019 初めての魔力切れ
点火!!点火!!点火ァァァァアアア!!
私の頭の中での掛け声に合わせて、私の体の周りにぼうっ、ぼうっ、と小さな炎が現われ、消える。
私は初めて火魔法の発動に成功してから、ひたすら火魔法を使い続けていた。
この〈火魔法Lv.1:点火〉は、体の表面から小さな火を起こすだけの地味なもので、さらに言うと発動するたびに体毛や表皮がその熱で熱くなる自傷行為みたいな魔法だったのだが、そんなことは今は関係がなかった。
というか痛覚耐性のおかげで熱さは結構無視できた。
うおおおッハハハハハ!!!
魔法が使える!!レベルがあるから使うほど強くなる!!はず!!
もう連発するしかないよぉぉぉぉぉ!!!
動かせない後ろ足に無理がない程度に、私は打算も含めて体をよがらせながら魔法を連発していた。
もちろん、こうして魔法を連発する間にも魔力の操作は欠かさない。
点火を発動するときの魔力を意図的に増やそうとしてみたり、逆に絞って減らそうとしてみたり魔力を体内で循環させてさらにその速度を速められないか試してみたり。
そのほとんどは私の操作能力が低いせいかうまくいかなかったが、ひたすら魔力の操作を練習したおかげだろう。
先ほど、魔力感知と魔力操作のスキルのレベルが上がった。
そして今、さらに追加でスキルが手に入った。
『条件を満たしました。スキル〈火耐性Lv.1〉を取得しました』
おぉ!!新しい耐性のスキル!!
……いい加減自分の体を炙るのヤメロってことかな…。
そう思いつつさらに点火を使ってみると、火耐性という名の通り、確かに発動したときの体が炙られるような痛みがなかった。
痛覚耐性があったのとテンションが上がっていたためにまぁいいや程度で無視していたが、痛みなんて感じないに限るなぁ。
鼻先に魔力を流すイメージをしながら、火魔法を発動する。
点火!
すると、鼻先に手のひらほどの火が突如発生し、そしてすぐに消える。
う~ん!!見た目はしょぼいけど、こうやって本当に魔法が使えると胸が高鳴るなぁ~!
点火!!
今度は体の四方で一気に発動する。
四つの火が空中で一斉に燃えあがり、そしてすぐに消える。
うひゃ~!!
───我こそは大いなる炎の操り手!フォックスウィザード!!
フレイ…じゃなくて点火!!
ぼうっ
いいねぇ~!!しょぼいけど。
さっきはできなかったけど、魔力操作のレベルも上がったし魔力を多めに注いで火力アップとかできないかな。
僅かに目を瞑り、鼻先に多めに魔力を出してそれを塊のようにして留める。
よし……点火ァァ!!
その瞬間、鼻先の空間が爆発したように一気に燃え上がった。
うおぁっ!!?
その勢いに、私は思わず顔を逸らす。
火耐性があるとは思いつつも咄嗟に顔を逸らしてしまうのは、まだ慣れていないから…というよりも生き物だからというべきか。
『条件を満たしました。スキル〈火魔法Lv.2:強火〉を取得しました』
おっ!?
おおぉ~っ!!
レベル2!!ハイファイア!!強火かぁ~。
…なんか名前ダサいな。いや!でも威力は上がってるだろう!ハイファイアだし。
さっそく使ってみるか。
再び鼻先に魔力を集め、それを先ほどより少し大きめの塊にする。
強火!!
……あれ?
発動しない?
…ぅお……??
魔法が発動しないことを疑問に思ったとき、突如として自分の目の前が暗くなるのを感じる。
体の力が抜け、頭の中が転がる感覚に襲われる。
……ぅ~ん……ぅあ…。
ぅぇ……?
回らない頭で、しかしこの状態で動くのは良くないと考えしばらく待つと、少しずつ視界が戻り始めた。
暗転した視界が戻るにつれて、段々と自分が地面に横たわっていることに気が付く。
どうやら、視界が暗転したときに体を支えていた前足から力が抜けて倒れてしまったらしい。
な、なんだ…?毒……?
