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Episode 2-1 所崎斐蔵

侑人は祖母が連絡を取ってもらえ、会ってもらえることになった。

 元は文彦の幼馴染で名古屋市にいたが、現在は息子たちと一緒に岡崎市で暮らしていると分かり朝早く出発し電車に揺られながら文彦のことを考えていた。

 兵学校時代に文彦に一目惚れし、父の権力を使って見合い結婚をするところが策士であり父の性格は祖母になのではないかと考えてしまう。

 文彦は本当に祖母のことを愛していたのか分からない。祖母も私は愛していたと強調しているが、文彦は祖母に愛をささやいたことがあるのだろうか。結婚した時はもう戦争の真っただ中で、結婚後すぐに激戦地である南に移動したと教えられた。父が誕生した事すら奇跡に等しい状況だったのである。

 祖母が知っている文彦は本当に少しで、祖父のことが何もつかめなかった為、もやもやとした消化不良感があり、ため息を付き窓の外を眺めることで気を間際らした。

 祖母に貰った住所を形態に入力し、初めての土地を携帯をお供に歩いて行くと立派な一軒家に到着した。表札に所崎と書かれており、インターホンを鳴らす。夏休みであり、所崎家の庭には立派な木があり蝉がけたたましく鳴いている。暑いし、蝉のせいでインターホンから聞こえる人の声が何言っているのか分からず苛立ちを覚えていると、玄関の扉が開き一人の女性が急いて出てきた。

 「すみません。先週にご連絡させていただいた羽鳥侑人です」

 「羽鳥さん、名古屋から岡崎まで遠かったでしょ?外は暑いから早く中に入ってください」

 女性は人のよさそうな笑みを浮かべたまま中にすぐに通してもらえた。玄関に入ると一人の老人が立っており、よそが良すぎて驚いて固まってしまった。

 「君が侑人くんだね?初めまして、私が所崎斐蔵。君のお祖父さんとは幼馴染で亡くなるまで交流があったんだ。さ、中に入っておいで。老人の昔話に付き合ってもらうよ」

立っていた老人は所崎斐蔵と名乗り、人のよさそうな笑みを浮かべ中へ招いてくれた。お邪魔しますと玄関を上がると先ほどの女性がスリッパを出してくれ、お礼を言い所崎についていく。

 部屋に通されると机の上にはアルバムが置いてあり座布団を出してくれている最中だった。感謝をし、向かい合うように座ると所崎がアルバムを開き一枚の写真を見せてもらえた。

そこには白い軍服を着た青年が凛々しく写された写真であった。この写真は祖母の家にも大切に飾られているため誰なのか知っている。侑人の祖父である羽鳥文彦の兵学校時代に実家に送るために撮影されたものだと聞いていた。

 「これが誰なのか知っているようだね。文彦はこの写真を自分が死んだら燃やすように遺言状に書いてあったのだが、誰もあいつの遺言を聞いてやれなかったんだ。あいつが持っていた遺品はすべてアイツの遺言通り燃やされてしまい、残っているのは靖国にある財布のみ。そんなのあいつが生きた証が何も残らなくなってしまうじゃないか……侑人君もそうだと思わないか?」

 文彦が自身の遺品を全部処分するように遺言を書いていたことを初めて知り驚き目を見開いた。所崎は文彦の幼馴染と聞いていたが、流石に軍の中のことは知らないと思うが文彦という人物のことを一番知っている人物ではないかと思い、鞄からメモ帳を取り出した。

 「……そうですね、自分は祖父のことを全く知りません。今回、羽鳥文彦について調べようと思ったのも防大に行きたいと父に行って反対された時に初めて祖父が軍人だったことを聞きました」

 「ほぉ、侑人君は自衛隊に興味が?」

 「いえ、そういうことではなく、将来について全然考えてなくて大学には行けと父がうるさくて、始めて行った防衛大学校のオープンキャンパスであの世界に入ってみたいと思いました」

 「自分で選択をしてはいることはいいことだよ。幹部になるための学校で四年間学んでから幹部学校に入るんだから普通では体験できないことを体験することは若者の特権なのだから。家の倅も自衛隊の幹部で空飛んでいたからね……厳しい世界だがあいつの孫なのだから大丈夫だろう」

 侑人はなぜ文彦のことを調べようと思ったのか理由を説明をすると嬉しそうに首異を縦に振りながら制定してくれるため、嬉しく頬が少し色づいた。父が警察官であるため、自衛隊とは縁がなく初めて所崎の息子が自衛官と聞き少し興奮する。

 「確かに、息子くんは文彦のせいで大変にしている母親の姿をずっと見ていたら、形は変わっているが憎く思っているのかは知らないが、そんな奴がいたところに侑人君を行かせたくないという気持ちも分かってしまうね……だが、文彦も死ぬ気は一切なかったと思いし、息子くんが生まれることを待ちわびていたからね————————……

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