018 さながら狐火
魔力とは、全身に満ちる水分のようだった。
あるいは、空気中の水分のよう、か。
全身に満ち、そして僅かずつ体外に放出され、それと同じ程度が僅かずつ生み出される。
魔力感知のスキルを取得したおかげだろう、意識すると体内の魔力も、体外の魔力も感じられた。
まぁレベルが低いせいか、体内はまだしも体外の魔力は空気と同程度にしか感じられないが。
そう、これは水分だ。本物の水分との違いは、全身にくまなく満ちているが全身を透過していること、だろうか。
……どうにか操作できないかなぁ。
目を閉じ、体内に満ちる自身の魔力を感じながら思う。
先ほど体外の魔力は空気程度にしか感じられないと言ったが、唯一目の前にあるこの魔鉱石はハッキリとそこにあるのを感じられる。
多分、魔力が強く凝縮しているから、とかだと思うんだけど。
操作できれば魔法を使えるようにもなると思うんだけどなぁ〜。
魔力があって魔法がないなんてことはないだろうし。
現状、私は魔力を感じ取れるようになっただけで、魔力の操作はできない。
体内の水分や空気を操れないのと同じように、そもそもどうすれば操れるのかすら分からない状況だ。
……血液?
あぁ〜、そうか血液かぁ。
ラノベだとよく、魔法はイメージだと言うし、さっき魔力を感知できたのもイメージしたからというのは大きい。
ならば、魔力の操作もそれに倣うべきだろう。
よく、魔力は全身を巡る血液みたい〜みたいな例え方されてるけど、そのイメージならいけるかな?
体内の魔力に意識を集中させ、血液をイメージする。
魔力は常に、僅かずつだが体外に放出されていっているようで、同時に僅かずつだが体内で生み出されている。
……生み出しているのは、心臓に近い……いや心臓?
そこから、放射状に全身に満ちていってるのを感じる。
心臓から魔力が生まれてる?……うーん、なんか違う気がする。
こういうののテンプレは魂だよね。
まぁでも心臓の方がイメージしやすいし、とりあえず心臓でいっか。
心臓から放射状に生まれるエネルギー。
全身に満ちていくそれが、血管に沿って流れていくことをイメージする。
心臓から、大動脈を通って、細い動脈を通って、指先の細い血管を通って、静脈に流れて、再び心臓に戻ってくる。
それを強く、強くイメージする。
体が人じゃなくて狐なので少し苦戦したが、全身の魔力を感じられるようになったおかげか、直ぐに慣れた。
しばらくそれを続けると、不思議なことに、体内に満ちる魔力がただひたすら体外に放出されるのではなく、本当に全身を巡るように流れ始めた。
『条件を満たしました。スキル〈魔力操作Lv.1〉を取得しました』
おぉ!!いけるもんだねぇ〜!
魔力感知なんてスキルがあるくらいだし、操作もあるとは思ったけど思った以上にあっさりゲットできたなぁ。
この、全身を魔力が巡るイメージで取得できたなら、このままこれを続ければ勝手にレベルが上がってくれたりしないかな?
魔力を全身に巡らせるのは漫画の修行でよくあるやつだしね!
さて、これはこれで続けるとして、魔力が操れるようになったなら、早速やるしかない!
そう!!"魔法探し"を!!
魔法はただ単に魔法としてあるのか、それともスキルみたいに魔法もステータスなのかは分からないが、ここまで来て魔法がないなんてことは有り得ないはず。
有り得ないと思いたい。
なので魔力の操作が出来れば、あとはイメージと魔力操作でなんとか魔法を使えるようになる、と私は思っている。
もし魔法がスキルの一種なら、他のスキルみたいにほんの少しでもそれっぽいことが出来たら習得できるかもしれないし。
もしこの世界の魔法がそういうイメージのものではなく詠唱とかが必要なものだったら……まぁ、その瞬間に努力虚しく私は詰むのでその時はその時として諦めるしかないだろう。
というわけで探していくわけだが、まぁ闇雲に適当するつもりはない。
こういうとき、魔法にはだいたい系統があるものだ。
○○魔法、的な。系統は属性だとかなんだとか色々だと思うが、とにかくだいたいそういうものだ。
根拠は、オタク知識である。
──もうなんか、ここまでスキルとかレベルとかあるならオタク知識で予想を付けてもいいんじゃないかな…って……
それに、適当に試していくよりも系統を仮定してやっていく方が狙いが絞れて確実性が高まると思う。
ということで、とりあえずよくある無難な属性の魔法とかを発動できないか試していこうと思う。
水とか、風とか、土とか。テンプレでしょう。
まずは水。
目の前にあるし、水を操る魔法はド定番だし。
イメージする。魔力を身体から外に出して、川の水に触れさせ、水を操るイメージ。
むむむ……
むむむむ……
むむむむむ……!!
……無理だ、これ。
水を操るどころか、体外に放出した魔力を操るのすらキツい。
魔力操作のレベルが上がればできるようになるかな?
分からないが、とりあえずこれはボツだ。
じゃあ次は風。空気を操る!
自分の周囲の空気が、自分を中心に動くようイメージする。
ここは地下だ。僅かにでも操って、僅かにでも動かすことが出来ればすぐに分かる。
これが魔法習得への第一歩となるのだ!!
…………。
………。
……うん、無理。
そよ風どころか、やっぱり体外の魔力を操ることさえ難しい。
こうなると、体外の何かを操ったりするのは現状無理かなぁ。
うひぃ〜!鎌鼬的なものを飛ばしたかったんだけどなぁ〜!!
……となると、次に試せるのは体内で完結するようなものかぁ。
とりあえず火とかかな?
いや、これも体外か…?
……いや、そんなことないか。魔力を燃料にするイメージでいけばいいんだ。
体外に出た魔力を操るのが難しいなら、体内の魔力を燃料にして体外に向かって火が着くようにイメージする。
…………むむ…。
……むむむ…。
…むむむむ…。
……っ!?
そのとき、私は自分の口から、ボバッ、という奇怪な音を聞いた。
同時に脳に流れ込んでくる、口内に発生した凄まじい熱と痛み。
ぐえああぁぁぁあぁぁぁあっつぅぅぅ!!!???
思わず、全身を捩りながら大口を開けて頭から川に突っ込む。
なっ、なにっ!?なになになに!!?
『条件を満たしました。スキル〈火魔法Lv.1:点火〉を取得しました』
……っ!
口の中に突如発生した熱と痛みの原因を、私は理解した。
多分、具体的にどこから火を出すかを考えなかった結果、もはや手のようにも使っている口から火が出てしまったのだろう。
点火って名前だし。
だが、今はそんなことはどうでもよかった。
……きたっ!
きたきたきたぁぁぁっ!!
魔法きたぁぁぁぁぁぁぁああ!!
しかもレベルもある!
……ん?魔法にレベルとか関係あるの?
いや、まぁ、レベルがあるってことはそうなんだろう。
うおぉっ!!火魔法かぁ〜!!
さながら狐火かな?レベルが上がれば太陽とか生み出せちゃったりしてぇ〜!?
…あ、いや、それは錬金術かも。
まぁいいや。
とにかく、これで魔法の存在も、魔法の習得の仕方も確認できた。
あとは魔力操作の練習をしながら、ひたすら色んな魔法を試して練習する他ないだろう。
……ふふ。
………フフフフ…。
待ってろよクソデカクソ虫めっ!!
魔法を極めた私が、いつかお前をぶっ倒してやるからなぁ!!