毒耐性があるので多少の毒なら大丈夫だろうと毒キノコっぽい感じのキノコもパクパク食べてたのだが、もしかしてそれが蓄積でもしたのだろうか。
視界は戻ったものの、依然として頭が回る感覚や体に力が入らないことは変わらない。
魔物の攻撃……?いやぁ、周り何もいないし……
……やっぱり毒かなぁ…
せっかくの魔法も発動できなかったし……ぅ~頭いたい~…
……あれ、そういえばなんで魔法使えなかったんだろ。
そういえば、目の前が暗くなったのも魔法を使おうとしたからだった。
……あっ。
なんとなく思い当たることがあり、自分の体内に意識を集中させる。
あぁーーーっ!!
これはっ!魔力切れやぁーーーっ!!
説明しよう!!"魔力切れ"とは!!
文字通り体内の魔力が枯渇し、回復が追いついていない状況のことである!!
剣と魔法の世界ではド定番の弱体化状態なのである!!
…つまりあれか。
私は、調子に乗って自分の魔力を考えずに魔法ブッパしまくったせいで魔力がカラッカラになったと。
で、そんな状態でさらに消費魔力の多い魔法を使おうとしたからぶっ倒れたと。
……これは~…気を付けないとなぁ…。
この場所が安全だからまだよかったが、もしこれが魔物との戦闘中だったりしたら目も当てられない。
今度からは自分の魔力残量に注意しつつ魔法を使わないとなぁ。
……う~ん、こうなると今はもう魔法使えないし…どうしようかな。
もっと魔法の練習したかったなぁ~~~~~~~。
…あ、魔力操作の練習でもしようかな。
…………。
………。
……あぁ、無理だこれ。残量が少なすぎて、下手に操作しようとすると逆に魔力減っちゃいそう。
魔力が完全になくなったらどうなるのかちょっと気になるけど……流石に死ぬとかは…ないとは思えななぁ……。
うん、やめとこ。
魔力が回復するまでは魔法関連は何もしない!!事故って死にたくないしね。
………となると……
うん。もう休むか。キノコ食べて寝よ。
それから私は、極力後ろ足を動かさないようにしながらひたすら魔法と魔力操作の練習に明け暮れた。
ひたすら同じ魔法を使い続けたり、何か新しい魔法が取得できないか試したり、魔法で何か工夫できないか試したり。
ちなみにキノコを焼いて食べるのは中々だった。できるなら、醬油とバターが欲しかったくらいだ。
同時に魔力操作の練習も行った。魔力を、ただ体を巡らせるだけでなく、体の一部に集めたり、体外に放出してすぐに留めて纏えないか練習したり、とにかく色々試した。
さらにこれらの練習をするときは、少しでも効率をよくするために思考加速のスキルまで使った。
その結果、私は多数のスキルがレベルアップし、あるいは新たに取得し、魔法も複数取得した。
一番使い続けていたスキル〈思考加速Lv.1〉は今や〈思考加速Lv.3〉となり、魔力感知と魔力操作もそれぞれレベル3、レベル4まで上昇した。
火魔法はレベル3まで上がり、さらに風魔法と土魔法なる二種の魔法まで取得できた。
また、魔力操作で色々と試した結果、新たに〈魔力循環Lv.1〉〈魔闘気Lv.1〉〈魔鎧Lv.1〉なるスキルも取得した。
これは三つとも身体強化に関するスキルのようで、なんというか、魔力操作の応用みたいな感じだった。
しかもこのうち、〈魔力循環Lv.1〉は肉体の回復力まで高めてくれるらしい優れモノだった。
魔力操作の副産物でいいもの手に入っちゃったな~~!!
…と、まぁそんなこんなでそれなりの時間が経ち……
────ついに、私の後ろ足が完治したのだった。
トントンと、後ろ足で地面をつつく。
その仕草はさながら履いた靴を整えるようで、実際その通りだった。
うん。いい感じ。
この場所で目覚めてからどれくらいの時間が経っただろう。
ずっと変わらず暗いままのここでは正確な時間など計りようもないが、少なくとも寂しさを覚える程度には愛着が湧くくらい長居したのは確実だ。
私の目の前には、私が入っても少し余裕がありそうな大きさの横穴。
内側までびっしりと草木に覆われているので、その見た目はさながら森の獣道だ。
………よし。行くか。
その獣道に向かって、私はしっかりとした一歩を踏み出した。
明日、ついに旅立ちの時




