好きになった。
――そして春になり桜の舞う頃、
いつもの場所には紙飛行機の代わりに一人の少女が立っていた。
少女は、紙飛行機を片手に笑顔で歩み寄ってくる。
……この日、俺の憂鬱な日々は終わりを告げたのであった。