017 魔力はあったんだ!!
目が覚めてから、しばらく。
相変わらずの地下空間なので実際どれくらい経ったかは分からないが、体感で数日くらい。
結論から言うと、この場所は超安全だった。
地下渓谷の谷底を流れる緩やかな川のそば、川に削られたのかどうなのか、たまたまそこにできた孤立した川辺の空間。
谷底であるため天井はないに等しいが広さはなく、だいたい私が十人も入ったら限界だと思う。
…あ、今は十匹か。
川辺は砂利だが、川の水が届かない程度の場所から壁のほうまでは草木が生い茂っている。
周りを見ても、見える範囲だとこの谷底で草木が生えているのはここだけでかなり疑問に思ったのだが、どうにか前足で這いずって壁の方を調べると、一か所に蔓草で覆われた空洞があるのが分かった。
空洞の中は私が数匹横に並べるくらいの広さで、その中も植物で覆われていることから、多分この空洞の先が私がいた地下樹海のような空間に繋がっているんだろうと思われた。
最初はこの空洞からなにか他の魔物が入ってくるんじゃとも思っていたが、待てど暮らせど何も出てこないので今は特に心配はしていない。
また、この壁際の探索時に、他にもいくつか発見があった。
まず、ここヒカリゴケが生えてない。
川底も含めて、全く生えてない。最初目が覚めた時から、なんかここ異様に暗いなとは思ったけど、まさかヒカリゴケが生えてないとは思わなかった。
なのでこの場所は光の一切ない真っ暗闇のはずなのだが、なぜか私は周囲を見ることができた。
正確な理由は分からないが、実は私がなんかそういうスキルでも持ってるんじゃないかと思ってる。夜目とか、暗視とか、そんな感じの。
今思えば、たとえヒカリゴケの明かりがあったとしてもあんな薄暗い洞窟の中でそれなりに遠くまで見えていたいたのは結構おかしかったし、気が付かなかっただけでそういうスキルを持ってたんだろう。
そして次に、ここにはメシがあったこと。
それは壁際の植物にびっしりと生えていたのだ。
そう。キノコである。
大小さまざまなキノコが、そりゃあもうびっしりと生えていた。
あまりにも群生しすぎていて、最初見たときはその気持ち悪さに総毛立ったくらいだ。
なぜこの場所にこれだけキノコが生えていて、私の拠点周辺には全く生えていなかったのか心底疑問だったのだが、まぁなんか湿度とか色々あるのかな。知らんけど。
ただまぁ、それでも食べられそうなものがこの場所に群生していたのは僥倖である。この体だと魔物を狩りに行くこともできないし、そもそもここから魔物がいる場所に行けるのかもよく分からない。
最悪食料が全くないという状況に陥る可能性もあったので、それを考えれば幸運である。
───まぁ、その後、キノコを食べてたら突然毒耐性のスキルがレベルアップしたりして知らぬ間に命拾いしていたりしたのだが、その辺りは割愛しよう。
鑑定を使って、できる限り安全そうな名前のキノコを選んで食べてたんだけど、そういえば味の良しあしに関係なくどのキノコもピリ辛というか、ピリピリしたなぁ。
キノコの毒性に名前は関係ないということか……。
そして最後なんだが……。
この発見に関しては、また後ほど紹介するとしよう。
─────うん、こんなもんかなぁ。
ていうかこれが限界。これまでの狐生活で思い知ったつもりだったけど、こうして器用なことをしようとすると人間の手先というのがどれだけ便利だったか思い知らされるなぁ。
私の目線の先、私の両後ろ足は今、幾本かの木の枝と草がきつく巻き付けられていた。
ここに流れ着いてから今の今まで、私は痛みが多少マシになってきたこととスキルで自己治癒能力があると分かったことにかまけて折れた後ろ足を放置していた。
ただ、この状態で這いずって回ると流石に痛んだし、その痛みによってそういえば骨折は固定しないとヤバいよなぁということを思い出した。
なので今こうやって、そこらに生えている木の枝や蔓草を使ってギプスのようなものを作ってみたのだが……。
あまりにも不格好だった。
いや、まぁ、これでもかなり頑張ったんだよ?
