表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
61/62

055 緋色の毛並み

 赤い刃が、宙を裂いて駆け抜ける。

 緋色の軌跡を描いて飛ぶそれは、その行く先を飛ぶ黄と紫の生き物を狙い違わずに切り裂き、次の瞬間、ぼう、と赤く包み込む。


 かと思えば、その生き物だったものをさらに引き裂いて、赤く明るいものの中から飛び出す緋色の軌跡が、さらに一つ。


 辺り一帯の緑を照らすその熱さに、負けず劣らずの緋色の毛並み。

 尖った耳も、鋭利な牙も、バランスをとるように揺れるフサフサの尻尾も、私によく似ている。

 似ていないのは、毛色だけ。


 飛び出した彼女はそのまま、さらに奥に飛んでいた一匹に食らいつき、落ちる勢いすら使って地面に叩き付ける。


 私の視線の先で繰り広げられる、彼女と十数匹の生き物の戦い。

 否。それは戦いの様相ではなく、半ば蹂躙に近かった。

 さらに接近してきた数匹の攻撃を回避しつつ緋色に染めた彼女は、無事を確認するかのように私の方を見る。


 それを見返した私は、その時に思った。


 ───この日、私は、運命に出会ったのだと。





 はいっ十匹ぃ〜!!


 五匹ものアーミーアピスが、複数の方向から包囲して突っ込んでくる。

 やはりアピスというのはトゲにかなりの自信があるのだろう。その鋭利な尖端を突き刺さんと必死だ。

 だが、悲しきかな。


 それでどうにかならないほどに、あまりにも火に弱い。


 レベルアップした並列思考を使い、火玉(ファイアボール)を複数生み出す。

 それを周囲に……ではなく一匹に向かって一斉発射し、さらにそちらに使って走る。

 狙われた一匹は咄嗟に勢いを緩めたものの、盛大に火玉(ファイアボール)を掠めて墜落。

 同時にそれによってできた包囲の穴から、私は回避に成功する。


 うん、あれはほっとけば死ぬな。羽根燃えてるし。

 さて…影ちゃんはぁ〜、平気そうだなぁ。なんか呆然と突っ立ってるけど狙われてないし。

 あれなら放置でも問題なさそうかな。


 その後、残る六匹ほどのアピスの動きを警戒しつつ影ちゃんの様子を見る。

 最初の方は影ちゃんも狙われていたのだが、途中から全員が私を狙うようになっていた。

 多分、私を総掛かりでどうにかしないといけないと思い直したのだろう。

 せめて火耐性Lv.1でも持っていればもう少し話は違っただろうに、一切熱の生まれない環境で生きている弊害か。

 まぁ地下だし、もっと深くに潜れば溶岩でグッツグツの場所とかもあるのかもしれないけど。


 私は今、二十匹近いアピスと戦っている。

 それというのも、目を覚ました影ちゃんと今いるこの広間から移動しようとした矢先のことだった。

 なんと、逃げ出したと思ったヴァンガードアピスが、仲間を引連れて戻ってきたのだ。

 あれは逃げたのではなく、仲間を呼びに行っていたというわけだ。

 ……いや、それも逃げたの範疇か…?

 まぁいいや。戻ってきたし。


 正直言ってすごく面倒だったので今度は私が逃げようかとも思ったのだが、今は影ちゃんもいる。

 影ちゃんの基礎敏捷力ではどう頑張っても走る私について来れないだろうし、影ちゃんに合わせて走って追い回されても面倒だ。

 なので、こうして蹴散らしているわけである。


 フハハハハハハハ!!

 レベルアップで魔力が全快した私の敵ではないわァー!!


