Episode2-2
私と文彦が初めて会ったのはまだ小学校へ通っていた頃、私は当時そこら辺を仕切っていた上級生のガキ大将に目をつけられて虐められていたんだ。同じ地域の同世代はからのことが怖くて誰も私を助けてくれる人なんていなかった。でもある日、そのガキ大将がボロボロにされてしまう出来事が起きたんだ。
あの日は驚いたよ、帰りの支度をしていたら上級生が急いで走っていく姿があって私たちは何事だと気になり野次馬をするために走って追いかけたんだ。
すると同じ小学校の子たちが多く固まっている一体があってそこに進んでいくと地面に倒れて呻き声をあげるガキ大将とその取り巻きたちがいたんだから当時は目ん玉が転がり落ちるんじゃないかと思うぐらい驚いたよ。
それもそんなガキ大将を見下ろしてたっているのは私と同い年くらいの背丈の少年で私が見た時はガキ大将の頭に足を乗せていたんだから驚き以外なかったよ。
「おまえら、転校してそうそうの兄ちゃんをいじめの標的にするなんていい度胸してんじゃん。兄ちゃんは運動が苦手なんだ、相手はボクがしてあげるからいつでもおいで」
優しそうな顔で微笑みながら言っていたが目が全く笑っていなくて当時は本当に怖かったよ。しかもこの少年が文彦なんだから面白いよね。
私のことを苦しめていた人間を懲らしめてくれたんだから私にとってはヒーローそのものだった。次の日には下駄箱で文彦に話しかけてもうだいに驚かれたんだから。
「昨日、ガキ大将を倒したのって君だよね?」
「……おみゃーは?」
「僕は所崎斐蔵。昨日まであのガキ大将たちに虐められてたんだ」
「へー兄ちゃんの教科書ぐしゃぐしゃにしたから顔面にお返ししただけなんだけど……おみゃーさんも助かったんなら良かったよ。ボクは羽鳥文彦。先週こっちに引っ越してきたんだ」
「今までどこにいたの?」
「ん?名古屋の中を移動しただけ。昭和区から熱田区へ移っただけだよ。これからよろしく斐」
これが文彦と初めての出会いだったんだからあっさりしてると未だに思うよ。あとから聞いたが、今まで文彦には友達と呼べる人がいなかったらしい。そこで目立った暴れたのに遠巻きにせず話しかけた私に文彦は不思議な変人だと思っていたと、晩年暴露されて笑ったよ。
私は元々運動が出来なくて鈍臭いのろまな亀と言われて内向的だったんだが、文彦について行くことに必死で中学に上がる時には誰とでも話せるようになって、運動も一般の人くらい出来るようになっていたんだから面白いよね。
あの頃はとにかく文彦について行くことに必死だった。アイツも着いて来なくていいと言われても、ずっと隣を走っていたよ。
当時を知っている人に聞けば、私と文彦がどれだけ一緒にいたかよくわかるよ。先生にまでいつでも一緒にいると思われていたからね。
私たちが離れることになったのは高等学校受験の時だった。文彦は当時、熱田中学校を首席で入学して大学もこのまま行けると言われていて、本人も進むつもりだったのだが、進学には金がかかる。
文彦の家は元は豪商の家系だが弟である文彦の父が本家から勘当され、引越し新たな仕事をしているのだが金遣いは収入が変わっても変わらず、家系は火の車状態だったから、大好きな兄に進学してもらい文彦は軍人の道を選んだんだ。
私が文彦と最後に会ったのは終戦が近い1945年1月だった。