指も何もないこのキツネの前足と口を駆使して、長めの蔓草を使って頑張って縛ったんだよ?
うん、私は頑張った。
ただ、私の努力にキツネの肉体性能が追いついてなかっただけだ。
それに、結局のところ固定できてればいいしね!
そう考えるとこれはむしろ、今できる最高峰のクオリティのギプスなのでは?
うん、きっとそうだ。
足だってちゃんと固定できてるし。
………さて。じゃあギプスも作れたところで、問題のものを見に行こうかな~。
まぁ、見に行くといってもほぼ目の前にあるのだが。
川辺の端っこ。植物に覆われた部分が少なくなり、ほとんどがむき出しになった壁の一部。
そこに、"淡く光る結晶"があった。
結晶と言っても、俗にイメージされるような多角形半透明の物質ではない。
その形はそこらの岩と大して変わらず、岩壁に同化するように、いやむしろ、岩壁の一部が突然この結晶に変質したかのように見える。
しかしその見た目はかなり異質で、ほの淡く青色に発光しており、よく見れば結晶自身は様々な色合いが複雑に絡み合って、何とも言えない独創的な色を見せていた。
ちなみにこの結晶、この一か所だけじゃない。
よく見ると、川を挟んで反対側の切り立った岩壁の一部などは、まばらに点々とだがこの結晶と同じもので構成されている。
これ、多分草木に覆われた壁も同じような感じなのではないだろうか。
で、まぁこんな特殊な結晶を発見してしまったわけなのだが、この結晶の最大の問題はその見た目ではなく、その名前にある。
ほい、鑑定。
『魔鉱石』
う~ん。
う~~ん。
これ、どう考えても濃密な魔力によって変質したとかそういう系のアレだよなぁ…。
具体的な説明とか一切ないのでその辺りは推測にしかならないが、この名前はさすがにそうとしか思えない。
発光してるし、なんかいかにもエネルギー内包してますよって見た目してるし、これはもうアレだよね?
アレと思ってもいいよね?
やっぱり魔力はあったんだ!!
この世界に!!
まぁ、アルカディア・オンラインに似ている部分もあったし、虫が異常に強いし、異世界だし、あるだろうとは思ってたけど、これはもう確定ということでいいだろう。
こうなると流石に、もう分からないので放置というわけにもいかない。
前は魔力の魔の字も感じられなかったのであきらめたが、こうして目の前に魔力の塊としか思えないような物質があるのだ。
これはもう、改めて魔法の習得を目指すほかないだろう。
足が治るまでまだかかるだろうし、強くなるためにも、ね。
というわけで、さっそく魔法をため……すのは無理か。
先に魔力だ魔力。
異世界モノのラノベだとよく登場人物が魔力を感じ取ったりしていたが、まずは無難にそれから試していこうと思う。
残念ながら、ここには私の体にオーラを送り込んでムリヤリ起こしてくれるような先生的な人はいないのだ。できそうな方法を一つずつ試していくしかない。
うぅ…孤独だ……まぁ仕方ないけど。
よし、そうと決まれば早速。
目を閉じ、意識を集中させる。
周囲の魔力を感じ取れ、とか言われてもできる気がしないが、ありがたいことに今はおそらく魔力の塊だろうモノが目の前にある。
それを感じ取れさえすればいい。
魔力…魔力……魔力ぅ……!!
イメージ…そうイメージだ。こう、なんか、よくある感じで、エネルギーが、そこにある、流れてる感じのイメージとか……してみたり………。
───視界を閉じた暗闇の中で、不意に、熱を感じた。
それは目の前にあって、強く凝縮されていて、しかし、全く熱くはない。
不思議な熱だった。
『条件を満たしました。スキル〈魔力感知Lv.1〉を取得しました』
………え?
…お?
……うぉっしゃああああああ!!!!!
魔力じゃあああああああああ!!!!
ただ魔力を認知するだけでこんなに時間をかけるつもりはなかったのですが、書いているうちに興が乗ってきてしまいました。すみませんが、キツネちゃんの修行にもうしばらくお付き合いください。