 などと調子に乗りつつ、数分とかからずに残り六匹ほどにまで燃やし尽くして、今に至る。

 さっさと移動したいので、内心ではふざけつつも戦いは全力だ。

 全快した魔力を惜しみなく使って魔法全力ブッパ。火魔法で燃やして、風魔法で動きを補助して跳躍、噛み付いて爪で切り裂いての大立ち回りである。

 すぐそばに柱の木があるのもあって非常に戦いやすい。


 私は、残る六匹のアピスどもを睨み、ラストスパートだと意気込んで、駆け出した。





 チリチリと赤く燻る死骸の中、戦いで汚れた毛並みを整えるように体を舐める緋色のヴァルプス。

 私はその様子を、ただ呆然と眺めていました。


 一通り整え終えたのか、彼女は私の方を見るなり立ち上がり、早く行こうと言って、ここにいても仕方がないとばかりに駆け出します。

 さっき戦っていた時に纏っていた、あの射殺すような威圧感は今はもうありません。


 余程この場所にいたくないのか、私も慌てて走り出したものの、全速力で走ってついて行くので精一杯でした。


 しばらく走り続けて、もはや今いるのがさっきの場所からどれくらい離れたところなのかも分からないほどに走ったあと。

 私が息も絶え絶えになった辺りで、ようやく彼女は走るのを止めました。


 どうやら、休憩するみたいです。

 息が苦しかったので、私はこれ幸いと寝そべって休みました。

 その傍に、彼女も守るように、あるいは心配するように寄り添ってくれたのですが、この時の私にはそれを気にかけるだけの考えと、余裕がありませんでした。

 ただ彼女が、私よりもずっと強くて私を守ってくれる存在だと、そういう風にしか認識していませんでした。


 それからしばらく休んでいると、不意に彼女が起き上がりました。

 なにをするつもりなのかと気になって見てみると、地面の植物を退かして、露出した土を前足で掘り返し始めます。

 ただ、その掘る速度は尋常ではありませんでした。

 明らかに、前足のひとかきで掘れていい量ではない土が掘れていたのです。


 そうして、まるで土自体が勝手に外に移動するみたいにして、あっという間に地面の下に空洞が出来ました。


 どうやら、休むならここに入ってて、ということらしいです。

 私は本能的にその方が安全だと感じたのと、彼女が言うのならということもあって遠慮なくその穴の中に入りました。

 穴の中は思いのほか広くて安心感があり、私はそこで再び寝そべったのでした。





 ………よし、じゃあご飯の確保に行こうかなぁ。


 仮拠点の中で休む影ちゃんを見やったあと、私は外に出つつ考える。

 影ちゃんのステータスに合わせて走ったため普段よりもスローペースだったとはいえ、さっきの空間からはそれなりに離れたので魔物の心配はないと思う。

 まぁたまたまここを通る魔物がいたなら、その時はもう運が悪かったとしか言いようがないが。


 だがその代わりに、私はともかく影ちゃんの体力が減った。影ちゃんも体力回復のスキルがあるとはいえレベル1だし、期待はできない。

 さっさと回復するならやはり食べるのに限るだろう。


 とりあえずさっきの場所に戻って、アピスの死骸を持って戻ってくるかな。

 全速力で往復すればそんなにかからないと思うし。


 ………そういえば自分以外の狐を見て思ったんだけど、本来の狐の狩りってどんなのなんだろう…?

 今までは探索の過程で魔物を見つけ次第戦っていくって感じだったけど…。

 前になんか、ジャンプして地面に頭から突っ込む狐の動画を見た記憶があるが、あれが狩りなんだろうか。


 …………この場所に巣穴とかないしなぁ…。

 通路そのものが巣になってたりするのはよく見るけど……。


 うーん。まぁいいか。

 こんな魑魅魍魎だらけの場所で本来の狐の狩りの仕方とか参考にならないだろうし。

 気にする必要なし!!


 さっきの広間に戻ったときに他の魔物もいたら、ついでに倒してご飯にしてしまおう。


 さて、そうと決まれば〜っと。


 とりあえず、安全も考慮して仮拠点の入口は埋めておく。

 完全に埋めきってしまうとあれなので、入口を小さくする程度だ。

 地面を掘ったということもあり、普段よりも奥深くにまで掘ったので、余程のことがない限り他の魔物に見つかったりはしないだろう。


 うんうん、いい感じ。

 よぉしじゃあご飯求めてしゅっぱーつ!

 まぁ来た道戻るだけだけど。


 記憶のスキルによって明確に思い出せる先程の広間からこの場所までの通ったルートを思い出しつつ、私は走り出した。

ぶっちゃけると運命構図大好きなんですよね

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